神田昌典氏と語る!リモートファースト時代の営業必勝法とは【part1】
「そういえば、まだ翻訳もされていない本に『REMOTE FIRST』という書籍があって、それが今の時代にぴったりな1冊だったんですよ」
この対談は、神田昌典さんとのこの一言から実現したものです。
-ステージが変わりつつある今、重要な選択の時期
こんにちは。CROHackでエバンジェリストを担当している権田和士です。
ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)が国内でも新型コロナウイルスの治療薬として承認されたことをキッカケに、日本でも緊急事態宣言の延長が一転、39県解除の動きとなり(2020年5月15日現在)、コロナウイルスの「出口戦略」という言葉が一部のメディアから出てくるようになりました。
そんな中、Google社やFacebook社はすでに年内のリモートワークを決定しています。皆さんの会社は新型コロナウイルスが終息した後も、リモートワークを続けますか? 私も、まさに今、会社の役員としてその重要な選択を迫られています。
リモート環境への適応は、遅かれ早かれ数年以内にどの企業も対応していかなければならないと感じていたことと思います。それが新型コロナウイルスの流行によって、一気に、そして半ば強制的に推し進められ、私たちは距離を越えたビジネスの方法を手にしました。
この状況下で皆さんは、成果を上げるレベルでのリモートシフトができているでしょうか?
今回の記事ではpart1、part2の2回に分けてリモート環境の変化を説明していきます。
-リモートフレンドリーとリモートファースト
前置きが長くなりましたが、私たちは今すぐにでも「リモートフレンドリー=リモートに慣れる、親しむ状態」ではなく、もう一歩進化させた「リモートファースト=リモートで成果を上げる状態=リモートウィン」にならなければいけないと考えています。
そこで、1冊の書籍と出会いました。まだ翻訳もされていない洋書、
「 REMOTE FIRST A Manager's Guide to Building Remote」です。
REMOTE FIRST も実はコロナがきっかけで出版された書籍ではありません。しかし、リモートフレンドリーを越えた「リモートファースト(リモートウィン)」の状況を作るためのTipsに富んでいます。
今回はこの書籍の内容にも触れながら、リモートシフトの過渡期に、私たちが事業をどのように考える、どう成果を上げていくか、書籍を紹介してくれた神田昌典さんと、弊社CEOの関の対談を私がモデレートする形でお話してまいります。
神田昌典 氏 (アルマ・クリエイション 代表取締役)
上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済部に勤務。戦略コンサルティング会社、米国家電メーカーの日本代表として活躍後、1998年、経営コンサルタントとして独立。『GQ JAPAN』(2007年11月号)では、“日本のトップマーケター”に選出。
また、コンサルタントとして独立と同時に作家デビュー。2012年、アマゾン年間ビジネス書売上ランキング第1位。2014年、米国ウォートン校が主催する「ウォートングローバルフォーラム東京」における特別講座にて、唯一の日本人講師を務める。2018年、マーケティングの世界的権威のECHO賞・国際審査員を務める。
ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。
関 厳(リブ・コンサルティング 代表取締役)
東京大学卒業後、大手経営コンサルティング会社に入社。住宅・不動産、自動車、電機メーカー、卸売など幅広い業界にて、担当企業の増収増益を実現。同社にて、史上最年少で取締役、その後専務取締役に就任し、コンサルティング部門を統括したのち、2012年、「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」を理念に、リブ・コンサルティングを設立。
コンサルティング活動以外にも講演活動を行っており、年間約5,000名を動員。著書「経営戦略としての紹介営業」(あさ出版)は、国内だけでなく韓国・タイで翻訳、発売中。
-マーケティングプロセスにオンラインを入れられるかが鍵
権田 今回の対談は「どのようにリモート環境で成果を上げるか」というテーマですが、このテーマを語らせるならば、やぱり日本で一番、神田さんが適任なのではないかと思います。神田さんのリモートで勝つための意識を教えてください。
神田 はい、リモート環境に変わってマーケターに大きなチャンスが来たと考えています。
例えば、セミナーはこれまで完全にアナログファーストでした。デジタルもありましたが、オプションの役割であり、CPA(Cost Per Action)・CPL(Cost Per Lead)はここ数年ずっと上がっていました。
しかし、このリモートへの環境変化で、弊社は、メルマガの開封率は約2倍となり、CPLは3分の1~5分の1に 下がりました。CPAやCPLは格段に下がり、これまでオンラインセミナーに全く反応のなかった層から申し込みがあります。今や100人、200人、1,000人集まるイベントもあります。
説明会に数百人が集まり、その場でマーケティングプロセスに沿った適切な商品説明やアクションを行えば、かなり効率的・有効的なのではないでしょうか。
また、この1カ月でビジネスが全体的にオンライン会議慣れもしてきたので、この状況が完全に戻るということはない、と思っています。ということはオンライン開催をマーケティングプロセスの中に入れられるかということが、事業の業績を決定的してくるでしょう。
また、これまでのマーケティングでは、LP(ランディングページ)の精度が問われました。LPもしくは、インサイドセールスでCPAが決まっていたと思います。
したがって、LPを作り込み、MA(マーケティングオートメーション)を入れ、インサイドセールスを効率的にという動きがメインとなっていました。
しかし、そこにはデジタルとアナログの分断があり、インサイドセールスの育成や、マーケと営業の意思疎通が一番の課題だったのです。
ところが、リモートが当たり前になると、LPからのリードがずっと同じオンライン環境でインサイドセールスまで行うという状況が起きます。フィールドセールスの役割も大きく変わってくるでしょう。
権田 もともとは、オンラインはLPによる静止画→インサイドセールス(コールでの営業)→フィールドセールス(対面での営業)と行ってきたものが、動的なアプローチ(ウェビナー→リモートでのアポ)の中で、すべてが完結できるようになったということですね。
では、リブ・コンサルティング(以下 リブ)はどうでしょうか? リブの場合は、クライアントの多くが地方にいて、現場に行ってハンズオンでガッツリ成果を出してきたのですが、この変化はいかがですか?
関 そうですね、ビジネスにおいて日本は、海外より大きい変化が起きていると思います。
理由は平均年齢の違いです。中国やアメリカの平均年齢は37歳に対して、日本は47歳なんです。そうすると、これまでデジタル化しようとしても、年配の層がデジタル化に動いてくれなかったことが課題だったと思います。
ターゲットに若年層以外を含む企業は、このハードルを越えるために、費用を投下し、苦労もしてきました。この層がデジタルサイドに必然的に動いたということは非常に大きな変化ではないでしょうか。
また、私たちのコンサルティングの領域でも、これまでは「直接会ってやってほしい」とか「現場を見ないと」という話がありました。「現場」という言葉はその会社が”売上を発生させている瞬間”とか”商品サービスを提供している瞬間”のことを指していたと思うんです。
しかし、オンラインでお客さんを見つけ、そこで契約まで進めるので、もうオンラインが「現場」になってるんです。少し矛盾している言葉ですが、40~50代の経営者を中心に、リモートの世界を一つの現実・現場として捉えるようになってくれたんです。
パソコンとかスマホの画面上に現場がある、ということはすごく大きな変化だなぁと。
権田 なるほど。「現場」という概念にも、オンラインが入ってきたというところですね。
-動画の価値の変化
権田 一方で、これまでの動画の価値はアーカイブという観点があったと思います。参加できなかったセミナーの録画を見るとか、見返すためとか。
しかし、動画もライブとしての価値がかなり大きくなっていますね。コンサルティングの現場においてもおそらくeラーニングではなく、ライブでコンサルティングが行われることで以前の「現場」の概念と同じ価値を感じている方が多いのではないかと思っています。
今後の活動では、この「現場」という価値=ライブで進んでいくのか、それとも動画の普及でアーカイブの評価が上がってくるのか、神田さん、こちらはいかがでしょうか?
神田 鋭いですね。ガイアという企業があるので説明させていただきます。ガイアはNetflxのスピリチュアル版です。
https://www.gaia.com/?utm_medium=company_profile&utm_source=trustpilot&utm_campaign=logo_click
ヨガや、ナチュラルフード、フィロソフィーの動画を集めたサブスクリプション型のサービスで、非常に注目されているサービスです。
松竹梅と3つのメニューがあるんですが、「松」がライブで参加できるというメニューで、24ドル台なんです。その他のメニューは、ライブ参加はできず、いずれも11ドル、8ドル台です。
非常にわかりやすく、ライブで参加(やり取り)できるインタラクティブなサブスクリプションプランは高いんです。Netflixはそこまでないですよね。ライブでディカプリオとやり取りできるってないですから(笑)
しかし、そうではない視聴サービスにおいてはそのような形に料金形態が変わってきています。なので権田さんの推測はおそらくその通りになっていくと思います。
-同じ「ライブ」でも変わる成約率
権田 「現場」というもの自体が、ライブに置き換わっていく中、成果へつなげていく方向はどのようになっていくんでしょうか?
神田 「収録」と「ライブ」は、マーケッターの立場から見ると役割が全く違いますし、成約率が変わるため、役割に応じ、使い分けが必要なのではと思います。
例えば、Zoomでインタラクティブにライブ参加した場合とYouTubeのアーカイブで見た場合、その後の成約率全くが違うということがありました。
Zoomはプレミアムプランを使用しても、1,000人までしか参加できないので、1,000名以上になるとYouTubeなどでの配信になります。
選択肢を与え、準備を行う
・リアルタイム質問を希望する方はZoomで参加
・聴講のみを希望の方は Youtubeで参加
その2つの参加環境をテストしたとき、圧倒的にZoomでインタラクティブに参加した人の方が成約率は高いのです。
権田 面白いですね。要因はなんでしょう?
神田 YouTubeでの参加者で目立ったのはどちらかというとネガティブコメントです。
「〇〇と言ってることと変わんないじゃん」
「何それ?ださいなー」
…のような日和見の方がYouTubeに行かれるケースがあります。そうすると周りの環境に影響されて、モチベーションダウンします。対処法としては、YouTubeのコメント欄は許可制にするか、コメント欄をつけない、というものになってきますね。
逆にZoomのような、インタラクティブな環境では、参加者が互いに盛り上げようとしますのでネガティブなコメントもそこまで見受けられません。参加環境が違うのです。
また、アーカイブを残して、繰り返し見たいという方もいらっしゃいますが、実は「この場でしかか話せません」と言ってアーカイブにしないほうが、結果的に反応はいいです。
権田 なるほどなるほど。
神田 空間の概念が拡張し、自由に参加できるようになったがゆえに、どこかで「時間」というもので制限をかけ、価値を引き上げていく…ということなのではないかと思います。
権田 確かにそうですね。REMOTE FIRSTにも書かれているんですが、「ビデオ通話の設計はカメラオンポリシー」で、いかにカメラオンで参加するかを一番大事してるという一節があったと思います。これも一種の制限ですね。
REMOTE FIRST(日本語訳、抜粋)
カメラオンポリシーを採用することで、チームメンバーはお互いに共感し合い、お互いに話しすぎないように気をつけ、口調もより丁寧になるかもしれません。ビデオ接続は、相手が人間であること、また、対面での一般的なエチケットがすべて適用されていることを簡単に思い出させてくれます。
視覚的な接続は、リモートチームが通話に集中するのにも役立ちます。従来のオフィスでは、机の上の物や通りすがりの人に気を取られずに会話をするために会議室があります。リモートワークでは、さらに気が散ることがあります。誰もが静かなホームオフィスで仕事をしているわけではありません。カメラオンポリシーを導入して、集中できるスペース、つまり仮想会議室を作り、リモートチームがどこで仕事をしていても従来のオフィスで働いているのと同じメリットを得られるようにしましょう。
(中略)オープンなビデオ通話を行うことで、より高いレベルの仲間意識が必要になることがあります。例えば、1日がかりの集中的なプロジェクトがある場合、オープンラインを維持することで、チームが継続的にお互いをサポートし合うことができます。従来のオフィスでは、グループは会議室に集まり、お互いの会社を利用してタスクを進めることができました。しかし、遠隔地にあるグループのための会議室がない場合は、オープンビデオ通話で代用することができます。
(中略)これまでチームでカメラオンポリシーを導入したことがない場合は、導入することで大きな変化が得られます。
(中略)チーム文化に大きな変化があっても、一貫性を保つことが重要です。やがてチームは変化を受け入れ、新しいルーティンが第二の自然のものとなるでしょう。
権田 Zoomでのリモート会議も、インタラクティブだと言っても、実際はチャットで書き込んだ文章で表情が推測できるというレベルで、このカメラオンポリシーによって、ライブ感の醸成や、コメントがポジティブに変わったりということがあるんでしょうね。
神田 REMOTE FIRSTを読むまでは、カメラオンポリシーについては特に社内で言及していませんでした。するとやはり社員の皆さんはプライベートな空間がカメラに映るのが嫌なのでカメラオンはしないんですよね。しかし、REMOTE FIRSTを読んで、私はカメラオンポリシー社内に導入しました。そしたらやっぱり関与意識や一体感が高まり、場は盛り上がるんです。それに、カメラオンポリシーによってながら仕事も減ったんです。この経験からわれわれの社内会議はカメラオンポリシーが原則です。
REMOTE FIRSTような、ちょっとした制限やルールというものがどれだけ大きな違いを生み出すかを知っているかとそうでないかの差は大きいと思います。
関 そうですね。リブも1日のモチベーションにつながる朝礼や、会議も大人数の会議ほどカメラオンで行ってます。
(リブ・コンサルティング社内会議の様子)
-ウェビナーで参加モチベーションを上げる技術
権田 一方で、ウェビナーの場合はどうなんでしょうか?
神田 ウェビナーも同じです。ウェビナーで大事なことは、「どれだけ参加意識の高い人たちを集め、参加者の集中力を持たせられるか」なんです。これは主催者の技術にもかかっています。
積極的に参加している比率が多ければ多いほど、場の盛り上がりは高いです。
その判断は、以下の点をチェックすることが好ましい
・積極的にカメラオンをしている人が多いか
・チャットへの反応する人が多いか
具体的にはエンターテイメントと全く同じです。
・最初の挨拶で盛り上げる
ウェビナーの冒頭に、「では、始めます」と開始するのではなく
「皆さん聞こえますか? 聞こえたらOKサイン出してくださいね!」
「(サインが見えたら)いっぱいの方ありがとうございます!」
「聞こえたらチャットにそれぞれの言葉でコメントしてくださいねー!」
と、冒頭に参加モチベーションを一気に上げる
・投票や、質疑応答などをはさむ
インタラクティブな環境が用意されているといっても、主催側が長時間一方的に話し続け、参加者も一方的にコメントを送り続けるのではなく、30分に1回程度はコミュニケーションの時間を持つ。
講演内容の投票や、テーマごとの質疑応答などを挟むことにより、参加者の集中を意図的に一次中断をすることで、参加者がリフレッシュし、その後も集中力が高まる
神田 来ていただいた方をエンターテインメントしながら、インボルブ(巻き込み)すると全然集中力が違うんです。エンターテイメント性をもって巻き込んでいくと、司会の力・ファシリテーションの力というものが非常に重要になります。
■まとめ
まとめ
・リモートフレンドリーとは必要がある部分をリモート化し、その環境に慣れ親しんでいる状態。
・リモートファースト(リモートウィン)とは、リモート化を必須(基盤)として、成果をあげている状態。
・今の日本のビジネス環境はリモートフレンドリーにとどまっており、早急にリモートファースト(リモートウィン)に移行しなければならない
明日は、part2として、リモートファースト(リモートウィン)を実際の事業にに落とし込んだとき、何が起きるのか・何がポイントとなるのかを深堀して説明します。part2はこちらから!