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商談のリモート化で浮き彫りになる”営業上の真の課題”-デジタル化2.0を超えるコマーシャルインサイトとは?

-はじめに

こんにちは、CROHackを運営しているリブ・コンサルティングの水谷です。

この記事を執筆している2020年10月末現在、「デジタル化」という話はすでに当たり前になりつつありますが、加速したデジタル化の流れや補助金の流れに乗って、オンライン面談ツールやSFAツールを導入したという企業も多いのではないでしょうか?

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引用:アサインナビ

わたしも普段はリブ・コンサルティングで多くの営業改革に触れていますが、その中でも多くの企業がツールを導入し、業務の効率化・精緻化を試みています。

しかし導入後、それがうまく根づいたにも関わらず、なかなか期待したほどの売上向上に結びつかない企業も散見されます。
その背景に、ツール導入だけでは対応しきれないような、顧客行動の大きな変化をお感じの方も多いのではないでしょうか?

ツール導入とともに、売り方自体も顧客行動の変化に合わせてアップデートさせていくことが求められ、その成否が売上を左右しているという現状があります。

そこで今回は、いわゆる「商談」を行うタイプのBtoB企業やLTVの高いBtoC企業において、デジタルツール導入後に売り方そのものの変革に取り組んでいる事業部長・営業部長の方をメインに向けて(もちろん営業のメンバーのみなさまにも!)、デジタル化による顧客行動の変化と、それに対応した「新しい売り方」についてお伝えしていきます。

-デジタル化の3段階

大前提として、わたしたちは、デジタル化への対応には以下のような3つの段階があるのではないかと考えています。この段階が進むほど、表層的だった問題意識が深まり、潜在的ながら大きな問題と向き合うことになります。

【デジタル化0.0】
Zoomなどは使っているものの、それ以上のデジタル化は行っていない段階

リアルのイベントなどに顧客を呼び込むことが難しくなり、新たなチャネルとしてオンラインの面談やイベントを企画している企業がこれにあたります。オンラインコミュニケーションの双方向化など、面談やイベントをいかにうまく進めるかという部分に課題感があります。

【デジタル化1.0】
SFAなどのデジタルツールを組織的に導入しているものの、使いこなせてはいないという段階

補助金の流れもあり、ブラックボックスとなっていた営業の実態を見える化して、これから業務効率化やPDCA、人材育成などに繋げようとしている企業がこれにあたります。
営業メンバーがきちんと記入してくれない、記入してくれても複雑で分析レポートをうまく活用できていないなど、ツールに対応するためのオペレーション体制の部分に課題があります。

【デジタル化2.0】
ツールを使いこなせてはいるものの、売り方の改善には至っていないという段階

SFAツールにより、歩留りや受注要因・失注要因もおおよそ特定した上で、それを営業に反映していこうとしている企業がこれにあたります。
ツールを通じて蓄積した知見をどのように営業に生かすのかという部分に課題感があります。

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この記事では、デジタル化2.0の段階の方を対象に、デジタル化によって引き起こされた顧客行動の変化を明らかにするとともに、あるべきセールスの姿を紐解いていきます。
ここを乗り越え、皆様にはぜひ真のデジタル化を実現していただければと思います。

-顧客行動の変化

それでは、デジタル化により、顧客の行動はどう変化したのでしょうか。

この問いに答える前に、まずはデジタル化しても変わらない、普遍的な顧客の購買ステップを整理してみましょう。

① 関連分野への興味関心
まずは友人との会話、ニュース視聴、広告の閲覧などにより、関連分野に対し興味関心が湧く段階から始まります。興味を持ったことにより感度が上がるとともに、自ら情報収集を行うこともあります。

② 課題感の醸成
関連分野の情報が蓄積される中で、自分の要望や課題感が明らかになっていきます。この段階になると、ソリューションを求めて、ありうる選択肢をピックアップし始めます。

③ 選定基準の形成
複数の選択肢を見ていく中で、どのような選択肢があるのかをおおよそ把握し、選択するための項目を出し基準を形成するようになっていきます。

④ 購買決定
最後に、自ら設定した選定基準に照らし、最適だと思う選択肢を選びます。

それではデジタル化によって、顧客の行動はどう変わったのでしょうか?

デジタル領域は、営業よりもマーケティング側で先行して進化しました。
それにより、自社WEBサイト、SNS、オウンドメディアなどクロスメディアを駆使して、より効果的なリード獲得をすることが可能となりました。

一方でその結果、下記アンケートが示しているように、興味関心段階での情報収集は非対面の状態で行われることが一般的となりました。

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これは『隠れたキーマンを探せ!』(神田昌典、リブ・コンサルティング監修)でも紹介されている話ですが、この流れは今に始まったことではなく、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2012年12月号に掲載された調査でも見られた現象でした。

この調査は、顧客がサプライヤーと接点を持つまでにどれくらいの段階まで情報を集めてしまうのかを明らかにするものです。

これによると、一般的なBtoB購買プロセス全体を100%としたときに、サプライヤーの助言を求める段階はどこかと顧客関係者に尋ねた結果、平均57%という結果となったそうです。この57%という段階はまさしく、「③選定基準の形成」を通過した直後にあたります。

そして同様に、購入プロセスから最も離脱しやすい段階はどこかと顧客関係者に問うと、平均37%という結果となります。この段階は、「②課題感の醸成」の直前にあたる段階です。

つまり、顧客は具体的な話をサプライヤーに伝える前に情報を集めるようになったため、面談の前に課題意識・選定基準がある程度固まってしまい、自社商品は競合と同じ土俵で価格競争をすることになってしまうのです。

そして、サプライヤーと接触する前に多くの企業が「②課題感の醸成」に至らず離脱してしまうため、サプライヤーは知らないうちに多くの取引を失っているということにもなります。

そしてさらに厄介なことに、この57%という数字は、時代の流れとともにさらに伸びていることが容易に想像されます。

-対策

顧客は「②課題感の醸成」の前に離脱する。出会えたとしても、出会う頃には「③選定基準の形成」まで完了し、ひっくり返すのが難しい。
この状況に対する一つの答えが、「『②課題感の醸成』の前に会いに行く」ではないでしょうか。

昔は顧客がコンタクトを取ってくるまで待つことしかできませんでしたが、今はデジタル技術の進化により、早いうちに顧客の行動を観察し、それに基づいて誘導したりコンタクトを取ったりすることができるツールが存在します。

ツールについては各社のLPや説明資料に譲るとして、ここからはそこで出会った後、どのように課題意識・選定基準を自社優位に形成させ、成約に繋げるかという観点からお話しします。

-コツは「コマーシャルインサイト営業」

幸運にも、「関連分野に興味はあるが課題感醸成には至っていない」という層に出会い、自社の営業トークを展開できた。しかしなぜか買ってもらえない…または、商品力が優れ、特徴・ベネフィットも好感は持ってもらえるものの、「とはいえ今のもので間に合っている」と言われてしまって購入に繋がらない…という現象はよく見られます。

これでは、せっかく上記のようなツールを使って顧客と出会えたとしても、成果にはつながりません。

ここで重要なのは、ターゲットの潜在課題を掘り出し、自社の強みに合うように整理する、いわば「コマーシャルインサイト」です。

コマーシャルインサイトとは、効果的に自社の優位性をアピールするための手法です。潜在課題を掘り起こして選定基準を設けさせる過程で、まず自社の差別化要素について「不可欠である」と顧客に思わせ、その上で自社の強みや差別化要素を伝えます。

顧客が「あればいいかも」という程度で考えていたものについて「不可欠である」と思わせるために、顧客の事業・組織についての顧客自身の認識を大きく変えるという点に特徴があります。

-コマーシャルインサイト営業の事例

実例の方が分かりやすいので、『隠れたキーマンを探せ!』にも取り上げられている、デンツプライ社の例を見てみましょう。

デンツプライ社とは、デンタルケアを中心とするヘルスケア製品の製造・販売大手の企業です。人間工学を強く意識した歯科用器具を開発し、当時としては技術的にも画期的な軽量・コードレスの新製品を販売しようとしていました。

しかしいざ営業してみると、新製品の素晴らしさは伝わるものの、現在使っている器具にもある程度満足しており、購入に繋がらないという壁が立ちはだかりました。

この場合、製品の素晴らしさは伝わっているため、その点をよりわかりやすく説明したところで効果はありません。

この状況に対し、デンツプライ社が取ったアプローチは、歯科医が製品に対して抱いている認識を変えるのではなく、歯科医自身や歯科経営に対して抱いている認識を変えるというものでした。

新製品販売のための最大の問題は、歯科医が現在の器具にある程度満足してしまっていること、それが歯科経営に及ぼしている悪影響に気づいていないことだと捉えたのです。

そこで彼らはまず、「歯科衛生士の欠勤問題」から話を始め、次にその欠勤が歯科医院にもたらす金銭的・組織的・顧客資産的コストを計算しました。
歯科医は欠勤問題は業界共通の不変の課題だと思っているので、このような計算をしたことはなく、その計算結果には衝撃を受けます。

これにより、歯科医の最大の関心事である「歯科経営で利益を出すこと」と「歯科衛生士の欠勤」の間の密接な関係を認識させました。

その上で、欠勤の大きな原因が、コード付きの重い器具にあることに着目します。人間工学を軽視した器具を扱っているために、仕事中は何時間も手を不自然な角度に固定しなければならず、これが手首の疾患に繋がっているのだということを示します。

これにより、「歯科経営で利益を出すこと」と「人間工学的に設計された、手首に優しい器具」が、非常に強い関係を持つものとして認識されました。
そしてこの因果関係も、歯科医が考えたこともなかった衝撃を伴うものなので、歯科医の強い関心を喚起したのです。

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彼らが行ったのは、もともと上図のようになっていた歯科医の心理マップを、下図のように描き換えるという営業でした。

器具のクオリティを左右する因子としてほぼ認識すらしていなかった「人間工学的設計」の有無が、器具のクオリティという側面を通じてスタッフの手首の健康に大きな影響を与え、それが欠勤問題と強く結びつき、その欠勤問題が歯科経営の利益についての重要因子となっている、という新しい心理マップが描かれ、そのためにデンツプライ社の製品が必要不可欠なのである、という認識を生んだのです。

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このようにして、自社の差別化要素について「あるといいもの=Nice to Have」から「必要なもの=Must to have」という認識を形成させることが、自社の優位性を効果的に伝える上で非常に重要です。そして、このような営業を、コマーシャルインサイト営業と呼びます。

-コマーシャルインサイト営業の4ステップ

事例は複雑に見えたかもしれませんが、抽象化すると、以下の4つのステップを踏んでいます。
※❶❷は暗黙のうちに行われることもあります。

❶目的把握
まず、顧客が顧客自身の事業とどう向き合い、何を目的・目標としているのかを握ります。

❷要素認識把握
目的・目標を起点に、顧客が事業の成功要因に何があると考え、それらの因果関係をどう捉え、それぞれにどれだけの優先順位を割いているのかを把握します。

❸要素認識改変
顧客に対し、成功要因を増やしたり、因果関係を変えたり、優先順位を変動させたりといった認識の変化を起こさせ、ある要素を「必要不可欠」であると思わせます。

❹差別化
「不可欠」だと思わせた要素に関連づけて、自社商品の強みをアピールします。

-あなたの会社の営業は?

あなたの会社の営業は、このような設計がされているでしょうか?

ここで述べたような、「相手の購買心理を予め想定した上で、それをリードしナビゲーションしていく」という精緻な営業方法を実践できれば、「②課題感の醸成」前の顧客を獲得することができるようになります。

しかし、ここでハードルが2つあります。どう設計するのか、そしてどう実践するのかというハードルです。

特に後者について、オンラインになると、対面営業でできていた、「相手の気持ち・反応を言葉・表情・態度から把握し、臨機応変に手を変えて営業をしかけていく」ということは難しくなります。

これは、相手がどれだけ賛同・合意しているのかなど、相手の理解度・前提知識・興味関心を画面越しに察知するのは難しいからです。まだ取引が始まっていない相手ならば尚更で、それを若手営業がおこなうのは、難易度が極めて高いといえます。

したがって、コマーシャルインサイトの例で述べたような精緻な営業方法を設計するだけでなく、若手でもオンライン面談でも、初対面の相手に対してでも実践できるよう、「それを営業シナリオに落として、組織としてその台本を実行していく」ということが非常に重要になってくるのです。

-コマーシャルインサイト営業の設計方法

このような精緻な営業トークをどのように設計すればよいのでしょうか?

これは一言でいえば逆算であり、以下のようなステップで要素を洗い出すことができます。

1.自社の差別化要素を書き出す
2.これとは別に、顧客が最も関心を持つ”結果”を書き出す
3.2から最も重要なもの(顧客の顕在的な関心が大きく、自社の差別化要素と関連がありそうなもの)を選ぶ
4.3の結果をもたらす要素とその因果関係について、顧客の認識がどうなっているのかをマップ化する
5.4を利用しながら、自社の差別化要因と顧客の関心のある”結果”を繋げる
6.5の繋がりを検証・確認する

あとは、これらを3⇒4⇒5⇒1の順にシナリオ化すれば、おおよそ先ほどの「コマーシャルインサイトの4ステップ」を踏まえたシナリオが完成します。

とはいえそれで十分かといえばそうではありません。いきなり「貴社の最大の関心事って、利益最大化ですよね!?」と言われても不快感を与えてしまいます。シナリオ化にあたっては、顧客と普通に会話できる関係を築くところから購入を決意させるところまでの、一連の購買心理ステップも踏まえる必要があります。

一般的に、以下のようなステップを踏むと購買心理をうまくナビゲートできると言われているので、これも参考にシナリオを組んでいきましょう。

1.自己紹介や世間話で、会話できる関係性を作る
2.相手の関心事について相手の知らない新事実を伝えることで、プロとして信頼してもらう
3.目標・現状のヒアリングから、課題感を聞き出す
4.解決策導入のハードルも踏まえ、解決策の選定基準を与える
5.選定基準に沿って、自社の強みを伝える
6.成果イメージとともに価格を伝え、クロージングをかける

-コマーシャルインサイト営業の実践方法

前述の通り、上記のような精緻なシナリオを、相手の反応も見にくい中で若手が行うのはこれまた至難の業です。

しかし逆に、これだけ精緻であるため、合意形成のポイントを基準にして、商談内容を細かく分けることが可能になります。例えば、目標、課題認識、解決策探索にあたってのハードル、取りうるオプション、選定条件、比較結果、契約内容、といった具合です。

このように商談を細分化すれば、1回の商談は30分ほどに短縮され、1~2時間の商談に比べると難易度が下がるとともに、PDCAの単位も小さくなって学習効率が上がります。また、細かく上司のアドバイスを受けることが可能になり、精度も向上します。

シナリオが精緻であっても、というよりもむしろ精緻だからこそ、商談の細分化により若手でも成果を出しやすくなるのです。

-まとめ

この記事をここまで読んでいただいた皆さん、そしてきっと皆さんの顧客企業の多くも様々な経営や事業課題を抱えています。皆さんの会社の商材に関連する分野に関心があったとしても、緊急度や重要度が高くなく、明確な課題感を持つ前に離脱してしまうということもしばしばです。

離脱せずに課題感を持ったとしても、競合との差別化要素を重要視していないと、それが決め手とはならず購入にはつながりません。

この状況に対し、この記事では「早く出会い、出会ったらコマーシャルインサイト営業を行うこと!」という方向性でコマーシャルインサイト営業について深掘りをしました。

そして、実践に向けた方針として、自社の差別化要素からの逆算によるシナリオの精緻化と、商談の細分化による簡易化・精度向上についてお伝えしました。

盛りだくさんではありましたが、内容はシンプルです。まずはぜひ、皆さんの事業の商材の差別化要素を洗い出し、顧客の心理マップを描いてみてください。そしてそこから始まる皆さんの会社の”真のデジタル化”を、心より応援しています!

最後まで読んだ頂いた皆さんにお役立ち資料のご案内です。ぜひご活用ください。

▶オンライン商談細分化の方法と事例のお役立ち資料はこちら

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