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生き残りをかける ウィズコロナ時代の新規・既存営業戦略

いよいよ営業のアップデートは一刻を争う

初めまして、CROHackを運営しているリブ・コンサルティングで主にスタートアップのグロースを支援している友野(@lib_tomono)です。

近年、営業関連のカンファレンスで「セールステック」というキーワードを目にすることが増えました。SFAやMAの導入は当たり前になりつつあり、セールスイネーブルメントなど新たな領域も生まれています。

また福田康隆氏が執筆した『THE MODEL(ザ・モデル)』では、共業という新たな「セールスモデル」が提示され、インサイドセールスやカスタマーサクセスなど新たな職種を採用する企業も増えました。

しかし、このような新たなセールスモデルを取り入れている企業は一部に限られているのが現状です。

HubSpot Japanの『日本の営業に関する意識・実態調査』によると、日本のインサイドセールス導入率は11.6%であり、地理的な事情はあるものの米国の47.2%、欧州の37.1%と比較すると低い値です。

実際のパフォーマンスとしても、月100件以上のリードを獲得している割合は、インサイドセールス導入組織が23.3%なのに対して、非導入組織は2.8%となっています。

これらの変化に対応できなければ、新規営業・既存営業問わず生産性の差は広がるばかりと言えるでしょう。

そうした中で新型コロナウイルスが世界中を襲いました。人々は外出自粛を余儀なくされ、企業は在宅勤務の対応に追われています。

終息の見通しが立たない状況ではありますが、CROは変化に対応して収益を確保しなければなりません。

本記事では、ウィズコロナ・アフターコロナを生き残るための営業戦略の提言として、新型コロナウイルスによる購買行動の変化、それに応じた新たなセールスモデルについて解説します。

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BtoBにおける購買行動モデルの変化

まずは前提として、これまでの購買行動について解説します。

BtoBの購買行動モデルとしては、一般社団法人日本BtoB広告協会アドバイザーの河内英司氏が提唱する『ASICAモデル』が知られています。

『ASICAモデル』は、BtoB特有の組織購買を念頭に、下記5ステップで整理したものです。

・Assignment(課題):自ら抱える課題を認識する
・Solution(解決):課題を解決する手段を探す
・Inspection(検証):解決策が有効であるか、また費用対効果、競合との比較などを検証する
・Consent(承認):口頭や稟議などにより社内での承認を得る
・Action(行動):プロダクトを購入する

今回の新型コロナウイルスによる一番の大きな変化は、「非対面」です。そのため、ステップが大きく変化するのではなく、中身がオンラインにシフトすると考えられます。

まず従来はオフラインが中心だった課題認識(Assignment)は、急速にオンラインにシフトすることが予想されます。

実際、IEEE GlobalSpecの『Marketing Charts』によると、2020年3月時点で28%のマーケターは展示会の予算をデジタル広告に再投資しています。

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(IEEE GlobalSpec “Marketing Charts”より引用)

また、解決策の検討(Solution)だけではなく、検証(Inspection)まで非対面で実施しなければなりません。つまり、インサイドセールスの業務範囲が広がることを意味します。

しかも、これは一時的なものではなく、永続的になる可能性があります。

Gartnerの調査によると、74%の企業が新型コロナウイルスの終息後もリモートワークを継続することを計画しています。さらに8%の営業責任者は恒久的にフィールドセールスをインサイドセールスにシフトすることを検討しているとのことです。

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(Gartner “CFO Actions in Response to COVID-19: Week of 30 March 2020.”より引用)

そして、顧客同士のコミュニケーション(Consent)も非対面となるため、承認プロセスを丁寧にサポートしなければなりません。

特に意思決定者が複数人いる場合は注意が必要です。オンボーディング(Action)もオンラインで完結しなければならないからです。

このように顧客の購買行動は大きく変化するため、それに合わせてセールスモデルをアップデートする必要があります。

一般的なBtoBの購買行動モデルの画像

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これまでのセールスモデル

まずは、現在に至るまでセールスモデルはどのように変化してきたのか、購買行動と同様に過去から振り返りをしていきます。

これまでの営業の論点は、高度化効率化が中心となっていました。

高度化は、市場環境に合わせて発展してきました。プロダクトが成長期に位置している場合は、顕在ニーズをSolution(解決)することが重視されるため、プロダクト営業が求められました。

それが成熟期に移行するとニーズが幅広くなり、Assignment(課題)を特定するためのソリューション営業が要求されるようになったのです。

さらに衰退期では、顕在ニーズは満たされているため、潜在ニーズの発見に価値が移り、インサイト営業が求められるようになりました。

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(BizHIintより引用)

このように、これまでのセールスモデルはAssignment(課題)とSolution(解決)を中心に進化してきました。

それが、今回は全てをアップデートしなければならないことに難しさがあります。

一方、上記のセールスモデルを実現するためにシステムによる効率化も進んできました。

まず、多様化したニーズを把握するために、顧客情報を管理するCRMが誕生しました。その後、営業に機能特化したSFAが普及し、ブラックボックスだった営業プロセスが可視化されるようになりました。

さらにMAの登場により、分断されていた営業とマーケティングが連携され、自動化が進んだのです。

つまり、市場環境に合わせて購買行動が変化し、セールスモデルは高度化してきました。それをサポートするようにシステムが発展して、効率化も進んだ…というのが日本におけるセールスモデルの変遷です。

日本におけるセールスモデルの変遷の画像

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新たなセールスモデル

では、これからの時代のセールスモデルは具体的に何を変えれば良いのでしょうか。営業としてアップデートするべきことは大きく3つあります。

一つ目は、ターゲットおよびマーケティングチャネルの見直しです。非対面によってオフラインのチャネルは無効となり、新規リードの獲得が減少することが予想されるため、それに代わる新たなチャネルを開発しなければなりません。

二つ目に、非対面を前提としたオペレーションとマネジメントの変革です。オンラインのみで新規顧客と関係構築することは容易ではありません。そのためホットリードも減少することが予想される中、顧客の購買行動に合わせて、営業の在り方を見直す必要があるでしょう。

三つ目として、攻めに転じる際にアクセルを踏める体制を整えておくことが挙げられます。直近は生き残ることが最優先ですが、適切なタイミングで成長戦略を検討しなければなりません。そのためには事前に準備を整えておくことが重要です。

1.ターゲットおよびマーケティングチャネルの見直し

非対面で一番の問題は、ターゲットと接触することが難しくなることです。逆に考えるとエリアが関係なくなるため、地方にアプローチすることも可能となるでしょう。

これを機に改めて「業界×企業規模×エリア」でターゲティングを再検討するべきです。

それに伴い、マーケティングチャネルもウェビナーやWeb広告、ブログなど、オンラインにシフトしなければなりません。

特にウェビナーは参加のハードルが下がるため、オフラインに比べて数倍の集客を実現している企業も多いです。実際にUZABASEは1,600名以上を集客しており、新たなリード獲得のチャネルとして確立しつつあります。

また口コミの信用度がより増すため、クライアントボイスや顧客紹介など既存顧客を活用した施策も注力すべきです。

例えば、弊社も参加している取り組みとして、スタートアップで顧客同士を紹介する『Interactive Co-creation~to overcome covid19~』などがあります。

2.非対面を前提としたオペレーションとマネジメント

オンラインで営業が完結することになるため、商談シナリオや営業ツールなど、抜本的に見直す必要があるでしょう。

また、リモートワークによりマネジメントの難易度は高くなると思われがちですが、むしろテクノロジーによって高度化を実現することに繋がります。

例えば、弊社でもオンライン商談ツールは導入しており、3か月で移動時間150時間削減を実現しました。

録画機能を活用することで、ブラックボックスだった営業活動を透明化することもできます。営業同行に比べて効率的かつ適切なフィードバックが可能となるのです。

ベルフェイス-導入事例 の画像

(ベルフェイス “導入事例”より引用)

さらにオンライン営業になることで、より細かなデータ収集が可能となります。

テレアポ、商談の中身まで定量的に把握している企業は少なく、成約・失注要因を分析することで受注率の向上が期待できます。

3.成長戦略および体制整備

暫くは守りを固めるべきですが、攻めに転じる準備もしなければなりません。

新規事業の立ち上げにしても、既存事業をグロースにしても、リソースが必要となるでしょう。しかし、このような状況下で固定費を抱えることはリスクであることに他なりません。

さらに既存事業の収益を低下させるわけにはいかず、新しいプロダクトの場合は必要なスキルも異なります。

そこで近年、外部リソースを活用して、事業開発する企業が増えています。自社で戦略は立てながらも、仮説検証から勝ちパターンの構築まで、一時的にアウトソースする。開発のアウトソースは一般的になりましたが、営業ほか組織構築においても同じ動きが生まれるかもしれません。

例えば営業のアウトソースとして営業代行を使うことで、リソース不足によって新商材やサービスの営業活動が停滞するといった課題を解消できます。

外部リソース活用のメリットを以下にまとめてみました。

・事業におけるリスクを抑えながら、スピーディなチャレンジが行える
・専門的なナレッジやノウハウを有した人材をジョインさせることが可能
・短期間で検証を行い、計画していた事業の成長や成果を見込める
・有効なノウハウやナレッジを社内に引き継げるため、生産性や効率性の向上、成果が出ないことによるモチベーションの低下を防ぐ

守りを固めながら攻めに転じる、その体制を迅速に整えられることが外部リソースを活用することの強みと言えるでしょう。事業開発において付加価値の高い部分を見極めて、さまざまな選択肢に持っておくことが重要です。

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変化する者だけが生き残る

今回の世界的な感染拡大は、誰も経験したことがない危機です。そういった意味では、全員が同じスタートラインに立っていると言えるでしょう。

この変化に対応できない企業は淘汰され、対応できた企業のみが生き残ることになります。

このような感染症を撲滅することは難しいという見解もある中で、いま私達は何を考えるべきでしょうか。マイナスに捉えるだけではなく、変化する機会にしていくべきではないかと思います。

本記事が営業のあり方を見直すきっかけになれば幸いです。

▼執筆者プロフィール
友野 弘輝 株式会社リブ・コンサルティング ベンチャー事業部
大学卒業後、専門商社にて新規開拓営業、コンサルティングに従事。中小企業の中期経営計画の策定、営業戦略の立案を支援。リブ・コンサルティングに参画後は、大手企業の新規事業開発、ベンチャー企業のPMFやグロースを支援。ユニコーン企業の営業部隊立ち上げなどハンズオンでサポート。
https://twitter.com/lib_tomono

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■参考記事
https://www.hubspot.jp/company-information/inside-sales2019
https://www.profuture.co.jp/mk/column/7576
https://www.smartinsights.com/digital-marketing-strategy/covid-19-consumer-behaviour-plus-b2b/
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2020-04-03-gartner-cfo-surey-reveals-74-percent-of-organizations-to-shift-some-employees-to-remote-work-permanently2
https://ecnomikata.com/column/17789/
https://www.libcon.co.jp/download/detail008/
https://bell-face.com/casestudy/libcon/

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