SLA(Service Level Agreement)-営業とマーケティングを連携させる数値基準の決め方
こんにちは、CROHackです。
顧客主導の今の世の中において、インサイドセールスの重要性が高まっている背景も含めて営業とマーケティングの連携は非常に重要な要素です。しかし、営業部門とマーケティング部門が密にコミュニケーションを取り、一致団結して顧客1人1人に向けて最適な情報提供を行っている…と自信を持って言える組織は少ないのではないでしょうか。
営業部門とマーケティング部門を連携させるためには、それぞれにSLA(Service Level Agreement)を定義することが有効です。この定義付けにより、自然と両部門の連携強化につながります。
今回は、営業とマーケティングを連携させるために有効な手法として、SLAを利用した連携方法をご紹介します。
-営業組織とマーケティング組織の機能不全
前述の通り、多くの企業では営業部門とマーケティング部門の連携はうまくいっていないのが現実です。もともと、営業部門は次々とアポ取りの電話をかけ、訪問のために外出し、マーケティング部門は展示会の準備や広告制作に励んでおり、お互いに毛色の違ったまったく別の業務を行っていました。そのため、お互いの業務を理解し難いという背景があります。
近年、マーケティングオートメーションなどが導入され、マーケティング部門が獲得したリードを営業部門へ引き渡すことが行われていますが、ここでも営業部門は商談につながらないリードに不満を抱き、マーケティング部門はせっかく育て上げたリードをフォローしてもらえていないと不満を抱くような構図が生まれています。
しかし、営業部門とマーケティング部門のこうした機能不全は「顧客主導」の世界では致命的と言わざるを得ません。顧客は課題を認識すると自ら解決策を探し始め、やがて解決策を見つけたら複数を比較選定して購買に至ります。初期段階においてはマーケティング部門が、案件化した段階からは営業部門が、一連の流れに沿いながら、顧客の背景と事情をよく熟知した上でのコミュニケーションを取っていくことが求められます。
よって、もはや部門間で仲違いしている猶予はないのです。マーケティング部門がリードの持つ課題を解決するために資料や事例を提供し育成し、リードステータスを向上させてきたにも関わらず、営業部門がその状況を預かり知らずいきなり突拍子もないセールストークをするというような、リードにとって最悪の事態は現実に起こり得ます。
この2つの部門間における軋轢を減らすために必要になるのが「SLA」です。
-SLAとは
SLAとは、「Service Level Agreement」の略称で、日本語では「サービス品質保証」「サービス水準合意」などと訳されるものです。主にIT業界において使用されるもので、ITパスポート資格の試験でも出題されています。
SLAは、サービス提供側がサービスを利用する側に対して、「このレベル・この範囲・この内容でサービスを提供します」と示す「品質保証」の基準です。このSLAを下回った場合、サービス提供者は何らかの保証をする旨を取り決め、契約を交わします。
例えば、サーバー利用の契約をする場合、「サーバーの稼働率」「データ保全の割合」を「〇%保証」といったようにSLAが取り交わされます。
このSLAを、デジタルマーケティングの分野においてもマーケティング部門と営業部門それぞれに設け、定義することが有効です。これにより、両部門をコネクトさせることができます。
-マーケティングのSLAの定義方法
マーケティングのSLAで定義するのは「どのような質の、どのくらいの量のリードを営業部門に渡すか」ということです。一般的には、このように質と量でSLAを定義します。
しかし、もっと良い方法があります。それは、期待収益を計算する方法です。各リードの金銭価値を見積もり、金額でSLAを決定します。その方法をみていきましょう。
質は、カスタマージャーニーをもとに決定します。カスタマージャーニーとは、顧客が課題を認識し、解決策の調査を行い、やがて解決策となる商品・サービスを選定するまでのプロセスを図に表したものです。
そして企業規模などのペルソナと組み合わせ、「バイヤーマトリックス」を作成します。カスタマージャーニーとバイヤーマトリックスを用意したら、それぞれのペルソナが、それぞれのカスタマージャーニーのステータスにおいて、どれくらいの「顧客への転換率」「顧客一人当たりの利益」「リードの期待収益額」となるのかを算出します。
例)中堅企業のペルソナ
これは中堅企業の例ですが、大企業、小企業についても同じように算出できます。ここまでを行うと、マーケティングのSLAは量にこだわらず、期待収益額を基準に定義することができるようになります。
例えば、3の「商品選定」の商品の試用申請をしてくるようなリードは数多く獲得するのはむずかしいため1,000件にとどめ、獲得しやすい2の「解決策の調査」の資料ダウンロードをするようなリードを3,000件創出するためのマーケティングを行うという意思決定ができます。これにより、比較的簡単に収益目標を達成することができるようになります。
中堅企業の有望なリード1,500件を営業に引き渡すことにこだわらず、シンプルに期待収益額を満たす質と量のリードを渡せば良いということになりますね。
SLAを設定することにより、マーケティング部門が創出するリードの質が高まります。このSLAを満たしたリードをマーケティング部門が営業部門に渡ったら、営業部門はそのリードとの関係構築に注力すれば良いということになります。そうすれば、必ず営業部門も成果を出すことができます。
もし、営業がこれらのリードを受け入れないなら、営業の仕方について研修を実施するか、そもそものSLAを定義し直す必要があるでしょう。
-営業のSLAの定義方法
マーケティングにSLAを定義する場合、当然営業にもSLAが必要になります。 マーケティング部門が生み出した質の高いリードに対し、営業部門は効果的に働きかける必要があります。
営業のSLAを定義するときには、例えば、営業マンが新規リードにどれくらいの期間を置いて働きかけるべきなのか、そして2回目の電話はいつがいいのか、また、収益につながる電話回数は企業規模ごとに何回ずつなのかなどの定量的な指標を、営業のSLAに含めるべきでしょう。
また、こうして定義したSLAは、日常的に利用するCRMシステムなどのダッシュボードに毎日掲出される仕組みをつくるなどすると、より有効に機能します。営業マンが朝出社してシステムを立ち上げると「今日はA社に電話をかける日」「迅速対応すべきリードのリスト」などが表示されるようにできれば、営業マンはいつでもSLAを意識でき、適切で抜け漏れなく対応ができるようになります。マネジメントする側としても管理や進捗把握がしやすいというメリットがありますね。
-まとめ
今回は、マーケティングと営業それぞれにSLAを定義することによる連携強化についてお伝えしました。これにより、期待役割と数値化された目標を常に両者が意識することができるようになり、それぞれの使命をはっきりと理解して互いの責務を果たせるようになります。
営業とマーケティングの機能不全に悩まれているのであれば、是非一度試してみてください。