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営業-顧客間のブラックボックスを可視化し、アップセル/クロスセルを進める3つのポイント

アップセル/クロスセルの営業DX

あなたの会社は、「既存顧客からの売上を最大化できている。」と自信を持って言えますか?

既存顧客対応は、新規開拓と比べると劣後されやすく、管理の仕組みがあまり整備されないまま現場メンバーに丸投げというケースも少なくないかと思います。

しかし、高い業績を残している営業パーソンの2人に1人は既存顧客管理を非常に重要視しているというデータもあるように
市場の成熟が進む中で、既存顧客管理を効果的に行えるかどうかは、今後の営業組織においてますます重要なテーマとなっていくでしょう。

また、重要であることは認識していても、営業担当者と既存顧客の間のやり取りや関係性が見えづらく、マネージャー層にとって突っ込みづらい領域でというのも事実です。
重要であることは分かっていながらも、既存顧客対応が属人的になり、ブラックボックス化しているというお悩みもよく伺います。

そこで、この記事では、アップセル/クロスセルを再現性高く獲得する仕組みをつくるための3つのポイントをお伝えしていきます。
上記のようなお悩みを解消するポイントが詰まっているので、ぜひ、最後までお読みください。

  1. 顧客セグメント分けのポイント~狙うべき顧客をどう決めるか?~

  2. 情報収集の仕組み化のポイント~組織として可視化の仕組みを作る3つの方法とは?~

  3. KPI設計のポイント~メンバーの成果を最大化するためのKPI設計とは?~


①顧客セグメント分けのポイント~狙うべき顧客をどう決めるか?~

まずは、重点的にリソースを割くべき顧客の洗い出しを行います。
皆さんは、どのように重点ターゲットを選定していますか?
よく耳にするのは、顧客規模や取引額などに基づいて優先順位をつけるパターンです。

しかし既存顧客であれば、より深く、そして新鮮な情報を取得することが可能です。
顧客規模のようにオープンな情報や、取引額のように契約段階の結果情報だけでなく、顧客は現在の関係性に満足しているか、顧客内にどの程度のクロスセル/アップセル余地があるか等に基づいた顧客の分類をすることで、より精度高くアプローチ先を選定することができます。

こうした顧客分類を、常に変動するデータに基づく分類ということで、「動的セグメンテーション」と呼んでいます。

動的なセグメンテーションを行う上での軸は、2つあります。
それは、CS指数とOP指数です。

CS指数は、Customor Success指数の略称で、顧客が満足し、成果実感を得られているかを定量化した軸となります。
具体的な観点としては、顧客の製品/サービスへの満足度、担当者の応対品質への満足度、顧客の成果実感などを観測し、定量化します。

OP指数は、Opportunity指数の略称で、顧客にどの程度、深耕の余地があるのかを定量化した軸となります。
ここでは、顧客のアップセル/クロスセル見込や担当者の役職、社内での影響力を見ることで、提案した際の成功確度を定量化します。

実際に、顧客アンケートをとってCS指数/OP指数に基づいた顧客の分類を行った企業では、情報を取得できた顧客のうち約15%にクロスセル/アップセルの可能性を見出し、クロスセル/アップセルのアプローチを行って既存客からの追加の売上を獲得することに成功しました。

では、実際に熱感が高いと判断された顧客に対して、どのような仕組みを作って営業を行うことで成果を最大化できるのでしょうか?
ここからは、組織としての情報収集の仕組み化、個人の成果を最大化するKPI設計のポイントの両観点からお伝えしていきます。

②情報収集の仕組み化のポイント~組織として可視化の仕組みを作る3つの方法とは?~

まずは、組織としての情報収集の仕組み化についてです。
顧客の情報を集めるのも営業員の重要な役割の一つですが、やはり顧客に優先順位をつけている以上はカバーしきれない顧客が出てくることも考えられます。
また、そうでなくとも顧客との関係性は営業員に委ねられているため、ブラックボックス化しやすいという負の側面もあります。
これらの事情を踏まえると、組織としてもバックアップ的に情報収集の仕組みを持っておく必要があるといえます。

収集する情報は、CS指数、OP指数を測定するうえで求められてくる、顧客の満足度や営業余地に関するものが中心となります。
営業機会に繋がる指標ですので、以降は「営業機会シグナル」と呼んでいきたいと思います。

具体的な営業機会シグナルの観点には、どのようなものがあるでしょうか?たとえば、下記のようなものが挙げられます。

  • 更新タイミング(耐用年数1年以内)

  • 意思決定権者、キーマンの異動

  • 顧客の移転

  • 顧客の方針変更(体制変更による取り扱いの増加、人員削減による生産性向上ニーズ)

  • 競合他社の担当者交代、トラブル

  • 相手の困りごと(緊急対応、経験の浅い担当者)

これはどの企業で起こりうる現象ですが、営業機会シグナルへの感度には、大きな個人差があります。
同じような会話をしていても、売れる営業員は敏感に営業機会シグナルを感じ取り、追加提案機会を創出していきます。

これを、個人任せではなく仕組みとして行うことが、営業組織全体としての既存客深耕を進める上では必須となります。

主要な3つの観測方法をご紹介するので、自社に合うやり方で取り組んでいただければと思います。

1.観測項目を設定し、営業/CSメンバーが情報収集を行う
これは、項目設定を組織で行い、実際には営業メンバーにも動いてもらうアナログなアプローチとなります。

まず、組織として各顧客に対してヒアリングで把握すべきポイントをリスト化し、顧客管理シート等のフォーマットに落とし込みます。
そのうえで、場合によってはヒアリングスクリプトの展開やヒアリングロープレでメンバーの育成を行いながら、ヒアリングフォーマットを埋めることを目指して営業/CSメンバーにアプローチを掛けてもらうことになります。

1人あたりが持っている顧客数が少なかったり商材特性上訪問頻度が多かったりする場合は、顧客との関係性が深まりやすいため、このアプローチで情報を網羅していくことが可能になります。

2.ウェブ上の行動を観測する
これは、デジタルアプローチとなります。
大きくは、自社サービスの利用状況と、自社デジタルマーケティング施策への反応状況を観測します。

自社サービスの利用状況については、SaaS企業の例が分かりやすいかと思います。
自社プロダクトの利用状況(ログイン頻度、使用機能数など)を観測し、解約やアップセルの予兆がないかを確認します。

プロダクトの利用状況での観測が難しい場合は、自社デジタルマーケティング施策への反応状況で観測することも可能です。
たとえば新製品案内のメールを一斉送信した際に、開封状況やリンククリック状況を追うことで、クロスセルの余地を見出すことができます。

Web上の動きを顧客リストと紐づけて管理する仕組みがを構築する必要はありますが、一度仕組みを作れば、「新製品のリンクをクリックして詳細を閲覧した。」というより本音に近いデータをもとに、ホットなターゲットを選定することができます。

3.CSアンケートを取る
こちらもデジタルアプローチです。
顧客に対してWebアンケートを送付し、その回答から顧客の満足度やアップセル/クロスセル意向、紹介意向などを把握しにいきます。
アンケートというと、当たり障りのない満足度調査で終わってしまっているケースもあるかと思いますが、より踏み込んだ設問設計により、満足度要因の詳細の特定や、売上拡大余地の把握を行えると、与件発掘へと繋がります。

一般的な満足度調査では営業担当者は悪い結果を恐れてアンケートを嫌うケースもありますが、与件発掘に繋がる設計のアンケートに切り替えれば、
黙っていても解約リスクのある顧客や深耕余地がある顧客を洗い出してくれるため、属人性が排除されると同時に営業現場の生産性も大きく上がります。

特に、1人あたりが持っている顧客数が多い営業組織や、ウェブ上での行動観測ではデータが不十分な企業には、最もオススメなのがアンケート施策です。

アナログ型情報収集、ウェブ上の行動の観測、CSアンケートと、営業機会シグナルの3つの観測手法をお伝えしました。
自社の特徴に合った方法で営業機会シグナルを観測する仕組みを作ることで、潜在的な営業機会を洗い出し、既存顧客深耕をより効率的に進めることができるようになります。

③KPI設計のポイント~メンバーの成果を最大化するためのKPI設計とは?~

そして、個人の活動目標として落とし込んでいくKPIの設計にもポイントがあります。

一般的なKPI設計というと、架電数やアポ数、商談数、クロージング面談数といった行動量を管理するKPI設定が一般的です。(量的なKPI)

しかし、既存顧客との関係構築度合いを主要なKPIの一つとして追うため、「関係構築フェーズ」に基づくKPIを設定し直しました。(質的なKPI)

「関係構築フェーズ」とは、顧客との関係構築段階を細分化し、可視化したものになります。

たとえば添付の例では、0~4までの5段階、⓪開拓→①面談可能→②信頼関係構築→③プロポジション→④パートナーに分けています。
ここで重要なのは、各フェーズの定義の解像度が高いことと、上位フェーズへの活動KPIが設定されていることです。

各フェーズ定義は、「誰が判定しても同じになる」というレベルでの具体度が求められます。
たとえばPhase2とPhase3は、どちらも相見積もりをとられていますが、競合の情報や妥協できる点などの情報を貰えていればPhase3というふうに、提案時の反応で明確に区別することができます。

「今のお客さんとの関係性は、ある程度信頼されている状態ですか?それとも、信頼を越えてプロとしてのポジションを取れている状態ですか?」と各営業メンバーに聞いても、その答えには営業メンバーの主観が入り、回答結果の精度は低く、データとして信頼しきれません。

一方、「この案件は、他社と同列な状態での相見積もりですか?それとも、他社情報や妥協点などを教えてもらえていますか?」という質問であれば、それは営業の主観が入り込む余地がなく、客観的な顧客の行動に基づいて回答できる質問ですので、1つ目の質問と比べて回答精度は高いと言えるでしょう。

このように各フェーズの解像度を高く定義することで、関係性を定量的に可視化し、観測することができます。

続いて、上位フェーズへの活動KPIの設定です。たとえば先ほどと同じくPhase2→3の間を見ていくと、

  • 意思決定権者から他社情報(金額、仕様)を収集できていること

  • 入札時に指定メーカーに入れてもらえること

  • 意思決定権者との10分以上の面談実施をできていること

  • 顧客スタッフ責任者から相談があること

の4つが挙げられています。

上記4点は、「これができると次のステップに進める」というアクションになります。
ですから、MGRとしても、「どうやって意思決定権者と10分以上の面談を実施するか」など、活動KPIを達成していくための具体的なアクションに繋がる
フィードバックを行えばよいということになります。

先ほどの関係構築フェーズの定義と、この上位フェーズへの活動KPIが組織の共通言語として浸透することで、成果・生産性を高めることができます。
関係構築フェーズが浸透している組織としていない組織の、同じ営業案件への前日のMGRレビューの様子を比べてみましょう。

<関係構築フェーズが浸透していない組織>
部下:「明日訪問するA社からは、わりと信頼してもらっていると思うので、再来月の新製品導入もたぶんいけるんじゃないかと思います。ただ、あんまり意思決定権者とは話せていないので、そこがちょっと不安です。」
MGR:「担当者とはどんな関係性なの?」
部下:「担当者とはけっこう仲良くなっていて色々情報も貰っていますよ。たぶん相見積もりになりますけれども、そのうちの1社には入れてくれると思います」
MGR:「担当者との関係はいいね!意思決定権者とは最近いつ話した?」
部下:「3か月前くらいですかね、ちょうどタイミングが合ったのでご挨拶してきました。けれども、そこからはあまり会えていないですね。」
MGR:「そうしたら、まずは意思決定権者と会いたいね。面談を打診できるかな?」
部下:「そうですね、明日打診してみます!」

<関係構築フェーズが浸透している組織>
部下:「明日訪問するA社とのいまの関係値は、フェーズ2です。フェーズ3に高めて再来月に出る新商品を確実に買ってもらえるように、意思決定権者との15分の面談を打診する予定です。」
MGR:「いいね。あの規模の会社の意思決定権者だと、最近○○がトレンドみたいだから、新商品と絡めて~~~な話をフックに打診すると良いと思うよ。」
部下:「ありがとうございます!その形でアプローチしてみます。」

明確な基準を組織として共有することで、成果の再現性を高めることができるようになります。

もちろん、この指標を設定するにあたっては、トップセールスが顧客との関係深化のためにとっているアクションを分析し、成果に繋がるアクションは何か、関係性を築いていくステップはどのようになっているのかを明確にしています。

まとめ

改めて、新規顧客営業中心の組織から既存顧客深耕も行える組織体へと変革を進めるためには、3つのポイントを抑える必要があります。

①顧客セグメント分けのポイント
②情報収集の仕組み化のポイント
③KPI設計のポイント

既存顧客深耕も進められる営業組織を目指したい方は、ぜひ組織体制構築に向けた取り組みを進めてみてください!

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