【最新アンケート結果】日本企業におけるカスタマーサクセスの実態
カスタマーサクセスの役割
「カスタマーサクセスとは何か。」
みなさまはこの質問にどのように答えるでしょうか。
辞書的な定義では「自社が提供する商品・サービスの活用を促し、顧客が期待する成果へ導くため取り組み」と言えます。
顧客が期待する成果を上げることができれば、LTVの向上や顧客紹介獲得により、自社への還元があります。
つまり、カスタマーサクセスの役割とは、顧客の成果創出を支援することで、自社の業績への還元を目指すことでしょう。
しかし、現実は定義通りのカスタマーサクセスを実施するのは決して簡単ではありません。
顧客の成果創出まで支援する前に、顧客のサポートに追われているという企業も多いと思います。
そこで、カスタマーサクセスの実態を知るべく、市場調査を行ったところ次のことが分かりました。
✓各企業のカスタマーサクセスの解釈やフェーズが異なっている
✓顧客の成果創出や、自社の業績への還元ができている企業は少ない
各企業がカスタマーサクセスと解釈している業務やゴール指標は、❶顧客サポート、❷顧客の成果創出、❸顧客成果の自社への還元、と大きく3つ分かれていることが読み取れます。
❷顧客の成果創出や、❸顧客成果の自社への還元の割合が低くなっているのがカスタマーサクセスの実態です。
今回は、「カスタマーサクセスの実態」をテーマに、❶❷❸の背景や原因をデータを用いて考察してみましょう。
高まるカスタマーサクセスの重要性
もともと、カスタマーサクセスが注目されるようになったのは、SaaSやサブスクリプション型のビジネスが普及する中、これまでの売り切り型ではない継続的な価値提供が求められるようになっているからです。
SaaSを提供するベンチャー企業はカスタマーサクセスの重要性を日々痛感されていると思います。ただ、中堅・大手企業でもカスタマーサクセスの重要性は高まっていると考えています。
多くの企業が成長期・衰退期にある中、顧客インサイトを発掘し新たな価値提供を行う必要があります。
また、新規顧客と接点が持ちにくくなっており、既存顧客との関係性・売上の向上を目指す必要があります。
実際に、3社に2社(67%)の企業は、既に「全社または部門単位でカスタマーサクセスを重要施策として位置づけて推進している」ことが分かっています。
驚くべきカスタマーサクセスの実態
その重要性が認識されつつあるカスタマーサクセス。
しかし、本来の❷顧客の成果創出という役割より、❶顧客サポートに止まっている企業が多いのが実態です。
原因として考えられることは、顧客の解像度が低いことです。
カスタマーサクセスの課題意識の1位は、「顧客の成果実感を把握できていない」ことでした。
顧客のニーズや製品活用度、成果状況を、定性的・定量的に把握できていないことで、改善アクションに繋げることが出来ていない可能性があります。
紹介活動や、アップセル・クロスセル提案の割合が低いのは、担当部門がカスタマーサクセスではなく営業部であるからと考えられます。❸顧客成果の自社への還元は、営業部が担っていたんですね。
ここで考えられるのは、本来カスタマーサクセスのミッションである❷顧客の成果創出は、営業部との間に落ちてしまっているということです。
顧客の成果状況が把握できていないことで、営業部はアップセル・クロスセルの機会を掴むことができません。また、実は紹介をできる顧客がいるにもかかわらず、カスタマーサポートがメインとなっているカスタマーサクセス部では、その顧客紹介をスムーズに営業につなぐことができていません。
目指すべきカスタマーサクセスの役割
それでは、顧客の実態を知るために有効であるCSアンケート(顧客満足度調査など)は、どのように活用されているのでしょうか。
やはり、「関心のある関連商品の提案」や「紹介意向が高い方への紹介依頼」などの自社への還元の視点が弱いことが分かります。
CSアンケートは単に顧客満足度を高めるためではなく、売上拡大に寄与できる仕組みがあれば、実施したいと考えている企業が多いことを踏まえると、❷の前提となる顧客の実態把握と❸顧客成果の自社への還元の仕組みづくりがカスタマーサクセスにおいては重要論点と言えるのではないでしょうか。
対策の方向性
対策の方向性としては、3つのステップがあります。
まずは、自社でのカスタマーサクセスの役割を明確化する必要があります。
KPIには、製品活用度を設定するのか、ヘルススコアを設定するのか、役割によって変わってくるでしょう。
次に、顧客の成果創出の型作りです。
顧客が成果を創出するための勝ちパターンを自社で構築し、他の顧客でも再現できるようにしていきます。
最後に、営業部との連携ルールを整備する必要があります。
顧客成果や期待する業績成果などの目標を共有化し、目標達成に必要な顧客情報の連携を仕組み化することが大切です。
改めて述べるまでもなく、みなさまの企業でも日々改善に取り組まれている分野であると思います。
自社内部で改善サイクルを回すことはとても大切です。ただ、他社での課題や成功の事例をインプット頂き、自社に活かして頂けましたらより一歩成果に近づくでしょう。