8か月で900件の紹介を創出!?誰もが紹介を生み出せる魔法の4Sとは?
ようやく新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、コロナ禍もひとまずは収束したと言える状況です。
しかし、この3年間で起こったリモート化とそれに伴う顧客関係性の変化の一部は、New Normalとして今後も残り続けるでしょう。
では、そんなコロナ禍を業績を落とさずに乗り越えた企業と、大きく落とした企業との違いは何でしょうか?
いくつかあると思いますが、一つ大きかったこととして「既存顧客との関係性の深さ」が挙げられます。
「なるほど、新規受注が難しくなった分、既存顧客深耕でカバーしたということね」と思った方は、半分正解です。
実は、「既存顧客からの紹介案件を獲得することができたかどうか」が、コロナ禍での成否を分けたポイントでした。
このデータは、営業員の売上高の違いとなる要因を分析したものとなります。
営業スタッフの売上高の違いを分析していくと、口コミによるシェア拡大を実現できているスタッフとそうでないスタッフとの間で、時が経つほど加速度的に差が開いていることが分かります。
これまでに積み重ねてきた「紹介をしてくれる顧客」のストックの重要性が、コロナ禍で新規営業の手段が制限された中で、結果の差として現れたということになります。
紹介獲得の4Sとは
では、「紹介をしてくれる顧客」をどのようにして育てていけばよいのでしょうか?
実際には、付き合いが長いからといって紹介を得られるとも限りませんし、懐に入り込む上手さやお客さんにかわいがられる才能など、個人の特性によるものと思われがちですが、必ずしもそんなこともありません。
紹介営業は、「紹介の4S」をやりきることができれば、誰しもが紹介を成果を出せるようになります。
この記事を通して紹介の4Sを理解していただき、読み終わった後にはお客様から紹介をいただくシーンのイメージを持っていただければと思います。
「紹介の4S」は、下記の4要素から構成されています。
この4つが揃えば成果が出るという、紹介営業における必勝フレームワークとなります。
ここからは、それぞれのSが意味することを具体的に見ていきましょう。
①Segmentation
まずは、セグメンテーションです。
顧客には、紹介をしてくれやすい特性を持った顧客と、そうではない顧客がいます。
営業に使えるリソースは有限ですので、全ての顧客に闇雲に紹介依頼を行うのではなく、ターゲットの見極めを行い、紹介をしてくれる顧客にリソースを投下する必要があります。
では、紹介特性がある顧客とは、どのような顧客でしょうか?
ここでは3つの軸をご紹介します。
「A.過去紹介履歴」「B.紹介特性」「C.満足度」です。
A.顧客紹介履歴
「企業の売上の8割は、2割の顧客によってもたらされている」と言われていますが、紹介も同じです。
実際のデータでも、8割の紹介案件が、紹介件数上位2割のクライアントによってもたらされています。
そのため、過去に紹介を行ってくれたクライアントが、最も優先度の高いアプローチ先となります。
B.紹介特性
個人の特性として、世話を焼くのが好きな人とそうではない人がいますよね。
たくさんの顧客の中から、紹介するのが好きな方を見抜く必要があります。
具体的な方法として、「ケーキトーク」があります。
このような雑談の中で、相手の紹介特性の強さを見極める質問を意図的に行い、働きかけるべき相手を見極めるのです。
C.満足度
そもそも現在のサービスに満足しているのか?という観点になります。
たとえば顧客アンケートなどをとって、顧客の満足度を測定していきます。
大前提として、自分自身が満足していないものを他人に紹介してくれる人はいませんから、顧客の満足度をモニタリングする仕組みを構築しておくことは、紹介獲得の観点からも非常に重要です。
以上3つの観点を踏まえて紹介依頼ターゲットとしての顧客の分類を行うのが、セグメンテーションになります。
②Satisfaction
続いて、サティスファクションです。
先ほど顧客の満足度でセグメント分けを行う必要性については言及しましたが、同じ顧客でもタイミングによって満足度の高さは変わります。
身近な例として、レストランが若い2人組の女性客に口コミのSNS投稿を依頼するシーンで考えてみましょう。
a. 料理の盛り付けがオシャレなレストラン
このレストランは、メインの料理を出した瞬間にお客さんが一番盛り上がり、料理の写真を撮ったり2人で写真を撮り合ったりするでしょう。
このタイミングが満足度が一番高いタイミングですので、ここで店員が2人の写真を撮って
「うちのお店のハッシュタグをつけてSNSに載せてくださいね~」などと言うと、盛り上がりのままにSNSに投稿してくれる可能性が高そうです。
b. 料理がとにかく美味しいレストラン
このレストランは、料理が運ばれてきて一口目を食べ始めたときから徐々にお客さんの満足度が上がっていきます。
そして、食べるにつれて満足度が高まっていき、美味しい料理を食べ終わって満腹になった瞬間が満足度MAXです。
たとえばお皿を片付けるタイミングなどで、料理の感想を聞いてみるとよいでしょう。
そこで「美味しかった」と言ってもらえたらしめたものです。
「実はいまキャンペーン中で、うちのお店の感想をSNSに投稿していただいた方には食後のドリンクを1杯100円の特別価格でご提供しているのですが」
などと伝えれば、美味しい料理に感動して幸せな気持ちのままにSNSに投稿してくれるでしょう。
c. オシャレで美味しいのに、非常にリーズナブルなレストラン
a,bのような盛り上がりは食事中にはないかもしれませんが、食べ終わって会計時に、
「このクオリティでこの価格は安い!」
と思ってもらったタイミングが、一番の狙い目です。
レジ付近にSNSのQRコードを置いたり、「SNSフォロー&口コミ投稿で次回使えるクーポン券プレゼント」などのポップを飾ったりして、お会計をしながらサラッと口コミの投稿も依頼できれば、コストパフォーマンスに満足したお客さんが帰りの電車の中で口コミ投稿をしてくれる可能性は高そうです。
このように、同じレストランという業態であっても、顧客の満足度が高いタイミングは異なります。
では、貴社の場合はいかがでしょうか?
契約時、運用開始時、成果報告会で成果を実感してもらったとき、大きな成果が出たときなど。
自社の商品/サービス特性を踏まえて、何度か来るであろう顧客の満足度の波が上がったタイミングを逃さずに、先ほどのレストランの例のように、そのタイミングで紹介依頼をできるような仕組みを用意しておくことが必要です。
下の例のように、自社の顧客満足度曲線を描いても良いですね。
(例)システム開発会社の顧客満足度曲線
満足度が一番上がるタイミングを抑えたアプローチを行うことがSatisfactionにおけるポイントになります。
③Sales
続いて、Salesです。
あなたはこれまで、顧客側として紹介依頼を受けたことはありますか?
調査データによると、顧客として営業員から紹介依頼をされた経験を持つ人の割合は20%、5人に1人に留まります。
一方で、自身の購入体験を知人に紹介したいと考える人の割合は、81%にのぼります。
つまり、紹介をしたい/してもよいと考える人が8割を占めるにもかかわらず、紹介依頼を受けたことのある人は2割に留まるということです。
ですので、「紹介依頼を行わない」というのは非常に大きな機会損失を生んでいると言えるでしょう。
では、実際にどのように紹介依頼を行えばよいのでしょうか?
一番のポイントは、「特定依頼」です。
「ご紹介をお願いします!」と頼むのではなく、「~~な方をご紹介してください!」という具体的な依頼を行うことで、紹介の成功率が一気に高まります。
他社の紹介を依頼する場合であれば、紹介先の業種/業態や部署、役職などを指定することで、パッと頭に顔を思い浮かべてもらうことができます。
社内であれば、部署や業務内容を具体的に指定することで、解像度を高めてもらえます。
ちなみに、特定依頼の確度を高めるためには、事前のネットワーク把握が必須となります。
例えば相手が経営者の場合、「同年代の経営者の飲み仲間がいる」「同業界の経営者間の横の繋がりが強いらしい」などの事前情報があれば、相手が紹介可能なセグメントをピンポイントで特定依頼できるからです。
そのためには、当たり前ですが常日頃からのコミュニケーションが重要になってきます。
さらに、HP等に加盟している業界団体などが記載されている場合は、「○○協会の方で~~~」といった形で、バイネームで紹介経路を指定することも
可能になるので、HPや公式SNSもウオッチしておくと良いでしょう。
こうして、事前情報を十分に収集したうえで特定依頼を行うと、成功確度を高めることができます。
④System
最後に、Systemです。
貴社では、紹介活動をどのように管理していますか?
紹介活動に注力し始めたフェーズの企業様は、既存のKPIに紹介からの売上高や紹介契約件数など、紹介に関する結果指標を付け加えて管理をするケースが多く見られます。
紹介強化の第一歩としては十分ですが、そこからさらに成果を出していく場合には、プロセス指標の管理も必要になります。
代表的な紹介活動のKPIとしては、下記のような指標です。
活動量が足りていないのか、紹介依頼の精度が低いのか、紹介からの成約率が低いのかなど、個人や会社として、得意/苦手が可視化されることで、紹介成果向上に向けたPDCAが回りやすくなります。
このように、紹介を結果指標だけでなく、プロセス指標まで管理するシステムを構築することができれば、紹介獲得の再現性を高めることができるようになります。
紹介営業強化で900件の案件創出に成功した事例
ここからは、事例ベースで紹介営業の取組をご紹介します。
弊社が、建設現場向けの総合リース・販売業を営むA社と一緒に紹介強化を推進した事例になります。
前提として、リース商品には他社と商品や価格での差別化がしづらく、人間関係勝負になることが多いという特性があります。
そのため、ターゲット企業内の現場シェアを高めるための手段として、紹介・口コミ営業が非常に有効になります。
しかしながら、営業マンによって紹介獲得スキルには大きな差があったため、今回の紹介強化プロジェクトが発足しました。
結果として、元々紹介案件がほぼゼロだった状態から、30人ほどの営業員の組織で、8か月間で900件もの紹介案件を創出することに成功しました。
この成果を実現させた具体的な実施事項を、前述の4Sの枠組みの中でも特にSegmentationとSalesの2つの観点から深掘りしていきます。
①Segmentation:人脈マップ×人間関係度での整理
SegmentationにおけるA社の特徴的な取り組みは、人脈マップと人間関係度を掛け合わせて整理したことです。
まず、紹介発生のポテンシャルが大きい大手顧客を中心に、1社1社の人脈マップを描きました。
事務担当者、所長、部長など様々な部門・役職の関与者を1枚にまとめることで、効率よくキーマンに辿りつくためのアプローチルートが可視化されます。
ここまでは比較的一般的な取り組みですが、この人脈マップに人間関係度と取引状況を掛け合わせことが、A社の取組の特徴であり、成果に繋がった要因であると考えています。
上図のように、キーマン毎に現状の関係性と取引状況を可視化します。
これにより、たとえば
「X所長とは次に会うタイミングで有益な情報を持っていって人間関係から信頼関係まで関係性を引き上げよう」
や
「Y所長にはZ部長の紹介を依頼してみよう」
など、次にとるべき具体的なアクションを設定することができます。
人財マップと人間関係度の図を掛け合わせ、セグメンテーションからアクションまでを一連の流れとして設定できたことが、A社で大きな成果が出た要因の一つでした。
②Sales:特定依頼×切込商品活用×一網打尽作戦
SalesにおけるA社の取組の中で参考になる点は、先述の特定依頼に加えて、切込商品活用と一網打尽作戦の2つを行ったことです。
まずは切込商品です。
紹介営業についても、一般的な新規営業と同様に、まずは小さくてもアカウントを開くことが重要になります。
そのため、最もアカウントを開きやすい商材を切込商品として設定し、まずはその商品から紹介してもらうようにしました。
ちなみに、切込商品に適した条件は以下2点です。
1.需要創造型商品であること
2.高い満足度を獲得できる商品であること
新しいカテゴリの商品のため競合からのスイッチングコストの壁がないこと、そして大いに満足いただき関係性が良好になって次の提案に繋げやすいことが、2つの条件設定の理由となります。
続いて、一網打尽作戦です。
役職者や社内で影響力を持つ層を口説き落とし、彼らに会議等の場で切込商品を活用した成功事例を語ってもらうことで、口コミ拡散の効率性を高める手法となります。
今回の事例では、所長会という全国の所長が集まる場において、発言力のある大規模営業所の所長から発信してもらうことで、一気に口コミ拡散に成功し、効率的に紹介件数を獲得することができました。
自社の商品ラインナップや顧客の規模/業態などによっても最適な手法は変わってきますが、こうした様々な手法を組み合わせることで、効果的な紹介営業を実現することができます。
まとめ
以上が、紹介営業を進めるためのポイントと事例になります。
この4つを抑えた紹介活動の仕組みをつくることで、誰しもが一定以上の水準で成果を出すことができるようになります。
紹介の仕組み作りに興味がある方は、お問い合わせください。