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チャーンレートを徹底解説!-計算方法や下げるための施策とは?

こんにちは、CROHack編集長の松尾(@daisukemo)です。

SaaS事業におけるKPIには、CAC(カスタマーアクイジョンコスト)やユニットエコノミクス(LTV÷CAC)などがありますが、それらに並んで重要とされているのが”チャーンレート”です。

チャーンレートとは解約率のことで、どれだけの顧客を維持しているのかを表す指標として、SaaS事業におけるKPIとして利用されるほか、投資家から見たときの評価軸の一つとしても見られている重要な指標です。

そこで今回は、SaaS事業で常に気にしておくべきチャーンレートについて、その計算方法やチャーンレートを下げるために有効な施策の具体例などをご紹介します。

- 「チャーンレート」とはなにか

先述の通り、チャーンレート(Churn Rate)とは解約率のことで、SaaS事業において非常に重要な指標の一つです。
チャーンレートが下がる=解約率が低くなるため、”いかに長く契約を維持してもらうのか”が利益に直結するSaaS事業では、チャーンレートをどこまで下げられるのかが事業継続の鍵となります。

▼チャーンレートの種類
チャーンレートには「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」の2種類があります。

カスタマーチャーンレートは顧客数を元にしたチャーンレートの算出方法で、全顧客数のうち解約した顧客数や上位プランから下位プラン(無料含む)にダウングレードした顧客数の割合を表します。チャーンレートとは、一般的にカスタマーチャーンレートのことを指す場合が多いです。

レベニューチャーンレートは売り上げ(収益)を元にしたチャーンレートの算出方法で、本来(解約されていない場合)は得られるはずだった売り上げをどれだけ逃しているのかを表します。レベニューチャーンレートはMRRチャーンレートと呼ばれることもあります。

▼チャーンレートの重要性
SaaS事業やサブスクリプション(以下サブスク)でチャーンレートが重要視される理由には、大きく2つあります。

1つは先ほども触れたように、SaaSやサブスク事業は月額、もしくは任意の契約期間で繰り返し課金が発生するビジネスモデルのため、チャーンレートがそのまま利益に直結します。そのため少しでも長い期間で契約してもらい、顧客に1回でも多くの課金をしてもらうことで利益率が高くなります。

もう1つは新規顧客獲得のコスト、つまりCACの高さです。1:5の法則があるように、既存顧客と新規顧客へのアプローチには5倍ものコストの差があると言われており、基本的には既存顧客へのアプローチ方法のないSaaSやサブスク事業は顧客獲得のコストが高くなりがちです。

そのため、新規顧客を獲得するのに使用したコストを回収し、そこからどれだけ売り上げを積んでいけるのかがSaaSやサブスク事業においては重要なため、チャーンレートをどこまで下げられるのかがポイントとなるのです。

-チャーンレートの計算方法と分析方法

続いて、チャーンレートの計算方法とその計算結果を元にした分析方法をご紹介します。
チャーンレートに限らず、KPIなどの指標は計算した後に正しく客観的に分析するところまでをセットで考えましょう。

▼チャーンレートの計算方法
チャーンレートの計算方法は、カスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートで異なります。それぞれ、以下の計算式で算出します。

カスタマーチャーンレート
(一定期間内に解約した顧客数÷その期間前の顧客数)×100

【具体例】
9月30日時点で顧客数が1500社いて、10月1日〜31日までに80社が解約した場合
(80/1500)×100=5.3(%)

ただし、上記の計算方法では期間内で顧客数の変動が大きい場合には正確な数値を算出するのが難しいです。
そういった場合には上記では一定期間を1ヶ月で設定していますが、1日ごとにカスタマーチャーンレートを算出して計測し、期間ごとのチャーンレートを出す場合にはその期間の数値を合計すると算出可能です。

レベニューチャーンレート
(単価×一定期間内に解約した顧客数÷一定期間内の総売上)×100


【具体例】
月額4,000円のSaaSサービスで1ヶ月で80社が解約、売り上げが750万円だった場合
(4,000×80÷7,500,000)×100=4.2(%)

▼チャーンレートの目安は3%以下!
一般的に、チャーンレートは3%以下に抑えられている状態であれば健全と言われています。

どの期間においても3%を上回っている場合は、まず解約につながっている原因を徹底的に潰していくところがスタートになります。それはサービス自体に問題がある場合もあれば、操作性などのUIが悪い、カスタマーによるサポート品質が悪いなどの原因も考えられます。
口コミやクレームなど、実際の顧客の声が集められるような仕組みを作り、その原因を探ってみてください。

一年を通してみたときに一部の期間のみチャーンレートが悪くなっている場合、それはある程度仕方ない場合もあります。
例えば国内外のスポーツを配信しているDAZN(ダゾーン)はプロ野球とJリーグなどがシーズンインする春に会員数が増えてオフシーズンに入る冬には会員数が減少します。
そこで例えば「休止」という制度を設けることで、解約の抑止に歯止めを掛けにいくというのも一つの手段です。

SaaSやサブスク事業のチャーンレートはBtoBなのかBtoCなのか、サービスの金額帯によって変動するため一概に3%と断定するのは難しいため、自社のサービスで最大限まで抑えたチャーンレートの目標を設定し、そこに向けて施策を打っていくことになります。

-チャーンレートを下げるために有効な施策

では最後に、チャーンレートを下げるために有効な施策の例をご紹介します。
ただし、前述のようにSaaSやサブスク事業はサービスの特性によってとるべき施策が大きく変わるため、以下はあくまで参考程度に留めて、自社の最適解を模索していく必要があります。
客観的な意見を得るためには、部分的に外部のパートナー企業などを入れて考案していくのも一考でしょう。

チャーンレートを下げるための施策には以下のようなものが挙げられます。

・チャーンレート上昇の原因調査
・サービスの魅力や使い方を伝わるようにする
・カスタマーサクセスの充実
・大手企業の開拓

▼チャーンレート上昇の原因調査
まず具体的な施策の前に行うべきは、チャーンレートが高くなっている原因の調査でしょう。
チャーンレートが高くなっている原因が突き止められない場合、その適切な施策を打つことはできないので、より正確な原因の把握のためにしっかりと時間を確保しリソースを割きましょう。

▼サービスの魅力や使い方を伝わるようにする
近年、SNSや各種メディアの利用者やアクセスが増加することと同時に増えてきた勘違いですが、「いいものを作れば自然と広がる」と考えるのは非常に危険です。
ごくまれに、インフルエンス(影響力)のある顧客がたまたま利用したところから口コミで広がることもありますが、それを期待するのがプロダクトが失敗する要因です。

新規顧客へ向けた内容ももちろんですが、既存顧客へ向けても活用方法などを発信していき、求めているユーザーに正しくサービスを届けて、その後も使い続けてもらわなければSaaSやサブスク事業は成り立ちません

魅力や使い方の発信方法は、ブログやSNSなど様々な手段がありますので、新規顧客・既存顧客にアプローチできるようにしましょう。

▼カスタマーサクセスの充実
SaaSやサブスクなど、毎月課金が続くサービスは不満やストレスを感じると解約されやすい側面があります。その不満やストレスを解消、もしくはキャッチアップしていくためにはカスタマーサクセスを充実させ、顧客とコミュニケーションをとっていくことが重要です。

一定以上のリソースを確保する必要がありますが、顧客が徐々に増え始めたタイミングにこそカスタマーサクセスは重要なため、チャーンレートを高めてしまわないためにもカスタマーサクセスを充実させましょう。

▼大手企業の開拓
プロダクトの改善と併せておすすめしたいのが、ターゲットの見直しです。本当は事業立ち上げ当初から意識しておくべきことですが、toB向けのSaaS事業において、もしこれまであまり注力してこなかったのであれば、大手企業の開拓に注力することをおすすめします。

以下の記事で詳しくご紹介していますが、事業規模の大きい大手企業はLTVが高いという以外にも、中小・ベンチャーと比べてチャーンレートが低くなる傾向があるためです。

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大手企業の開拓には中小・ベンチャー向けとはまた違ったアプローチが必要になるため、詳細を知りたい方はこちらの記事もぜひお読みください。

- まとめ

■チャーンレートについてのまとめ
- チャーンレートは投資家も見るSaaSやサブスク事業における解約率の指標
- チャーンレートの目安は3%以内
- チャーンレートを下げるには原因調査が重要

SaaSやサブスク事業においては、チャーンレートの把握と分析、低減のための施策立案から実行までを止めずにおこなっていくことが重要です。
そのためには、社内の個人や少人数がチャーンレートの把握をするのではなく、チーム単位・企業単位で共有して改善に取り組む体制作りに努めることで成果が出やすくなります。

時には、原因調査やカスタマーサクセスによる顧客とのコミュニケーションにリソースを集中的に当てていくといった決断が求められる場合もあるでしょう。
チャーンレート改善のための有効な打ち手は、事業が現在立っているステージによって変わるという以外にも、その時その時の市場によって変わることも少なくありません。

「前は上手くいったから」「こうすればいいと聞いたから」で決め打ちするのではなく、今現在のユーザーと市場に向き合って施策を打っていくようにしましょう。