代理店アクティベーションは組織力学で考えろ
はじめまして、LiB Consultingの権田です。
この度は、パートナーサクセスさん主催のアドベントカレンダーにご参画させていただくことになりましたので、少し短いですが、弊社のベンチャー支援で培った代理店における"アクティベーション"の要諦を少し語らせていただこうと思います!
余談ですが、本年度は弊社とパートナーサクセスさんで実施させていただいた代理店セミナーで、非常に多くの経営者様のご興味・ご関心をいただいたことや、外部活用によって一気に企業価値を増した企業様が急増したこともあり、勝手ながら「パートナーセールスの年」だったのではないかなと思っております!
(今年の4月に「OPEN」の訳書が発刊されたのもあるかもしれませんね)
代理店の気質とそれに応じた対処方法
さて、ベンチャーグロースにおける代理店活用支援をしていく中で、一番最初に見極めなければいけないポイントは、代理店の組織風土(気質)です。
代理店会社の気質は大きくこの2つにわけられます。
どんなにいいネットワークと実績を持つ代理店で、かつトップ営業をオンボーディング担当につけたとしても、ここの見極めをミスした瞬間その代理店の活動は中長期的には必ずストップします。
では、どのように対応すべきなのでしょうか?
まず、1のパターンの場合ですが、この気質の会社は営業メンバーの納得を先に取りに行く必要があるので、この商材を売ることで彼らにとってどんなメリットがあるかを特に強く訴求することが必要です。
代表的なのは、インセンティブの明示とその詳細の合意形成ですが、販売する商材の価値貢献軸で考える営業メンバーに対しては、熱心にサービスの提供価値を伝えることで担当に”ファン化”してもらうことも一つの手です。
また、"欲"の訴求だけではなく、なぜそのサービス/営業手法が売れるかをあえて時間をかけて説明することで、売れない理由を消し、行動ハードルを解除しにいくことも有力です(商材によってはここが一番難しいのですが…)。
契約前では軽くその方向性を訴求軸として伝えてもらうようにしながら、契約後改めてここをオンボーディングミーティングの場で意識統一をすることが良いでしょう。
逆に、トップからの号令で動く2のパターンに関しては、トップへの価値づけが完了すると嘘のように組織として円滑に活動が回るようになるので、この商材を導入することによる事業上のメリットを丁寧に説明する方法が効果的です。
例えば、タレントマネジメントツールが商材なのであれば、大手SIERや人材研修会社にとっては、既存クライアントに対する提供価値幅の拡充&新規開拓余地の増加を意味するので、その効果性とクロスセル商材としての活用方法を具体的に描いてあげると訴求しやすいです。
ただ、こういった代理店の気質はきっぱり分かれているというよりは、どちらかの特性が強いことの方が多いので、あくまで両者のパターンの観点を念頭に置きながら、契約の際の訴求対象の方向性を変えていくというイメージがより近いです。
更に、気質を見極め、適切な対象に商材を価値づけたとしても、いずれのパターンにおいても組織全員が一気に動かないことは一つ留意が必要です。
そのため、マネジメント観点においては、最も意欲を持って取り組み、最初に成果を出していただける"モビライザー"と呼ばれるような方を特定することが第一歩です。そこで成功事例を創り、その成功事例をもとに社内でセカンドユーザー、サードユーザーと、イノベーターの普及理論のようにどんどん普及させていく仕掛けを作れると円滑に回っていくようになります。
ターゲット別の代理店との最適な組み方
当然かもしれませんが、ベンチャーグロースにおいては、エンタープライズを狙うのか、SMBを狙うのかによっても代理店の最適な組み方は異なります。
一般的な戦略として、下記のように組むと成功しやすいです。
エンタープライズの場合は、
①営業難度が高い
②事業売上におけるアカウントの重要性が高い
③受注後カスタマーサクセスをハイタッチでやることが前提なので、そことのつなぎ込みが必要
という要因から、自社で入念な営業準備をしたうえでトップ営業をあてに行くことができる、トスアップの組み方の方が最適な場合が多いです。
代理店が間に挟まる構図は、都度失注を防ぐための細かな営業ノウハウや商品知識をアップデートさせる必要があるという点で、顧客/代理店/サービサー三方共に無駄な業務工数を増やすことに繋がります。
特にベンチャー企業のほとんどの商材が市場にとって新しく、成長中であることを考えると、この変化を代理店に強いてしまうのはいらぬ軋轢と活動量の低下を生んでしまいます。
一方、SMBの場合は、
①営業難度が比較的低い
②クロスセル/アップセル余地が少なく、サクセスとのつなぎ込みは比較的求められにくい
③売上インパクトに比べ数が多く求められる対応工数が多い
等の理由から、フルクローズ型であれば、リソースが限られる中営業の工数を減らしたい/一商材の販売において多くの収益を確保したい代理店双方でwin-winの関係性を築くことができます。
ただ、フルクローズ型の場合、成果を生むオンボーディングの型化が最重要因子になってくるので、代理店活用においてはそれを念頭に置いた初期の契約/マネジメント設計を組むことが肝要になってきます。
さて、一点補足すると、どんな"組み方"をしたとしても、”アカウントを誰が持つか、どこに資産をためるか”は事業を考えるうえで外してはいけない観点です。
代理店の関係資産を活用したから、効率の観点から代理店がフルクローズだから、、、などの理由でアカウントが代理店保有になり、自社に顧客資産が蓄積されないというのは、その後のアップセルやクロスセルもすべて代理店に依存することになるので事業上デメリットも多いです。
どう内部に持たずに、手間なく売上を立てるかという観点よりも、むしろ関係資産を譲り受けて、それを発展させながら自社のLTVを上げていくというのが理想の体制だと私は考えています。
ベンチャー企業と大手企業の時間軸の縮め方
さて、最後にお伝えするベンチャーの代理店活用における最大の難点は、大手代理店との事業展開の時間軸のすり合わせです。
一般に、できるだけ早くグロースして10→100を実施したいベンチャー企業がそれこそ週次で成果報告を待ち望むのに対して、大手代理店は比較的関係各所との調整などを踏まえたうえで月単位で活動スパンを見据えています。
単純計算して、4倍以上も時間の生き方が違う組織が手を結んだ際、この二人三脚は両者の歩み寄りがなければ間違いなく転倒してしまうことは想像に難くありません。
実際数々の支援において、こういったトラブルの発生をよく目の当たりにしてきたのですが、これを解消するのは、ただ単純に、ベンチャー企業側から同じ仲間として、コミュニケーションを図りに行くことだったりします。
ベンチャー企業が営業担当を代理店に一時的に出向させて、一緒に営業して泥臭く成果を創出し、同じ釜の飯を食べながら達成感を共有する…
実際のところ、こういった"論理でない部分"をつめて、コミットすることで初めて、大手代理店が社内側の意識を変えに行く行動が生まれるのです。
ただ、もし自社営業人員を割けない、契約後すぐに成果が欲しい、等の場合に関しては最低でも以下のことを気を付けて、ダイレクトコミュニケーションをとることをお勧めします。
事業責任者同士がこの2つを何時間も顔を合わせて煮詰めることによって、ようやく時間軸の感覚が徐々に徐々にすり合っていくことになります。
これは、両社と関係性がある調整役(仲人)がいると非常に円滑に進みますが、こういった存在がいない場合、基本的には関係性構築をベンチャー企業側が主体となって、相手のスタンスを理解し、理解してもらおうとするコミュニケーションがその時間のギャップを埋めていくのです。
アクティベーション方法まとめ
このようにベンチャー企業が代理店をアクティベーションさせるには、
という3点を意識するとより中長期的なwin-winの関係性が築けるようになります。
"代理店はインセンティブがあれば自動的に動く”という発想なのでなく、結局は代理店も組織であり、人であり、組織の論理で動くという組織開発文脈で考えることが一つポイントになってきます。
ふとした時に、売上を創出してくれる道具やツールのようなハード思考で考えてしまいがちですが、一つ一つの対等な会社組織として、どう気持ちよく動いていただくか、ということに敬意を払って接することが必要なのです。
"なぜ思ったような成果が出ないのか"と落胆するのではなく、代理店を同じ企業組織や人として考え、理解して歩み寄り、コミュニケーションをとることが成果への第一歩なのかもしれません。
ベンチャー企業経営者の皆様においては、あたりまえの考えのところもあるかと思いますが、改めてこの観点に着目していただけるとさらにより良いパートナーセールスライフが過ごせると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!