DX事業開発を成功させたいなら、デジタルを1回忘れなさい
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DX事業開発を成功させたいなら、デジタルを1回忘れなさい

CRO Hack

こんにちは、CROHackの松尾です。普段はリブ・コンサルティングで事業開発専門のコンサルティングチームを率いるマネージャーとして、年間約30プロジェクトの新規事業開発に携わっています。

さて、スタートアップから業界レガシーと言われる変革期の大手企業でも共通するのが「次の成長/変革のための事業の柱を生み出す」必要性です。

そういった命題を受ける際に、経営層から「DXを活用した事業開発を」と命題を与えられたり、ARやVR・メタバース・AIといったビッグワード、バズワードも多々あることから、DXありきで考えてしまうケースがとても多いです。

このような状態を、先日新規事業で陥る”金のガチョウの罠”として紹介しました。

決して、DX事業の開発を検討することが悪いわけではありません。

ただ、一口に”DX領域に関する事業開発を考える”といっても、実際何をどう考えればいいのでしょうか?

イメージを持てないままに走り出すことで、いつまでたっても手触り感が無い状態が続き、そのうちタイムリミットを迎える…この悪循環で失敗している企業が多いのです。

そのため、今回はDX事業開発をどのように考え・取り組むことで、より可能性の高いビジネスアイデアを創出できるか――その思考ステップをご紹介します。

そもそもDX事業とは何か?

最初に理解しておくべきは、DX事業とは何を指すのか?という定義です。

これに正解はありませんが、自分たちがこれから考えていく事業の領域はどこかをイメージしておかなければ、アイデアを正しく評価することもできなくなります。

ましてや、チーム内で検討をする場合などは、この前提を共通認識にしておかないとチームメンバーでさえも認識がバラバラで話が合わない、ということすら起こりえます。

DX事業の役割を、リブ・コンサルティングでは「DXによるビジネスモデルの再設計」であると定義しています。

ビジネスモデルの再設計であると考えると、大きく事業開発は以下の2つの指針に分解できるのです。

①既存事業のDX化
既存事業のDX化とは、従来のバリューチェーンをデジタルに置き換え、従来のビジネスモデルの高度化を図ること。

(例)音楽業界の場合
デジタル配信・物流データ活用・SNSマーケ・オンラインライブなど

②新しい技術や仕組みを活かしたデジタル事業の創出
デジタル市場でのトレンドを軸とした新しい業界構造を作り、ビジネスモデルの創出を図ること。

(例)プラットフォーマー・マーチャンダイジングへの進出など

まず、自分たちのDX事業開発が、どこまでの幅を想定しているかをきちんと現時点で定義しておくことが何よりも重要になります。

DX化する領域は特化型or連動型の二択で考える

検討する幅が決まったところで、次に大切なことはDX化領域の考え方です。

ぜひ覚えていただきたい部分として、DX事業の本質は

◆各バリューチェーンと機能価値の特化型
◆各バリューチェーンを繋ぐ連動型

による価値創出を目指すことになります。

DXの事業を考える際に、DX=テクノロジー等で出来ることは何か?いま何が流行っているか?など、いわばテックアウト的な発想に答えを求めることが多いのですが、前述のとおり金のガチョウの罠にハマるためNGです。

まずは業界/自社もつバリューは何か、そこからDXでどのように新しい価値を創出できるのかというバリューアウトの発想を持つべきということです。

これが、本記事のタイトルでもある「DX事業開発を成功させたいなら、デジタルを1回忘れなさい」というメッセージの意図です。

新規事業なら価値から考えるのは当たり前、と聞こえるかもしれませんが、実際は「デジタル領域の事業開発」を前提にした時点で、デジタルで何ができるのか、DXのトレンドは何かにばかり目が向いてしまうのです。

そして、そもそもなぜDX事業の開発をしているかといえば、衰退期に備えて既存事業への依存から脱却し、別の新しい事業をやらなければいけない!という使命があることが多ためです。

「既存の提供価値などは、そもそも古い・これからは通用しない」という前提で最初から切り捨ててしまっている。変わらなきゃいけない症候群とも言える状態に陥っている人がとても多いです。

もちろん変革は重要ですが、そのためにも自社のバリューチェーンを正しく分解し、DXを進めることでバリューチェーンの中で新しい価値創出もしくは既存価値を置き換えていくことで、自社の収益構造を変えていくという意識を持ってください。

具体的にDX化領域を考える方法-保有資産を「機能価値」に言い換えて整理する

DX化する領域の考え方が分かってきたのではないでしょうか?
では、具体的にどうバリューチェーンを構造化していくといいのか――その手法に入りたいと思います。

こちらも、同様に音楽業界を例に見ていきましょう。

難しいことではなく、できれば1枚でまとめるくらいが望ましいです。

階層としてまず、
1階層目:業界全体におけるバリューチェーンを記載する
2階層目:自社の持つ保有資産を具体的に書いていく

そしてここが重要なのですが、赤で記載した要素、その保有資産がどのような「機能的価値」を持つのかを言語化するということです。

この機能的価値の言語化をしているかどうかで、DX化する際の精度が大きく変わります。よくあるバリューチェーンや自社アセットの棚卸は、そのまま自分たちがもっているものを列挙するだけで終わっていることが多く、そこからもう一段階抽象化して、それらの価値がどのような意味を持つのかを特定するところまで取り組んでください。

その際に、これはDX化できるものか…?などは考える必要ありません。また、価値ですので、自己批判的に書く必要もありません。現時点で、それは何かしらの価値を生み出しているからこそ今の事業として成立しているはずなので、ぜひ客観的な視点も持って、価値の創出を行ってください。

保有資産のDX化による価値の転換

最後に、DX事業のアイデアをどう考えていくのか、特にバリューチェーン連動型DX(ビジネスモデル転換)の場合を紹介していきます。

既存事業のDX化は、ある程度説明しなくてもイメージ持ちやすいと思いますので、そちらに興味ある方が多ければ、また別の機会で解説してまいります。

アセットをDX化する際に行うのは、デジタル市場における自社の提供価値の再定義、というアクションです。

デジタルで何ができるかといういきなりHowに入ってしまうのではなく、自社が提供できる価値=WhatやWhyの領域にまずは置き換えて考えてみましょう。

その際に、いきなり新しい価値を考えるのは難しいので、これまでは「こういう価値を提供していた」をいうのを機能価値ごとに整理して、それがDX化することで「こういう価値を提供できるようにならないか」という変化を考えるようにしてみてください。

そうすることで、従来の提供価値では届かなかった課題やあるべき姿を検討しやすくなるためです。

こちらも、同じく音楽業界を具体例に作成してみました。

この価値の転換は、簡単に思いつくものではなく、それこそこのタイミングまできたら業界や他社の動向などをスタディして、様々な情報を元に作成していく必要があります。

ただ、DX化の領域の選定、自社のバリューチェーンの構造化ができていれば、情報収集などの目的も明確になり、よりストレートにDX事業創出のための構想ができるようになるはずです。

DX事業開発においては、やみくもにDXトレンドを研究したり、デジタル化で出来ることを見つけにいってしまうのではなく、まず一回「デジタル」は忘れて、自分たちの提供価値は何か?を考えてから、次に何をDX化すべきかしっかり時間をとって検討してください。

遠回りのようにも見えますが、これが実際は最短でDX事業を検討する方法論であることは、わたし自身のプロジェクト経験からも明らかです。ぜひ、皆様の事業開発の取組みの参考になれば幸いです。


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