神田昌典氏と語る!リモートファースト時代の営業必勝法とは【part2】
前回の記事では、リモートフレンドリーとリモートファースト(リモートウィン)の違いについて神田さん・関よりお話をさせて頂きました。今回はそれを実際に事業に落とし込んだときに何が起きるのか・何がポイントとなっていくのかを深堀りしていきたいと思います。
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※こちらは記事のpart2です。まだpart1をお読みでない方は、是非part1からお読みください。
-リモートのジレンマのリアル
権田 神田さんはやはり、かなり進んでいる状況(part1参照)ですね…。その一方で、ほとんどはリブが感じているリモートフレンドリーからの脱却というジレンマと近いものを抱いている企業が多いのではないかと思います。
なので、リブサイドの話も聞きましょう。われわれは、 元々アナログの現場、リアルの現場だったところから、この1~2カ月で急速に現場をオンラインに変えていますよね。
その中で、関さんも、ウェビナーを開催したり、試行錯誤しながらPDCAを回していると思います。採用面でも毎月100名が参加していた説明会もないし、面接もリモートに変わってい中で、どのようなことを考え、どんな工夫をされていらっしゃいますか?
関 対社内と対顧客と対求職者という3つの観点がありますが、対顧客・対求職者という外部との接点に関しては、正直ここは先ほどの神田さんの話を聞くと、全然進んでないですね。手探りな部分がかなりあります。
理由としては、ケーパビリティ(能力・強み)が変わってきていることでしょうか。例えば、今までコンサルティングやセミナーでお客さんからの評価が良かったコンサルタントが変わっているんです。
その理由は、対面の際は相手の表情を読む力や、その場を臨機応変に対応する力などが重要だったと思います。 WhatとHowがあるとしたら、Howの部分を工夫できるコンサルタントが強かったのです。
しかし、デジタル上になると細かい雰囲気をくみ取れなくなり、その場の対応力というものが十分発揮できなくなります。したがって、事前の全体の設計や、Whatの部分をしっかり準備できる人の方が活躍してくることになると思います。
また、先ほどの神田さんの話を聞き、なるほど、と思ったのが、「自由になっている分、ルールを入れないといけない」という部分です。
オンラインで接点を持つと、1日に持てる接点の数が格段に増えます。ただ一方で、次のステップに進む数というのは反比例して減っています。対面だった時の移動費、そして時間というものがなくなったことで、接点量が増え、お互い1回の接点に対しての価値が下がり、真剣に望んでないというケースが増えます。
そこに対して制限をかけていかないと、何となく面談をしたが最終的に得られるものはお互いに少ないという状況が起き、それが蓄積すると徒労感が今後出てくると思います。幅が広がっている状況に対して、どう絞り込みをかけるかを考えないといけない段階なのかなと感じました。
-前説得でコミット顧客を引き出す
権田 なるほど。確かに、実際われわれ自身もウェビナーやるとリアルでセミナーを行っていた時よりも2倍~3倍くらいの集客になってますよね。CPAは下がったが、そこからのマネタイズ、契約率には苦戦される状況が来るのではないか、ということですね。
神田 そうですね、そこはマーケティングがファネルの入り口から「その後のプロミスをいただいた上で参加してくれるリードを集めているか」で大きな違いを生んでいきます。例えば、誰もが気軽に参加できるからこそ、登録制で参加いただけるかが、成約率に影響を与えるということです。
また、ホワイトペーパーや面談も、コンテンツの作り方を「相手に与えるバリュー」と、「こちらの条件提示」を明確にする=パースエイジョン(前説得)をしっかり中に組み込んでいくかどうかによって、自社に適切なお客様のみに適切なサービスを提供することができるようになると思います。
権田 まだリモートファースト(リモートウィン)で考えたら、ウェビナー100名集客できた!で満足しては駄目だと。実際にコミットメントをどう引き出すか。前説得や、カメラオンポリシーに乗っかってくれる人がどれだけ集まっているかところもKPIになってくるんですね。 タダ乗りするな、ということですね。
神田 そうです。自社の提供価値にぴったりのお客様=カスタマーサクセスが非常に重要になってきましたね。このお客様が明確になっていれば、必要以上にお客様を集める必要はなく、このお客様だけをキープすることに尽きます。カスタマーサクセスにコミットしない限り、これからのマーケティングは成り立たないということですね。
カスタマーサクセスにコミットするには、自社の事業価値・提供価値が一体何なのかを明確にしないといけない。しかし日本ではどっちも曖昧です。というところが、デジタルで効果を上げられないのだと思います。
そういった全体構造を理解した上で新しいビジネスモデルを作り替えていくことが必要だと思います。
権田 そういう観点でいくと、リモートフレンドリーとリモートウィンの違いは集客で満足するのではなく、本当に契約に至るところまで設計をして、最初の入り口のコミットから進めていくというところですね。
-セールスのケーパビリティの変化
権田 関さんにお伺いします、具体的な商談フェーズでセールスのケーパビリティはどう変わりますか?プレゼン型だったのが、ファシリテーション型になっていくとか…
関 そうですね、前提として、マーケティング、セールスのどちらで商品やサービスを売るのかという点がありますが、急激にマーケティングサイドに重心が移っていると考えています。
セールスのポイントが変わってきている中で、どこがポイントになるだろうと、さまざまな書籍を参考にしたのですが、今日の対談とは全く関係なく「不変のマーケティング」にたどり着きました。ここを今より深掘りをしてるっていう状態です。
そもそも、セールスは、何をする人か?を考えたときに、ある程度高級消費財やBtoBで高いものを売るものに存在するかなと。その価値は2つあり、消費者が消化できないほどの情報量が意思決定において必要なもの、2つ目は、消費者サイドに対してカスタマイズをする必要性があるものです。
この2つの観点は営業が情報をキュレーションしたりとか必要な情報をカスタマイズして与えることで、相手が意思決定できる道筋を準備していたのです。
リモートになったとき、お客様から情報を引き出してカスタマイズする・必要な分の情報量をスピーディーに提供する、ということは難しくなってきています。
結果として、その営業の役割自体が縮小化してきており、マーケティングによって解決するという流れなのだと思います。
今までのセールスは、ヒアリング能力を駆使した提案ができる営業がトップセールスになりやすかったのですが、今後は、一本調子の人でも、シナリオとコンテンツが揃っている人が活躍していく=トップセールス像も入れ替わるのだとと思います。
そういった意味で、「不変のマーケティング」に行き着いた理由は、書籍の内容が、セールスプロセスを分解してマーケティングにどんどん組み込むという内容だったためです。
権田 確かに「セールスのマーケター化」は、もともと何年か前からこう言われていたところです。それの加速が起きているんですね…神田さん、いかがですか?
神田 私は、今はチョイスだと思うんです。今まではマーケティングの強い会社よりもセールスの強い会社の方が結果として勝っていましたが、それが曖昧になってきたかなと。
とはいえ、セールスがまったくなくなることはないので、セールスプロセスをどこまで残すべきかーその意思決定は事業戦略として必要になってくるのだと思います。セールスプロセス自体をしっかりと再設計していかない限り、オンラインセールスでの成果は出ないでしょう。
関 確かに。「セールスをどこまで残すか」というお話は、今後いろいろな企業が模索していくとと思いますね。
例えば商品価格の10%くらいは営業経費です。なので営業を不在モデルにして、削減した経費を価格に反映させることによって、利益を保つというようなビジネス形態にトランスフォーメーションするのも1つの手段ではないかと。
実際それも難しい商品やサービスも多くあるのも事実ですよね。その場合のセールスはどういう役割になるかーそれは「深い人間関係(=信頼関係)を築く」っていうことになるのではないかと思うんです。
すると、ほとんどの会社が1回はアナログで接点を持って信頼関係を築くというプロセスを残すような気がしてるんですよ。
ただ一方で、「再現性のある深い人間関係の築き方をデジタル上でやる」ということをやれないと、やっぱり根本的な解決策にはなっていないので、そこが肝になると思っています。
もう1つ選択肢があるとすると、「営業の信頼関係=その会社に対しての信頼関係」を作るという側面もあると思うんです。
その場合、オンラインの対面だけではなく、タレント化ではないですが、会社のCxOなどがその領域でちょっとした権威になる…とか、これまでメインだった「営業への信頼→企業への信頼」から「企業への信頼→営業への信頼」も、そんな形になり得るのかと。
セールスで信頼関係を築かなくても、その人のことを信頼する状態を作るという動きもあり得るかなと。
オンラインによって、いろいろな選択肢が生まれましたよね。
-事業と組織を一体で進めることの重要性が浮き彫りに
権田 ではここからは、組織の話にも移りたいと思います。関さんいかがですか?
関 そうですね、対社内ですと、成果とタスクのマネジメントが改めて非常に重要だったと感じています。
すごくダイレクトな言い方をすると、弊社のコンサルティングというビジネスとリモートは相性が良かったということに尽きるかなと思っています。
コンサルティングビジネスは、何となく会社にいて働くとか、仕事が曖昧に生まれるという状況があまりないのです。クライアントにコミットするためにこのタスクをやらないといけないという状況がチームで割り当てられているビジネスです。したがってここのシフトは、正直そこまで難しくなかったと思います。
逆に言うと、複数の人が行っている三遊間のゴロを何となくやる処理するような部分が多い企業もあると思うんです。そういった働き方の人が多い企業は、その三遊間ゴロが見えにくくなっていくので、リモートシフトっていうのはやっぱりかなり難しいんだろうなと。
神田 私たちは、ミーティングをデザインしていくことが全てだと思いました。
具体的には、われわれは毎日15分のミーティングをオンラインで行います。この15分の中で、それぞれの持っている仕事と成果を上げるためにブロック(障害)になっていることを共有しています。メンバーがどんな目標に向かっているかを把握した上でサポートする環境を整えていますね。
しかし、毎日たったの15分なのですが、このミーティングを行うためには、しっかりとKPIが明確になっていないといけません。このKPIは数値ベースが望ましいです。わたしたちが使っている指標はMRR(Montly Recurring Revenue=月次収益)です。
MRRを意識すると、流出率および満足度など、いわゆる「継続」に影響する因子を意識することになります。教育も含め、ここまで約1年半くらいかかりましたが、おかげで気づいたらリモート環境に環境に移行しても全く影響がない組織体が出来上がっていました。
そういった面でリモートの組織で重要なことは、経営戦略と直結していることです。ビジネスモデル自体をリモート環境に適切な形で作り上げられているか?が重要な課題だと私は思います。事業と組織は本来一体で進むべき、ということですね。
-今後重要な力「自走力」は相乗効果で養う
関 そうですね。リモートシフトでどの会社も必要な個人のスキルも、「自走力(自己管理能力)」だと思います。今後、個人は自走力を鍛え、企業は採用・評価に際に自走力を今以上に重視するべきだと思います。
先ほどのKPIの管理の話でも、オフィスにいたときは誰かが見てくれていたという状況だったと思うんです。ぼーっとしてたりとか、悪意なく忘れていることも誰かが適切なタイミングでサポートしてくれたり。少し気が緩んでいるところを集団という目によってペース維持できるところがとあったと思うんです。
その利点がなくなってしまうので、自走力が明確な強み・才能として認められ、そこで差がついてしまうのだろうなと。
リモート化でその自走力をサポートできるマネジメントは、その人の「やる気」、やはりモチベーションが起点になってくると思うんですよね。
権田 マネジメントサイドは、いかにセルフマネジメントをフォローしてあげるかの重要度が上がってきますね。
関 もう1つ、今のリモートにおける組織の目指す姿は「アナログで行われていたことをいかにリモートで再現が可能か」で、それをずっと議論してると思うんですが、そもそもそこが間違いじゃないかと。
しかし、アナログの組織環境でさえ、100点の会社は非常に少なかったわけで。みんな60点くらいだったものをデジタルシフトで100点にしようとしてるわけです。
だからそこにそもそも無理があるような気がしています。その目指す姿から考え直さない限りはちょっと難しいですよね。視点を変えて、リモートやデジタルだから生まれる組織における価値が何かを議論する必要があるんです。とはいえ、われわれも見極められていないな…という部分はやっぱりありますけど。
権田 そうですね、組織面においてもリモートフレンドリーの最適化という時点で止まっているといことですね。神田さんはどうお考えですか?
神田 実際リモートによってもたらされた価値もありますよね。具体的には採用です。なかなか優秀な人財が採用できなかった中小企業は、リモートによって優秀な人たちが副業などを通じて、数時間であっても手伝っていただける環境ができたんです。
また、今まで浮かび上がらなかった人や資質というものも浮かび上がらせることもできると思います。例えば、30人がいるような大きな会議の中において、リアルの場だと発言できる人はとほとんどいなかったと思うんです。社長やその場のリーダーだけが発言していたという状況とか。
でもリモートの場合は、会議のファシリテーションの仕方を少し工夫すれば「ここから先はチャットでご意見をください。入力する時間を3分取ります!」と言うと、3分後には30人分の意見が上がってきます。文章をパッと見ただけでどこまで深く考えてるかっていうのは一目瞭然です。
こういった面で、リモートという環境はメリットがあるんじゃないかなと。
権田 なるほど。今まで発言こそしてこなかった人でも、いい視点や意見を持っていると気づけるわけですね。
神田 もう1つは、相乗効果ですね。わたしは1年前から毎週800人が参加する「10X朝活」を行っています。全国の経営者と10倍の目標数を書き込んで共有するんです。
「あの会社は今年、経常利益2億目指してるんだ」っていうのが毎週毎週リマインドされるんです。優秀な人たちが集まってそれぞれのミッションを共有しあって、お互いの相乗効果を生む状態ができていて、社員教育をやらなくても自走しているわけですよね。
そしてこれは、リモートという分断環境があったことで、意識レベルの同じ人、もしくは同じ方向性の人たちがぐっと近づいたという結果だと思うんです。
権田 組織が最後に行き着くところは「納豆」なんじゃないかなと。納豆のような「粘着性」のある糸のようなつながりが重要になっていくのかなと。考え方や方向性といったビジョンの粒感が揃った上で、人と人のつながりにどこまで粘着性を持たせられるか、行動を作っていくかっていうところが改めて重要になってくるのかなっていう。
神田&関 (笑)
-最後に
権田 今日は、事業・組織の両面からリモートフレンドリーからリモートファースト(リモートウィン)にシフトするうえで何が重要かという点を神田さん、関さんからお伺いできたと思います。
最後に、総括ということで改めてリモートファーストで「リモートウィン」を実現する上で、どんなことが重要になりますか? まずは関さんから。
関 今、起きていることをまずは短期・中期で考え直す必要性がありますね。この1カ月は、どの会社も重要性も緊急性も高く対応しているので、リモートフレンドリーの域を突破できないのだと思います。
そこに抜け落ちているのは、「ビジネスで勝つ」という意識。
リモート環境がもう1つの現場だとしたとき、「自分たちって何で存在している会社なのか? 何で付加価値を上げて、何に対してお客さんを作っている会社なのか?」ということを現場を踏まえてもう1回ちゃんと見直すーというのが非常に重要ですね。
それを考えるのって、やっぱり半分答えがない状態なんです。なので私たち経営者が「決め切る」ということなのかなって。トップによる構想力の部分も必要ですね。
権田 コロナだから仕方なくリモート、というところから早く抜け出して、会社の価値を再設計する機会に変えていく…というところが非常に重要になってくるということですね。
では最後に神田さんは「リモートウィン」に向けていかがでしょうか?
神田 はい、実は、私はリブの顧問でありながらコンサルティングを発注しているという関係にあります。その理由は、経営者だけでは残念ながら動きが遅すぎるからです。リブに支援をしてもらうと、物事が一気に形になるので、方向性の明確化がスピーディになります。
リモートウィンの環境をムーブファーストで作り上げるんです。今は病院も、学校も・ジムも、すべてがリモート化を余儀なくされています。そうすると、リモート化の中の適切なコミュニケーションをどうやっていち早くフォーマット化できたかで今後が決まっちゃうと思います。
本当に早いもの勝ちなんじゃないかなと。それだけの気合いと、変化に対応する力を持って、今まで培ってきた人脈を駆使すれば、大きな成果っていうのは目の前にあるのではないでしょうか。
権田 今日は「REMOTE FIRST」の書籍に基づいて、事業と組織のリモートウィンへのシフトのお話をさせていただきました。「REMOTE FIRST」はもっと具体的なTipsに富んだ書籍となっております。本記事で概念を理解してお読みいただくとわかりやすいかと思います。
では、「リモートファースト(リモートウィン)」に向かって一緒に頑張っていきましょう!