新規事業を成功に導くリーダーシップとは“事業リーダーの見つけ方と活かし方” #事業開発SUMMIT2023
こんにちは、CROHackです!
今回は、2023年8月に開催された「事業開発SUMMIT2023」のセッション「新規事業を成功に導くリーダーシップとは“事業リーダーの見つけ方と活かし方”」のレポートをお届けします!
新規事業の成功には、新しい発想に伴う行動や粘り強く耐え抜く姿勢が必要です。こうした活動を支えるために、必要となるのが「リーダーシップ」です。事業開発において欠かせないリーダーを見つけ、育てるためには、どのような要素が必要なのでしょうか?
今回は、スポーツ産業に取り組む2名にご登壇いただき、それぞれの事業活動を紹介していただきつつ、事業開発のリーダーに求められる資質などについて伺いました。
ご登壇を頂いた方
志を持ってスポーツ事業に取り組む二人の経営者
早川氏と伊藤氏はそれぞれ、プロスポーツと教育という二つの分野にて、スポーツ事業を手がけています。
例えば早川氏は、2018年に沖縄県中頭郡中城村という、人口2万人の村にて琉球アスティーダスポーツクラブを立ち上げました。そこからわずか3年の2021年に、同社はプロスポーツチームとして初の上場を果たしたのです。
琉球アスティーダスポーツクラブは、設立当初より以下のミッション、ビジョン、バリューを掲げています。
この言葉のとおり、琉球アスティーダは卓球のプロリーグ「Tリーグ」の2022-2023シーズンにて、見事優勝を果たしました。チームには、2024年パリオリンピックで金メダルを目指す張本智和選手も在籍しています。
沖縄アリーナにて行われたチームのイベントには、3.5万人が来場しました。また、チーム運営をスポンサー頼りにするのではなく、自社のIP(知的財産)を活用したさまざまな事業も展開しています。
スポーツ業界の市場規模は、アメリカが約50兆円に対して日本が約5兆円と、大きな差があります。スポーツ庁は、2025年には国内の市場規模は約15兆円までに成長させる目標を定めていますが、「稼ぐ力」が乏しい、資金調達機会が少ない、イノベーションが少ないなど課題が山積しているのが現状です。
この現状を打開するため、琉球アスティーダは日本で唯一の上場スポーツクラブとして、既存のスポーツ業界を変革する先導役となろうと早川氏は考えています。
そして、業界のあり方を大きく変えて、日本のスポーツ業界の底上げと地方創生への貢献を図ろうとしているのです。
伊藤氏が設立したリーフラスは、子ども向けスポーツスクールを全国に展開しています。会場数は4,000以上、会員数は6万人以上と、日本屈指のスクールにまで成長しました。
同社の運営するスポーツスクールは、子どもたちの「非認知能力」の育成を主目的に掲げています。非認知能力とは、人間力や思いやる力、リーダーシップなどを指します。
2022年度に、スポーツ庁は部活動の地域移行・地域連携の方針を発表しました。リーフラスはその移行連携支援も行っています。
同時に、リーフラスは部活動にまつわる社会課題にも取り組んでいます。従来の日本の部活動は、「目上の人の言うことを聞く」「みんなに合わせる」といった社会性を学ぶ場となっていました。
それらすべてが悪しき伝統とはいえないものの、部活動自体が「子どもたちを管理しやすい装置」になっていると、伊藤氏は警鐘を鳴らします。
部活動自体が、人生でもっとも多感な思春期において、同調圧力で個性を奪う装置になっている。そうではなく、子どもたちが真にスポーツを楽しめて、自由に意見してやりたいことができるような環境を用意したい。
こうした活動を通じて、日本の未来を担う人材を育成していきたいと、リーフラスは考えています。
事業リーダーを見つけるために重要なのは「強い志」
セッションの後半では、事業リーダーの見つけ方や育て方、資質を見抜く方法などをゲストの観点から語っていただきました。
早川氏は、事業のリーダーを発見し育てるという点において、企業に重要なのはミッション・ビジョン・バリューを明確に持つことだと話します。そして、ミッション・ビジョン・バリューを社内外に伝えていくことで、それらの想いに共感した人材がやってくるのです。
早川氏は、事業リーダーとなるべき人材の条件を3つピックアップしました。
事業リーダーを見つけるうえでも、売上や利益ではなく、こうした志をどれだけ強く持っているかが大事なのです。とはいえ、現在では多くの企業がミッション、ビジョン、バリューを掲げています。それでも、社内にリーダーシップが生まれない、事業リーダーが輩出されないと悩む企業が少なくありません。
この点について、早川氏は「社長、リーダー、事業責任者の本気度が社内外に伝わっているか」が重要だと語ります。形式的にミッション、ビジョン、バリューを用意するだけでなく、事業の責任者たちがそれらに込められた想いを、しっかり理解しているのか。ここを徹底出来ている企業は、意外にも多くありません。
ミッション、ビジョン、バリューの方向性を常に意識して、それを実現したいという強い志があるかどうかは、すぐ周りに見抜かれてしまいます。そうした確固たる想いがあったからこそ、早川氏は4年間かけて張本選手を説得し、チームに招くことができたのです。
問題意識を原動力にして、執念を持って行動すること
伊藤氏は、事業リーダーに備わっているべき要素として「社会課題に対して、執念を持って取り組めるかどうか」だと話します。
リーフラスは「スポーツを変え、デザインする。」という企業理念を掲げています。その根底にあるのは、伊藤氏や従業員が抱えている「部活動での悲しい体験」をなくしたいという想いです。
伊藤氏は中学校時代に野球部へ入部しましたが、しごき・体罰は当たり前で監督には絶対服従という環境でした。現在も就職説明会などでアンケートを取ると、7割近くの人々が「部活動で体罰を受けたことがある」と回答しているのです。
これが日本のスポーツの現状であり、この状態を改善したいと強く願っている人々が、リーフラスに集まっています。これまでの人生で直面した問題意識を原動力にして、強い意思で新規事業を立ち上げて成長させていく。こうした力を発揮できるかどうかが、日本の事業開発をさらに加速させるうえでの重要なポイントとなっているのかもしれません。
社会的課題への解像度が高まるにつれて、本気度が高まっていった
伊藤氏のように、過去の経験によって生まれた「問題意識」という原動力を持っていない人々は、事業リーダーになれないのでしょうか?早川氏は、現時点でそうした強い想いを持っていなくても、新規事業に取り組む過程で問題意識に気づけることもあると話します。
早川氏は琉球アスティーダスポーツクラブを立ち上げた時点において、卓球未経験者であり細かなルールも知らなかったそうです。幼少期からの経験から、スポーツ自体への強い想いを持っているわけではありませんでした。
一方で、「強い地域や強者にだけ光が当たって、弱い地域や弱者に光が当たらない社会を変えたい」という想いがありました。そして、チャレンジした人々が評価される社会をつくりたいと思い、国政に参加したのです。
この考えは、スポーツ産業にも引き継がれています。スポーツチームのスポンサーを探していたとき、周囲から心無い言葉を浴びることが何度もありました。早川氏はそのたびに、「スポーツは夢と感動を与えるものなのに、なぜお金を生む瞬間がないのだろう」と考えたそうです。スポーツというテーマに対する解像度が高まっていき、問題点を知るにつれて、早川氏の本気度も高まっていきました。
つど気づいた問題点について、その問題を解決すれば多くの人々を幸せにできるのか。次世代にどのような未来が残せるのか。こうした大義について考えることによって、早川氏のリーダーシップは醸成されていきました。
発信を続けて仲間を増やしていってほしい
事業リーダーを見つけて育てるために、何をすればいいのでしょうか?早川氏はその疑問について、「常に発信し続けること」だと回答します。琉球アスティーダスポーツクラブは、会員制の経営者コミュニティ「アスティーダサロン」を運営しています。サロンでは1,000名規模のイベントも開催し、オンラインでの情報交換や交流会を実施しています。
早川氏には、「アスティーダサロン」を通じて夢と感動を与えるスポーツにお金が循環するというモデルを浸透させ、日本を成長させたいという想いがあります。サロンに限らず、さまざまな公演や交流会に参加したり、書籍『琉球アスティーダの奇跡』を出版したりして、この理念を発信し続けています。
プロスポーツチームを上場させるという計画に対して、人々は口々に「絶対に無理だ」と早川氏に言いました。それでも発信を諦めなかったことで、一人二人と仲間が生まれていったのです。
新規事業を立ち上げて、これまでになかった未来を現実化していくには、志を発信して人間関係を築いていき、仲間づくりをしていく以外にない。これができることこそが、リーダーシップなのだと早川氏は話しました。
伊藤氏は、2001年にリーフラスを創業して「部活動を正しい姿にしたい」と活動しつづけてきました。そして、ようやく2022年頃からその活動が本格化できたと言います。それができたのは、従業員と志を一つにして、同じベクトルを向いて行動しつづけてこれたからです。
ぜひ皆さんも、社会問題を解決するという強い想いを伝播させていき、事業リーダーを発見・育成してほしいと話しました。
まとめ
セミナーのポイントをまとめました。
新規事業に抱く志を、明確なミッション、ビジョン、バリューとしてまとめて内外に発信していく。そこに共感する人々が仲間となってくれることで、強いリーダーシップが生まれていくようになる。
お二人の話を参考に、ぜひ自社の事業や事業に取り組むうえでの問題意識を見直していただき、日本の事業開発を盛り上げていきましょう!