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CRORadio_新規事業の罠シリーズ#3

CRORadioは、CROHackの音声メインコンテンツです。
アドバイザリーの黒澤さん(@KurosawaTomoki)にモデレーターになっていただき、編集長の松尾(@daisukemo)との対談形式でお送りします。

この記事は、音声コンテンツをわかりやすく文字に起こした記事です。音声より文字で情報をキャッチしたい方におススメです。この記事では、最後に「収録後記」として収録の際の小噺や、時間の都合上編集でカットしてしまったお話なども紹介します。

ダイジェスト解説

YouTubeまたはSpotifyで、ラジオ音声を聞きながらお楽しみください。

黒澤
第1回目は「現状維持バイアスを誰もが持っていることを認識すること」が大事というお話、第2回目は戦略の罠「金のガチョウの罠」でオポチュニティに飛びつくのではなく、バリューカプセル型のアプローチを活用する、というお話をしましたね。

今回は、事業づくりで重要な「ヒト」、組織で陥る罠のお話でしたね。

松尾
そうです、新規事業の罠は、戦略・組織・実行と3つあるとお伝えしていますが、その中で最も根深いと言えるのが組織課題です。

ズバリ“風のヒト”vs“土のヒト”の罠と呼びます。

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黒澤
風のヒト?土のヒト?なんでしょうか?

松尾
例えば、社内に「自社に変革をもたらそう」と考えている人と、「既存事業を守ろう」としている人がいますよね。どちらも会社には必要不可欠ですが、考え方は正反対です。

新規事業のプロジェクトを進める場合、既存事業のメンバーが協力をしない、表面上の協力はしていても本音は成功を信じていない、とか。

黒澤

うーん、この課題を抱えていない組織は「ない」ですね。笑

松尾
人の本質は変えられないので「”土のヒト”がいる」ことを前提に捉えて”土のヒト”は”土のヒト”のまま新規事業にどうコミットさせるのかという考え方が重要ですね。

黒澤
この場合はコミュニケーションがかなり重要になってきそうですね。

松尾
そうですね。ではここから、各タイプを詳しく見ていきましょう。

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【風のヒト】
事業変革をミッションとして起用・採用される、外部人材や中途入社など、会社に染まりきってない人。

まず、事業の推進リーダーを担う”風のヒト”です。多くは、事業開発などでキーマンとして採用・抜擢される人です。決して組織のマジョリティではないのですが、新規事業開発では、なくてはならない人材です。

【土のヒト】
社内のマジョリティとなる保守層、自社に長く勤める人など、自社にどっぷり浸かっている人。

対して、”土のヒト”はどういう形で自社(事業)が成り立ち、どう回っているのかというのをよく理解しています。

2つのタイプには、正反対の正義がある。お互いの間に対立が起きても、歩み寄る=妥協しているということになる。だから歩み寄れないんです。

黒澤
うーん、そうなっちゃいますね。これが「“風のヒト”vs“土のヒト”の罠」なんですね。この対立を解決するためにはどうしたらいんでしょうか?

松尾
この罠にハマっている企業は、ここに”第3のヒト”の存在を作らなければいけません。それが、”水のヒト”です。

【水のヒト】
社内組織の変革人材であり、普段は異端児とも見られやすい人。

社歴は長いのに、よく周りから良いも悪いも「あの人は独特、独自路線だよね」と評価されるタイプですね。

そんな”水のヒト”は、組織の翻訳家の役割を担っていると考えています。”水のヒト”は”風のヒト”が変革しようとしていることや、その想いを、全員が合意・納得できるように形を変えて受け止められるんです。

また、”水のヒト”は事業開発面で見ても別の役割が見えてきます。
それは「クイックウィン」、短期的成果を作るという役割です。

黒澤
クイックウィン、これはキーワードですね。

松尾
”土のヒト”が動かない理由は現状維持バイアスです。これまでの成功体験から新しいことへの変化リスクを考えてしまう。リスクを超える信用材料がないから動かないんです。

だったらその信用材料を作ってしまえばいい。
それがクイックウィンです。

”風のヒト”は当然、その先の事業化などの目標を追いますが、みんながその目標達成までついてこられるように、組織が認められるだけの初期成果を出すことが大事なんです。

黒澤
新規事業開発においても、小さな成功というのが必要なんですね。それを”水のヒト”と土のヒトが協同して作っていくということですか?

松尾
いえ、初期成果の段階で、”土のヒト”は巻き込まなくてもいいです。
ここではクイックウィンという言葉を社内における信用材料たる初期成果をクイックに作る、という意味で使用しています。

なぜかというと、”風のヒト”が掲げた成果(例:事業のアライアンス先を見つけてきた、初期プロダクトでユーザーの反響をとった、など)は、”土のヒト”からすると「あれって成果なの?」「そんなすごいことやってる?」と思われることが多いんです。

それを”水のヒト”が、”土のヒト”に対しては「こういう意味でコレはすごい成果なんだ」という魅せ方で説明したり、”風のヒト”に対しては「組織はこういった点を評価するからクイックウィンはこう作ろう」と設計します。

黒澤
なるほど!だから翻訳家なんですね!
この”水のヒト”という発想がない中で、”風のヒト”と”土のヒト”が喧喧諤諤と議論をしても進まないということですね。

松尾
そうですね、”水のヒト”がいると、事業開発はより進みやすくなります。

①水のヒトは風のヒトに寄り添い、組織が認めるクイックウィンを作る
②そのクイックウィンをもって土のヒトを巻き込んでいく

という2つの手順で進めるといいでしょう。

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このやり方で進めると、”土のヒト”も納得・利害が一致しているので「よし、やろうぜ!」という姿勢になります。スケール期に入ったとき、事業の屋台骨を支えてきた既存事業のパワーはかなり心強いですよね。

黒澤
これ、”水のヒト”が必要不可欠ですよね?社内にいない場合はどうしたらいいんでしょうか?

松尾
新規事業に関わらせることが難しい状況という事情もありますよね。でも、人の本質タイプなので育成は難しいです。なので社内を探し出すしかない。

そういった場合は、われわれ(コンサルタント)のような外部の人間に”水のヒト”を担わせるということも一つの手段です。

黒澤
でも、第三者(社外)で”水のヒト”を担うというのは難しくないですか?松尾さんはどうやって”水のヒト”を担ってるんですか?

松尾
そうですね、リブ・コンサルティングの場合は、元々事業会社出身のコンサルタントが多いので、事業を深く理解できる土台はあるかなと思います。

また、われわれ自身も10期目を終えようとしているベンチャー企業であり、さらにベンチャー企業へのコンサルティングをしているのポイントです。

黒澤
ベンチャー企業にも共通するんですか?

松尾
この”風のヒト”vs”土のヒト”の罠、大企業だけだに見えるんですけど、実はベンチャー企業でもあるあるなんですよ。

まず、ベンチャー企業の代表の多くは”風のヒト”タイプです。その人の旗のもと、まず1つ(少数)の事業をグロースさせますよね。少し事業が進むと、その成功体験の物差しが入る、社員のほとんど全員に。

そうすると、”風のヒト”vs”土のヒト”の対立も起きない、ある意味一番やばい状態なんですけど。盲目的に既存のやり方に従っているだけの状態になり、余計に新規事業は生まれないんですよ。

黒澤
うーん、考えてみるとそうですね。

松尾
実際、ベンチャー企業へのコンサルティングのバリューは「経営者の想いをダウンロードし、組織に伝え、向き合わせる」というところにあるんです。

実際、解決策はコンサルティングだけではないとは思いますが、”水のヒト”をなくしては新規事業は進まないでしょう。

黒澤
それでは、ここまでの内容をまとめると、大企業もベンチャー企業にも共通して、”土のヒト”はいるということを前提に、社内外の”水のヒト”という媒介による翻訳を通して、”風のヒト”⇔”水のヒト”⇔”土のヒト”の連携をしていくことが大事、ということですね。

松尾
そうですね。
では、ここまで第3回は新規事業の3つの罠のうち「組織課題」についてお話しました。次回は最後の「実行課題」です。実行はこれまでの戦略と組織どちらも関わってきますが、これまでよりドライな罠「タイムリミットの罠」のお話です。次回もぜひご一読ください!

編集後記

組織課題は、組織である以上どのような形であれ何かしらは存在しているものです。ただ、事業開発ではその組織課題、人と人の課題が特に表面化しやすいのだと思います。

今回あらためて黒澤さんと話しながら、”水のヒト"の存在意義、翻訳家としての価値を深掘りしました。

この翻訳という行為は、”土のヒト”と”風のヒト”がお互いに矢印を向けあってしまうのではなく、本来あるべき姿、ゴールに向けて矢印の方向を合わせていくことでもあります。

ぜひ、本来自社にとって価値あるはずの事業開発のゴールを、組織全体で共有できるようになってください。




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