デジタル事業創造は「何を目指すのか」を最初に考える【CRORadio#2-01】
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松尾
こんにちは、CRORadioの松尾です。
CRORadioの第1シリーズでは、事業開発を始める際に大事なことは「陥りがちな罠=負け方」のパターンを抑えること、というお話を紹介しました。
最近、数多くある新規事業開発のテーマの中でも、「デジタルを活用した事業開発をしたい」という相談がいまもっとも多いです。
なので、第2シリーズは「新規事業とDX」をテーマに、DXによる事業創造を成功したければ一度デジタルから離れることが肝です!というお話を、モデレーターの黒澤さんと掘り下げていければと思っています。
DX=手段であり「目的」ではないことを理解する
黒澤
こんにちは、モデレーターの黒澤です。
たしかに、最近リブ・コンサルティングさん(CROHack運営元)のHPもDXというキーワードを全面的に打ち出しているのが気になってました。
松尾
そうですね。ニーズの高まりや、リブのミッション・提供価値を考え、2022年から「Commit DX」を掲げ、メインドメインとして取り組んでいく領域です。
こういった背景も影響してか、前述のとおり、いま実際に「デジタルを活用した事業を作りたい」という旨の問い合わせが、新規事業テーマの相談の半分くらいを占めてるんです。
そのくらい”DX事業開発”というものが普通になってきている半面、「何を」という部分が抜けてしまっているのが気になっているところです。
なぜ、DXという手段が目的化してしまうのか?
レガシー企業の場合:変革のインパクトを大きく見せるため
黒澤
目的は決まってないけど、とりあえず予算も取って、「コンサルティング会社に相談してみよう」という問い合わせですか?
松尾
そうですね。事業アイデアの検討もまだ進んでいない段階だけど経営層から「なにか既存事業ではない新しいものを生み出してほしい」という要望が上がったり、そのような危機感を持っているというところもあります。
そのような命題を経営層から課せられたとき、ビフォーアフターを色濃く見せるために変革インパクトの大きいものを考えますよね?
既存事業が非デジタルだったり、そもそも既存事業の事業活動もデジタルを駆使してない領域が多い場合、まずアナログよりデジタル化による変革を…その中でも、これまでと全く違った方法だったら、大きなインパクトを起こせるはず――そうだ!最もインパクトの大きいDX化までを目指そう!という考えになってしまうのだと思います。
ベンチャー・スタートアップ企業の場合:すでにデジタルありきで考える
松尾
レガシー企業だけではなく、PMF後のベンチャーやスタートアップ企業もこのような課題には陥っています。
ベンチャー・スタートアップは比較的デジタル領域を扱っていたりすでに活用している会社も多いので、すでにデジタルありきで考えている部分があります。
そして、これまで1つのプロダクトを主軸に事業を展開していたものの、PMF後のさらなる事業成長のために第2、第3の事業を考える必要があり、創業経営者が得意としてきた祖業以外のプロダクトの創出は難易度が高い、という課題もあるのです。
黒澤
たしかに、原因は事業ステージや環境によって違えど、DXというキーワードがバズワードになっていることもあり、本来は「DXで」という手法なのにも関わらず、「DXを」という目的として捉える方が多そうですね。
生み出す事業変革は何を目指すのかを明確にする
松尾
そうなんです。DXそのものはもちろん今から必要・重要なもので、手法としてDXに辿り着くことも、自然な流れだと思います。
なので、はじめに重要な問いとして、「事業でどこまでを指す(目指す)のか」を明確にすること。どこまで?というのは、目指すべきマーケットの幅と、自分たちの事業の提供の幅を考えるということです。
DX事業の目指す方向性は、高度にするか/広げるかの2つ
多くの方は②の新マーケットに広げる事業を目指しているつもりでも、紐解いていくと①の既存事業のビジネスモデルの延長(高度にするか)でDXを考えているパターンが多いです。
①と②はその境界も難しいのですが、どちらが正しいDXの手法であるということもありません。自社はどこまでを考えていくのか、求められているのか?をこの図をもとに一度検討して、理解したうえで取りかかってみてください。
新たに作り出す事業の目標は、現領域をより強くしたいのか/領域を広げることなのか…DXどうこうの前に「目的」を考えておきましょう。
黒澤
なるほど、まず最初にやるべきは、この図を描いてみて、どこまでを目指すのかを整理してみる、ということなんですね。これを初期段階で行うメリットはなんでしょうか?
チームでの認識のズレを初期段階でなくしておく
松尾
そうですね。新規事業はチームで取り組むことが多いですよね?このコアの部分を整理して考えておかないと、チームメンバー内でも目線・認識が合わなくなってきてしまいます。初期の小さなズレって進んでいくと取り返しのつかない溝になっていくんです。
黒澤
まず、チーム内での目線を合わせて、今後大きくなるズレを最初の段階でなくすということが大事なんですね。
松尾
そして、次のテーマでもあるのですが、ここで大事なことは「デジタル」を忘れることです。
黒澤
忘れる…でもやっぱり考えちゃいますよね?DXと言われたら。笑
松尾
そうですね、そうなっちゃうのが普通ではあるので、どうDXを一度忘れて考えていくのかというお話を次回していければと思います。
黒澤
ここはかなり深堀りをしていかないといけないところですね。
DX化を推進するのに、一度デジタルを忘れる…と――そしてそれを具体的にどう考えて事業成功に導いていくのか?をお話するということですね。
デジタルを活用した事業創造の初期戦略のまとめ
黒澤
ここまで、デジタルやDXを活用した新規事業の第一歩目にどのようなことを考えていくのかをお話しました。
今回の学びのポイントをまとめると以下の3点です。
次回は、この最初2、3の作業を進めるための、具体的な方法を松尾さんに解説していただきます。キーワードは「デジタルを一度忘れること」ですね。
松尾
まとめありがとうございます。そうですね。次回はもっとわかりやすいように事例を用いて説明していければと考えてます。次回もお楽しみに!
編集後記
デジタルありきで考えない、というのは、まずは事業そのものに目を向けるということと同義です。
ただ、その前提としては「デジタルをどう活用できるか」という知識やイメージは基本セットとして持っておく必要もあります。
どうしてもDXテーマで考えたい、そもそもどこから取り掛かればいいのかわからないという場合は、国内外問わず業界や競合の取組みを丁寧にスタディするところから始めることもおすすめです。
CRORadioとは?
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事がみなさんのイノベーションの一助となりましたら幸いです!