"総合商社流"おせっかいの先にビジネス機会をつかむ営業手法
今回は、「商社の営業ネタ発掘の秘訣」がテーマです。
本記事は、2021年9月3日に開催した「総合商社のトップ営業マンが語る 脱・引き合い営業 提案ネタ発掘数を倍増させる営業組織の作り方」でご紹介したウェビナー内容を要約しております。
みなさん、商社の営業にどのようなイメージをお持ちでしょうか?
転職市場では、商社経験者は「調整能力」や「海外経験」しか強みがない
=専門性がない…
とネガティブに言われることもあります。
一方で組織視点で考えると、「調整力」を強みとし、大規模なビジネスを手がける仕組みがつくられていることは驚異的なことです。
総合商社独自の営業の型を読み解いていくと、強い営業組織づくりのヒントにもなることがわかってきました。
ここから、商社独自の営業手法を詳しく読み解いていきます!
最初に:商社の強さとは何か?
商社の主要なビジネスは需要家と供給者の間に立ち取引の橋渡をするトレードです。
しかし、インターネットの発達に伴い、需要家と供給者の直接取引が可能となったため、「商社は不要」言われる時代がありました。
しかし、商社は依然売上を伸ばし続けています。
この秘密は、商社の営業手法にあります。
商社の営業が果たしている役割は、単にモノを買って納めるだけではありません。
上記の3点を遂行することで、商社の営業は顧客企業の成功や機会損失の防止に貢献しているのです。
それでは、この3つのポイントを具体的に見ていきましょう。
ポイント①:とことんおせっかいする
商社の営業は、とことんおせっかいをしています。
顧客の様々な部署に対し、事前に顧客の困りごとを考え、能動的に提案をしているのです。その結果、様々な部署との関係構築が実現されます。
直接取引をするような購買部だけでなく、開発や品質管理など直接的には関係をもたない部署とも関係構築を行います。
商社マンが、相手の社内調整や社内の情報共有を代行しながら、商談相手のサポートをします。社内調整を請け負う中で、社内の他の部署ともコミュニケーションをとる機会をつくっていきます。
その上で、関係を持った先の担当者に対するおせっかい活動を行っていきます。
商社マンのおせっかいの例として、次のような例が挙げられます。
工場にモノの荷下ろしで起こっている問題を商社マンが解決する必要はありませんが、あえてそこに踏み込むことによって、顧客からの信頼を得るのです。
次のステップとして、関係性を築いた関係者と頻繁にコミュニケーションをとり、業務の中で感じている問題などのヒアリングを行います。
すでに「自分のこと、自社のことをよく知ってくれている人」という立場が築かれているため、相手から具体的な相談を持ち寄られたりします。
このように多方面から情報を収集し、自身の提案ネタを発掘していくのです。
商社ならではのおせっかい活動は、次のように整理できます。
しかし、世の中の多くの営業マンは、(1)アポが取れない (2)効果的なおせっかい活動ができない、という悩みを持っています。
この課題について、商社には(1)社内に蓄積している「アポの口実集」を活用する (2)社内に蓄積している「おせっかいの事例集」を活用する、という解決策があるのです。例えば(1)については、「メールや電話ではお伝えしづらいここだけの話があるので…」と伝えるなど、会うための口実をまとめておくのです。
(2)については、「監査前のサプライヤに対してはサプライヤ監査のポイント集を持参すると感謝される」等のナレッジが蓄積していくことで、対応が可能になります。
高い頻度で連絡をし、相手が困っていることを探した上で、必要に応じた情報提供や実働のサポートを行います。
各部署でよくあるお困りごとは異なるため、部署ごとのお困りごとをまとめたマップを活用しながら、相手に「頼れる相手だな」と感じてもらえるようなコミュニケーションをとります。発注管理やプレ監査など、先方の社内業務の対応まで行い、信頼を獲得していくのです
ポイント②:とことん情報をとる
商社の営業は、おせっかい活動時に顧客に有益な情報を提供することで、顧客の反応を伺い、案件化につながるようなネタを収集しています。
しかし、多くの営業マンが抱える悩みとして、(1)ネタ情報を引き出せない (2)聞き出せる情報が浅い、の2点が挙げられます。それぞれ(1)何を訊けば有益な情報を引き出せるか分からない (2)訊いても浅い情報しか返って来ない、が原因として挙げられます。
この課題への解決策として、商社ではまず顧客の様々な部署から社内の情報を、そして同時に顧客の外からも情報を収集します。こうして集まった多角的な情報を、社内のナレッジやスペシャリストを活用し、顧客にとって有用な情報になるまで磨き上げ、昇華させます。いわば「顧客目線の、示唆に富んだ情報を提供する」ということです。
例えば、税制改定のニュースを単なるニュースで終わらせず、社内ナレッジやリソースを利用しながら「この改定が顧客にどのような影響を及ぼすのか」を考え、顧客に示唆を与えるような情報にするということです。そして、顧客にとって有益な情報提供をすることで、「うちの会社で利用している●●というサービスに不満があるんだよね」等、顧客から提案のネタとなるような深い情報を引き出せるようになるのです。
ポイント③:とことん種まき/水やりする
商社の営業は、「種まき」と「水やり」を実施しています。
まず「種まき」とは、多数回の提案を意味します。準備に時間を掛けて1回提案するのではなく、提案→再提案のサイクルを高速で回していくやり方です。
次に「水やり」とは、提案している案件を育てることを意味します。
一度提案して顧客に刺さらなかったものでも、顧客の興味・関心が高まるタイミングを狙って関係者にアプローチすれば、契約に繋がる可能性は高まります。
しかし、商社外の営業マンの前にあるハードルとして、以下のようなハードルが挙げられます。
(1)なかなか提案できない
(2)顧客の購買意欲を高められない
これらのハードルに対する、商社流の解決策は以下の3つになります。
(1)準備に時間を掛けず、70点の提案を素早く繰り返し行う
(2)提案に必要な情報を社内から素早く得る仕組みを構築する
(3)関係各所に根回しを行う
まず(1)についてですが、そもそも種まきの目的は、顧客の潜在的な課題や需要を把握することです。このため、100点満点の提案を1回実施するのではなく、70点の提案を何度も繰り返し行うことで、都度提案がブラッシュアップされ、顧客の潜在ニーズに届く確率が高まっていくのです。
このスピード感ある提案を可能にしているのが、(2)の社内に蓄積されたナレッジと検索の仕組みです。提案の精度を上げるために必要な情報が社内にあり、かつすぐに引き出せるようになっていることから、顧客に響かなかった翌日にでも新たな提案をすることが可能となるのです。
(3)については、顧客の社内外の環境変化により、商社の提案に対する顧客の興味が高まるタイミングがナレッジとして蓄積されています。このタイミングを狙って、関係者に提案受け入れのための働きかけを実施し、案件化する確率を高めておくのです。
最後に
物を買って納める役割をする商社。
商社が存在し続ける背景には、商社流の営業手法があったのです。
上記の3点を遂行することで、顧客企業の成功や機会損失の防止に貢献し、お客さまを成功へと導くことで、自分たちが存在し続けているのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!