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超一流フットボールプレイヤーにCEO就任して頂いたことの振り返り

株式会社リブ・コンサルティングは、2019年7月1日(月)よりChief Evangelistic Officer(チーフ・エバンジェリスティック・オフィサー/最高理念伝導責任者、以下CEO)に、Jリーグ「ヴィッセル神戸」に所属しプロフットボールプレーヤーとして活躍中のアンドレス イニエスタ選手が就任したことを発表いたします。

なぜイニエスタ?

最初にリリースを出した当時、多くの方から「なぜイニエスタ?」という質問をいただきました。

なぜ、経営コンサルティング会社が一流のフットボールプレイヤーをブランドアンバサダーとして起用したのか。

経営コンサルティング会社がタレントやスポーツ選手を起用するケースは一般的ではありません。

社内外からもらった意見で多かったのが、
経営層がイニエスタ選手のファンだっただけではないか…
という内容です。
(その側面があったことは否定しません、リブ・コンサルティングの組織づくりには、イニエスタ選手や所属されていたFCバルセロナの考え方に大きな影響を受けています)

今回の記事では、自社のブランド戦略の振り返りの意味も込めて、「なぜイニエスタ?」の質問への回答を残しておきます。

これからタレント・ブランドアンバサダー活用を検討される経営者・担当者の皆さんにとって、少しでも参考になる情報をお伝えできればと思っています。

ビジョンの達成手段としてのアンバサダー起用

そもそも、なぜ経営コンサルティング会社が一流のフットボールプレイヤーを起用するに至ったのか。

一番の理由は、ビジョンの達成手段として有効と考えたためです。

「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」

私たちは、中期目標として「日本発祥の経営コンサルティング会社として日本市場、そしてアジア市場でナンバーワンシェアを実現する」を掲げています。

現状の課題として、業界トップのコンサルティング会社との規模・認知率などの差は大きいです。

また、経営コンサルティングの市場は人材獲得競争も激化しています。

大手外資系コンサルの、ボストン コンサルティング、アクセンチュアなどと比較された際に選ばれる会社になる必要があります。

顧客側からの認知、求職者からの認知、どちらも課題がある状況でした。

新市場を創るアプローチを研ぎ澄ます

競合が厳しい中でも、勝ち筋も見えてきています。

当社が新しく生み出してきたベンチャー向け経営コンサルティングの市場は日本だけでなく、アジアでも急成長している為、ナンバーワンとなるチャンスは大いにあると考えていました。

我々が創り出そうとしている、ベンチャー向け経営コンサルティングの新概念をより多くの人に伝え、ビジョン達成に最短で近づく方法を探っていきました。

ブランドアンバサダー起用を選ぶ

複数の手段の中で、ブランドアンバサダーを起用するアイデアが社内で上がりました。

社内の企画整理をした時の図解がこちらです。

社内資料より引用

複数の企画案をテーブルに並べる中で、認知度の課題を解決するためには「著名人起用」のアプローチが有効であるという結論に至りました。

-大方針
LiBに合う「一流」の人間=文化人・スポーツ選手からLiBの伝えたいイメージに合う、共感をしてもらえる方を選定し、アンバサダーとして起用し、メッセージ性の強い発信を行う

ここまでのお話しが、経営コンサルティング会社がブランドアンバサダー起用を意思決定した背景です。

一度まとめます。

ブランドアンバサダー起用を意思決定した背景
1. ビジョンを最短で達成する手段を考えていたこと
2. ベンチャー業界に対して、経営コンサルという概念を根付かせるための効果的な手段を探っていたこと

追求したいブランドイメージを固める

著名人を起用することが決定した後は「誰に依頼するか」の選定に入ります。

誰にブランドを語ってもらうか?は5年後、10年後のブランドイメージを決めると考え慎重に検討を進めました。

当時の社内資料を加工

ブランドの想起イメージを整理する

続いて、ブランドアンバサダーを通じて何を伝えたいのかを整理していきました。

当時の社内資料より引用
当時の社内資料より引用

このようなブランドイメージを体現してもらうために、最も相応しいのは誰か…

企画会社から複数の著名人を提案してもらいながら比較検討を進めました。

企画会社からは、スポーツ選手(大リーガーやオリンピック選手)からお笑い芸人まで広く提案をもらいました。

選定基準としては大きくは一つだけでした。

事業コンセプトを適切に表現し、かつ高いブランドイメージを醸成することができる人・企画であること

タレントの知名度重視で選ばない

一般のタレントや俳優などの有名人は、知名度は高くてもリスクとしてブランドイメージを下げることに繋がると考えました。

認知率が高まれば良い、マーケティングのリード獲得効率が高まれば良いといった妥協的な選択はせず、自分達が大切にしている価値観や目指している姿を体現してくれる人に依頼を進めたことは、いま振り返っても妥協しなくて良かったと思える点です。

投資金額が多少上がったとしても、本物の人に語ってもらうことはブラさないことには、こだわって決めていきました。

答えは、必然的にイニエスタ選手一択となりました。

当時の資料イニエスタ選手とリブ・コンサルティングのブリッジポイント整理

しかし、この時はイニエスタ選手に依頼が可能なのかはまったくわからない状況でした。

イニエスタ選手に直接メッセージを送る

こちらは、イニエスタさんに直接メッセージとして出した文章の一部です。

約4,000文字の長文メッセージを送りました。

私がイニエスタさんやFCバルセロナの大ファンということもあり、当社の経営はFCバルセロナやイニエスタさんから大いに影響を受けています。影響を受けた点は主に以下の3点です。

1.  新しい挑戦をして常識を変える
2000年頃まではフットボール界でも守備を固めて勝利を得る、大柄な選手がパワーを強みに活躍するのが一般的でした。しかし、今ではポゼッションで攻撃的に勝利を狙う、小柄でもテクニックに秀でた選手が活躍するのが当たり前になってきました。そして、このフットボールの常識を変えたFCバルセロナの中心にいたのがイニエスタさんです。

私もリブ・コンサルティングを立ち上げた際に新しい挑戦によって常識を変えたいと考えました。そして「大企業に対してコンサルティングを提供する」という一般的なスタイルを変えると決めました。まず企業理念として「100年後の世界を良くする会社を増やす」を掲げ、自社のスタンスを明確にしました。より良い未来を創っていくのは新たな挑戦を続けるベンチャー企業だと考え、ベンチャー企業をクライアントとすることを決めました。当然、ベンチャー企業向けコンサルティングというスタイルは過去になかったスタイルだったので受け入れられるのに時間はかかりました。しかし、当社のコンサルティング支援によって成功する企業が数多く出てきたことで徐々に有名になってきました。

2. 尊敬される存在になる
超一流とはプレーが一流であるだけでなく、人間性も一流でなくてはならないということをイニエスタさんを見て参考にしてきました。イニエスタさんは普段のインタビューや試合中の対戦相手への振る舞いの一つ一つが非常に謙虚で素晴らしく、世界中のスタジアム(アウェーであるエスパニョール含めて)から称賛され、尊敬されている姿は私の憧れです。

当社は経営コンサルティング事をする中で、クライアント企業に対して「多くの人から尊敬される存在となりましょう」と言っています。企業である以上、当然売上や利益を大きくしていくことは重要です。ただし、それだけでは尊敬される企業にはなりません。売上・利益に加えて、顧客に満足してもらう商品を提供すること、従業員に心地よく働ける環境を準備すること、そして地域社会に愛される存在になること、これからの企業にはこういった側面が重要だと考えています。だから我々は業績も顧客満足も従業員満足も地域社会からの支持も全て狙って尊敬される存在となることをクライアント企業に推奨しています。またリブ・コンサルティング自身もそういった存在となれるように日々努力を続けています。

3. 育成を大事にする
2012年リーガのレバンテ戦で、バルセロナの選手11名全員がカンテラ出身者という快挙に感動しました。有名選手を高い移籍金を払って集めるのが一般的な昨今のフットボール界において、若いころからカンテラでともに育ってきたメンバーが世界トップクラスで活躍するのは非常に素晴らしく、そのカンテラの最高傑作とも言われるイニエスタさんの姿が最高にかっこよかったことを今でも覚えています。

私は会社を創業して社員が増えてきたころから、日本でも海外でも活躍できるトップクラスのコンサルタントを社内で育成していきたいと考え、社内の教育体制を時間とお金をかけて整備してきました。なぜなら当社のコンサルティングスタイルは非常に新しいものである為、コンサルタントの育成方法においても新しい手法を自分たちで生み出す必要があったからです。結果、当社は社員の人材育成ランキングにおいて、日本国内のコンサルティング会社約300社中トップ3に入るまでになりました。(ちなみに私は現在でも社員向け勉強会の講師を月1日程度務めていますが、この勉強会の名称は「カンテラ勉強会」で、もちろんこの「カンテラ」はスペインフットボール下部組織の「カンテラ」からとっています。)

上記に記載したように当社の経営はイニエスタさんやFCバルセロナの影響を大いに受けており、それがこれまでの成功や成長に大きく寄与してきたと感じています。そして、ここからは今回の企画の狙いについて記載します。

現状では当社の存在を知らない企業はまだまだ多数あります。また求職者という観点からも当社の存在を知らない求職者も多数います。
この課題をできるだけスピーディに解決することが現状の当社にとって最重要な課題です。とはいえ、認知度を上げることができるのであればどんな形でも良いかというと決してそうではありません。当社の事業コンセプトを適切に表現し、かつ高いブランドイメージを醸成することができる企画でなければいけないと思っています。そして、それを実現できる唯一にして最高の案がイニエスタさんに当社の企画にご協力いただくことなのです。
実際、今回の広告企画にあたり当社には様々なタレントや文化人をキャスティングするという企画が持ち込まれました。しかし、私はすべての提案を却下しました。それは我々がこれまで大事にしてきた価値観を表現してくれ、かつ我々のブランドイメージをより高く引き上げてくれるのは世界中にイニエスタさんしかいないと考えていたからです。そして、企画会社に対して「イニエスタさんにご協力いただきたいと伝えてほしい」という依頼をしたのが今回の経緯なのです。

そして交渉や調整の結果…

このような経緯から、ブランドアンバサダーとしてイニエスタ選手の起用が決まりました。

イニエスタ選手×リブ・コンサルティング

イニエスタ選手にご協力いただいてのコミュニケーション戦略の一部をご紹介します。

コアメッセージを伝える対談動画では、イニエスタ選手からベンチャー企業に対するアドバイスをもらいました。

イニエスタは関厳社長との対談の中で、「1つのアイデアをしっかりと持つことが重要で、困難なときがあっても、自分の信念を持って長い時間をかけて努力し、それが実を結んだときは最高の気分だ」と自らの人生観を明かし、「何をするべきかに基づいて、1つのアイデアと哲学を持って、最後までやり抜くべきだ」とアドバイスを送った。

web Sportiva イニエスタが人生観を語る。選手としては「成功し続けなければ」

こちらはNewsPicksに出稿したブランドコンテンツです。

イニエスタ選手のフィロソフィーとリブ・コンサルティングの共通点を対談形式で紹介させていただきました。

NewsPicks記事より引用

イニエスタ 私は常々、好きなことやパッションを感じるもの、それを共有できる人たちと同じ時間を過ごし、時にはサポートし合い、成長を続けたいと考えています。
これは新しい時代を切り拓く若いベンチャーの人たちをサポートすることで成長したいと考える、関代表取締役やリブ・コンサルティングの思いと重なります。業界は違いますが、私たちのビジョンには共鳴するものを強く感じました。

NewsPicks記事 イニエスタが語る、成功のフィロソフィー「一人ではなにもできなかった」

ブランドアンバサダーの選定には「軸」が必要

最後に、ブランドアンバサダーを選定をする際に大切にしていて良かったこと、これから同じような仕掛けを検討される皆さんにメッセージをお伝えできればと思います。

私がブランドアンバサダー選定時に最も大切にしていたのは「一流」であることでした。

正直にお伝えすると、スタートアップ界隈でタレントを起用し、タクシーや TVCMでブランド名を連呼する表現には違和感を感じていました。
特に、BtoBビジネスで大企業の支援をするような業界では、面白く出て認知を獲得することはリスクも大きいと考えています。

これは、求職者に対しのイメージでも同様です。
ハイキャリア志向をもっている方にとっては、品があるイメージがあることは大切となります。

我々のタレント起用プロジェクトは認知獲得が目的ではあったものの、ブランドの品格を絶対に失ってはいけないと考えていました。

この考えは今でも間違っていなかったと思っています。

アンバサダー選定の軸がブレなかったからこそ、派生した効果も生まれました。

印象に残っているエピソードをご紹介します。

海外企業との商談の中で、提案資料で「イニエスタ選手がCEOであること」を紹介しました。
海外では、サッカー選手は神のような存在であり、その中でイニエスタ選手に対するリスペクトは世界共通です。
イニエスタ選手とあわせて、リブ・コンサルティングの核となる要素を理解してもらえた瞬間でした。

「日本発祥の経営コンサルティング会社として日本市場、そしてアジア市場でナンバーワンシェアを実現する」

ビジョンの達成に、妥協しなかったからこそ近づけたと感じています。

最後に

ブランドアンバサダーの選定は、10年後、100年後に「その人にブランドアンバサダーを依頼したことを後悔をしないか」で選ぶこと。

これが最も大切だと考えています。

私は、数十年後に、リブ・コンサルティングの最初のブランドアンバサダーがイニエスタ選手であったことは、後悔を絶対にしないと言い切れます。

ブランドアンバサダー選定は、短期のマーケティング成果だけで判断をしないこと。

これからブランドアンバサダーやタレント起用を考えるスタートアップ経営者の皆様に、少しでも参考にして頂けましたら幸いです。


最後まで読んでくださりありがとうございました。