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新規事業企画書の考え方-読み手が知りたいポイントを把握せよ

こんにちは、CROHackです。

新規事業を立ち上げる際に、社内そして融資者からの承認を得るためにも作成しなければいけないのが“企画書”です。新規事業の企画を通すために重要なポイントは、PowerPointで綺麗な企画書を作り込みことではありません。

最低限、読みやすさを意識して資料を綺麗に作る必要はありますが、それよりも重要なのが提案の通る企画書の基本を知ったうえで、社内外からの承認が得られる要素を適切に盛り込むことです。これらを押さえることで、あなたが考え出した新規事業アイデアを実行へと移すことができます。

今回のnoteでは、新規事業企画書の考え方を“読み手は何を知りたいのか”という観点から解説していきます。

-企画が通らない原因は「企画書」の作り方にある

“自分としては勝ち筋が明確に見えている新規事業企画なのにも関わらず、上司(もしくは融資者)からの承認が得られずに頓挫”

こんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

そのアイデアが新規事業として成り立つことが大前提ではありますが、勝ち筋が見えているにも関わらず企画が通らない原因は、企画書の作り方にあることが多いです。
まずは、企画が通らない理由と決裁者はどのような基準で意思決定をしているのか見ていきます。

<企画が通らない理由>
まず、企画が通らない理由についてですが、こちらは“決裁者が限られたリソースを投下しようと思えないこと”にあります。

リソースとは、経営資源であるヒト・モノ・カネのことです。限りあるリソースで企業は事業運営をしていかなければならない中で、リソースを投下するだけの価値を提案した新規事業に見出すことができなければ、その企画が通ることはありません。

<決裁者の意思決定の基準>
では、その決裁者はリソースを投下するorしないの意思決定をどのような基準で行っているのかについて。
決済の意思決定の基準は、以下のようなものが挙げられます。

・収益が確実に立つか
・投資期間と回収期間、利益を積み上げていく期間の想定ができるか
・時代に即したものか
・自社のアセットを生かすことのできる事業か
・市場や競合と比べた時に競合優位性はあるか
・失敗したとしても得られる経験があるか

こういった要素を総合的に判断し、新規事業にリソースを投下するかorしないかの意思決定をおこないます。

<企画提案が通らない原因>
続いて、勝ち筋の見えている新規事業にも関わらず、社内で企画提案が通らない原因について。

こちらに関しても、複数のマイナス要素が絡み合い、総合的にリソース投下する意思決定まで至らないケースが考えられます。

・社内提案を判断する側(上層部、管理職、上司)の判断基準と提案が噛み合っていない
・提言レベルになっていて、事業として考えられないレベルの提案になっている
・利益創出のイメージができない

また、提案を判断する上層部や管理職が提案内容を理解する知識や経験を持っておらず、提案内容が良いか悪いか判断できないため、勝ち筋のある新規事業であったとしても提案が通らないというケースもあります。

<KSF(重要成功要因)は何か>
そして最後に、提案者と判断者で認識しているKSFにミスマッチが発生しているケース。
KSFとは、Key Success Factorの略で、日本語にすると重要成功要因となります。

提案を通すためには、決裁者の判断軸を知っておくことが重要で、会社としてどこに重きを置いているのかを見誤っていると、刺さる提案はできません。
また、自身の考えるKSFを提示し、それで合意をとっておくことも、新規事業だからこそ必要となります。

「新たな成長を生むオプションを作り出す新規事業創出のアプローチ方法」については下記をご覧ください。

-新規事業企画書を作る上で押さえるべきポイント

企画書が通らない理由や原因を把握したうえで、新規事業計画書を作る際に押さえておくべきポイントについて解説していきます。

前提として、既存事業でつくられる事業計画書は事業としての経験値はありますが、新規事業企画書の場合は経験値が存在しません。そのため、経験に変わる信憑性のあるデータや客観的な分析、さらには事業として継続的に利益を創出していくことが可能であることが、企画書を見ただけで伝わるように作らなければいけません。

ただし、新規事業に関しては、データのみを収集してもイメージが湧かなかったり、実際に事業を動かしてみないと見えない部分もあるため、データと分析だけでは提案の高いハードルを解消しきれません。
そのため、ロジックとしての事業機会や勝ち筋、収益の可能性はしっかりとデータで示しつつ、提案者のその新規事業にかける想いを企画書に乗せて、決裁者に同じ景色を共有することができるかという点が重要となってきます。

そういった意味合いでは、新規事業の提案時には、その事業を通して目指す世界観、その事業を軌道に乗せた時のありたい姿なども大切な要素の一つとなります。

<社内向けの企画書と融資者向けの企画書の差分を明示>
新規事業の企画書を作るうえで、読み手によって着目するポイントが異なる点は意識しておかなければいけません。

新規事業の立ち上げ時に融資を受けて資本を作る場合、社内提案が通って少し動き出したとしても、融資者への提案をクリアしなければ頓挫となってしまいます。

それぞれがより着目するポイント、それを把握したうえで企画書に盛り込むべき要素、訴求すべき事項を決定します。
以下では、社内提案と融資者への提案で、それぞれ承認を得るために重要となるポイントと企画書の構成をご紹介していきます。

-社内で承認を得るための新規事業企画書

社内向けの新規事業企画書を作る際、冒頭でもご紹介したように決裁者がリソースを投下しても良いと意思決定できる企画書にしなければいけません。
企画書を作る際には、自分の新規事業にかける想いは残しつつも、経営者側の立場で合理的な提案であるのかを分析することが重要です。

<企画書のポイント>
・なぜ自社がやるのか
新規事業を立ち上げる際、一般的には競合ひしめくいわゆるレッドオーシャンの領域には手を出しません。
成熟したレッドオーシャン領域で新規事業を立ち上げるのであれば、競合他社が目を向けていなかった高い独自性が求められることになります。

また、まだまだプレイヤーが参入していないブルーオーシャンなのであれば、なぜ競合他社は参入しないのか、なぜ他社はしていないのに自社がやるのかを明確にしておくことで、決裁者としては非常に気になる利益の見込みとリスクを把握することができます。

・なぜ自社だとやれるのか
新規事業を立ち上げる際、自社の既存事業で得たナレッジを活かし、自社の持つアセットを活用していくのが基本となります。
アセットを活かせることを明確にしたうえで、なぜ競合他社ではなく自社であればできるのか、仮に後から競合他社が参入してきたとしても勝ち切ることができるのかを企画書には盛り込みましょう。

・投資する価値はどの程度あるのか
新規事業の立ち上げは、よほどのことがない限り投資期間があり、それを回収して利益を積んでいくことになります。
決裁者としては、投資対効果が見えなければリソースを投下する判断はできないため、現実的かつ投資価値のある利益の見込みを企画書に盛り込まなければ、提案は通らないでしょう。

・確実性はあるのか
そして、投資である以上、投資の価値と合わせてどれだけの確実性があるのかを提示することも大切です。
実際に事業を動かす前の机上の空論ではありますが、シミュレーションを立てることもできない事業に投資することはできません。他社の事例や他領域での事例を参考にしながら、その提案にはどれだけの確実性があるのかを提示しましょう。

・考えられるリスク
そして最後に、押さえておかなければいけないのが、想定しうるリスクです。
リスクを記載することで、“ネガティブな印象になってしまい提案が通らないのではないか”と思うかもしれませんが、ノーリスクで立ち上げられる新規事業はほとんどないことも決裁者は理解しています。
想定うるリスクをきちんとリストアップしたうえで、そのリスクを回避する最小限にするためには、どのような施策が必要になるのかまで準備しておくと、決裁者に対して納得感のある提案ができるでしょう。

<企画書の構成>
社内向けの新規事業計画書は以下のような構成で作るのがおすすめです。
上述のポイントを各項目で意識しながら、決裁者がリソースを投下する意思決定が自然にできるような企画書を作ることが目標となります。

・事業概要(誰に何を売るのか)
・新規事業を立ち上げる理由と目的
・市場や顧客のニーズ
・事業化のプロセスと展望
・製品やサービスが売れる理由
・売上/費用/収益の予測
・財務分析
・リスク分析

-融資者から承認を得るための新規事業企画書

続いて、融資者から承認を得るための新規事業計画書のポイントと構成についてです。
融資者として最重要課題は“融資することにどのようなメリットがあるのか”という1点のため、融資者にとって利益があり有意義な事業であること、そして失敗するリスクが低いことを企画書で伝えていきます。

<企画書のポイント>
・動機は適切であるのか
新規事業を立ち上げる目的は、時代の変化に取り残されず今後も会社を継続させていくため、更なる利益創出の機会を作るためなど、さまざまではありますが、その動機が適切であるかは融資者にとって投資の判断基準となります。
動機がいい加減、新規事業にかける想いが見えないと思われてしまうと、融資を引くのは難しくなるでしょう。

・確実性はどの程度あるのか
確実性については、社内の決済者と同様に融資者も重視しているポイントとなります。
その新規事業が成功しなければ、返済が途絶えてしまうリスクが融資者としてはあるため、社内の決済者よりも確実性は求められることになります。

・経営改善効果が見込めるのか
確実に融資額を返済してもらうためにも、融資者としては融資先の企業の経営が健康であることは非常に重要なポイントです。
すでに健康経営ができている場合はその新規事業の失敗で悪化する恐れはないか、現在健康状態が悪いのであればその新規事業で健康経営まで持っていくことができるか、こういった会社の経営状態も融資者への提案の場合は必要となります。

<企画書の構成>
融資者へ向けた新規事業計画書は、以下の構成で作成するのがおすすめです。
なお、融資者が銀行なのかファンドなのかによっても、作成する企画書の構成は変わってきます。銀行なのであれば確実性があることをよりアピールし、VC(ベンチャーキャピタル)やファンドであれば、その会社の特性に合わせて訴求ポイントを調整することで、融資は引きやすくなります。

・事業概要(誰に何を売るのか)
・新規事業を立ち上げる理由と目的
・自社と環境の分析
・市場や顧客のニーズ
・製品やサービスが売れる理由
・事業化のプロセスと展望
・売上/費用/収益の予測
・財務分析と融資の効果
・リスク分析

-まとめ

新規事業の計画書を作る際には、提案者(自身)本意の企画書ではなく、その企画書を見る人の立場を考えることが重要です。
その企画書は社内提案に使うものなのか融資者への提案に使うものなのか、融資者は銀行なのかファンドなのかVCなのかなど、こういった環境を整理したうえで適切に訴求できる企画書を作ることで、提案が通りやすくなります。

企画書が通らなくて悩んでいるという方は、企画書を見る人の立場になって、どのような企画書であればOKを出せるのかという観点を持つと、刺さる提案ができるようになるでしょう。

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