最強の営業組織 キーエンスから学ぶ高収益事業を持続的に生み出す営業組織の作り方 #事業開発SUMMIT2023
こんにちは、CROHackです!
今回は、2023年8月に開催された「事業開発SUMMIT2023」のセッション「最強の営業組織 キーエンスから学ぶ高収益事業を持続的に生み出す営業組織の作り方」のレポートをお届けします!
事業の成長〜衰退までのサイクルが短くなる昨今、成長事業を生み出し続けることが求められている企業にとって、営業組織の改革は避けて通れません。そこで注目されるのが、「最強の営業組織」と呼び名の高い株式会社キーエンスです。
営業利益率54%、80%以上の粗利率、平均年収2,279万円。多くの驚異的な数字を持つキーエンスは、どのように営業組織をアップデートさせ成長を持続させているのでしょうか? キーエンス入社後、それぞれに事業を立ち上げている3名の登壇者に、同社の成功の秘訣をうかがいました。
ご登壇を頂いた方
キーエンスの成長を実現する3つの力〜開発力・販売力・データドリブン力
なぜキーエンスは、持続的に成長できているのか。その理由を、岩田氏は「高付加価値の商品開発力」にあると話します。
キーエンスは顧客へのダイレクトセールスを通じて、顧客との強力なコネクションを築いています。加えて、顧客のニーズを営業組織がヒアリングして、開発部門へと共有する体制も構築されているのです。
また、キーエンスでは商品開発時における粗利率も厳格に定められています。こうした仕組みによって、マーケットインの商品開発を実現しています。
竹内氏は、どのようなプロダクトでも販売できる営業組織を持っていることが、キーエンスの強みであると説明します。プロダクトの良し悪しにかかわらず、キーエンスの営業組織はそれらを「売る力」を備えています。販売結果がプロダクトの検証につながっており、商品の改善へとつながっているのです。
荻原氏は、データドリブンの事業運営が持続的な事業成長につながっていると話します。キーエンスでは、どの企業に訪問して、どのように商材を提案して、勝率はどうだったのかというデータを逐一記録します。さらにいえば、何時何分に出社してどう行動したのかという細かなデータを、実測するための仕組みを構築しているのです。
竹内氏は、キーエンスを離れてから多くの企業が、営業を属人化させていることに驚いたと言います。それほど、営業スタッフの行動をデータに残す習慣が定着しているのだそうです。
営業の行動は、何が結果につながったかが見えにくくブラックボックス化されやすいとされています。しかし、キーエンスは、営業スタッフのアクションひとつひとつがデータ化する体制が強固に築かれていることで、営業体制のブラックボックス化を防いでいます。
“最強の営業組織”を実現するプロセス重視の評価制度
キーエンスの持続的成長の要因として、やはり注目すべきは「最強の営業組織」です。現在はご自身でも事業を展開している3名は、キーエンスの「最強たる所以」をどうとらえているのでしょうか?
竹内氏によれば、意外にもキーエンスの営業スタッフは他社と比較して、群を抜いて優秀というわけではないそうです。その代わり、キーエンスは仕組みによるボトムアップの文化が徹底されています。
キーエンスは徹底して、業務の属人化を排除しています。朝出社して夜帰社するまでに、やるべきことがすべて決まっています。そして、定められた業務はすべて、売り上げに直結するよう設計されているのです。
こうした体制づくりも、先ほど紹介した「データドリブンで物事を判断する姿勢」をつらぬいています。
例えば竹内氏が所属していた部署では、商談ごとに「役職者はいたのか」「何人以上が同席していたか」といった数字をすべて報告する義務がありました。こうしたデータを一定期間採取し、成績優秀な営業スタッフとそうでない営業スタッフとの差異を調査するのです。
この調査の結果では、「顧客の社長と現場を担当する上長3名以上に対してデモをすると、商談が成立しやすい」というデータが取れました。その結果を他の営業スタッフにも伝え、社長+上長3名にデモをするという商談を獲得できるよう指示したそうです。
また、キーエンスには成功した商談の内容を投稿できる、社内掲示板が存在すると荻原氏は言います。本来、営業スタッフ同士で成績を競い合うという環境では、各営業スタッフには「自分のノウハウをシェアしたくない」という心理が働きます。
しかし、キーエンスでは掲示板に投稿した内容もまた、評価の対象となるのです。インセンティブが用意されていることで、営業スタッフは自身の成功体験を積極的にシェアするようになります。
さらにキーエンスでは、顧客に自身が扱っていないプロダクトの商談チャンスがある場合、その情報を共有することで評価が上がる仕組みがあるのです。
このように、キーエンスの営業組織には、プロセスマネジメントとそれにひもづいた評価制度が整備されていると岩田氏は語ります。プロセスが評価されるからこそ、営業スタッフも常に正しい行動を取ろうと意識します。
ここで気になるのは、キーエンスの「採用体制」です。岩田氏によると、キーエンスの採用では「論理的思考能力」「素直さ」「エゴドライブ(自己主張できる力)」の3つを重視していると言います。実際に、キーエンスの営業スタッフは協調性の高い人が多かったと竹内氏は話します。
また、荻原氏はキーエンス出身者に適性診断テストを行うと、以下の3項目で高い適正を示すといいます。
こうした話から、キーエンスは採用段階からプロセス重視の営業組織を構築・維持するための方策を実行していることがわかります。
事業開発、人事評価、採用。あらゆる面で活かされるキーエンスでの経験
キーエンスから独立して、各々に事業を展開している3名に、キーエンスでの学びをどのようにビジネスへ活かしているのかを聞きました。荻原氏は、2つの視点が大きく自身の事業に活かされていると言います。
1つ目は「マーケットインの視点」です。
マーケットのニーズを的確に捉え、独自価値を発揮するプロダクトを開発する。そのために、経営陣自ら顧客接点を持ったり、インタビューを通して顧客の声を拾い上げることを徹底しています。こうした取り組みを通じて、「売れるプロダクト」を開発する重要性を、キーエンスで学んだそうです。
2つ目は「採用」です。
スタートアップという立場において、荻原氏はマーケットインと同様にプロダクトアウトの視点を持ってイノベーションを起こすことも重要だと考えています。
両者のバランスを保つなかで、新しいアイディアが生まれるようなメンバーの自由度の高い経営体制を構築していきたい。そのために、荻原氏は「経営陣よりも優秀な人」など、非常に高い採用基準で新たなメンバーを探し続けています。
竹内氏は、「データドリブンで判断する姿勢」が事業に活かされていると言います。
企業のトップが「この事業アイディアいいね」と考え、プロダクトアウト視点で新規事業を立ち上げる例は少なくありません。しかし、そのプロダクトが実際に売れるかどうかは、この時点では不透明です。
そのため竹内氏は、先にプロダクトのプロトタイプをつくった段階で、顧客から一定の受注が獲得できるまで、開発に着手しないというルールを定めています。この検証というプロセスを経ることで、1カ月あたりの商談数、成約率、必要な営業スタッフの人数などの見通しが立てやすくなるといいます。
データドリブンで事業に必要な数字を因数分解していきながら、営業組織に必要な行動を明確化していくというアクションにおいて、キーエンスの学びがフルに活かされているのです。
岩田氏は、キーエンスで培った「見える化」と「プロセスマネジメント」が、自社の事業にも活かされると話します。
キーエンスの圧倒的な強みは、顧客データや営業スタッフの行動が見える化されている点にあります。一方で、こうしたデータが見える化されていない企業は、少なくありません。
各種データを見える化して、プロセスマネジメントを徹底していく。これによって、社内の全員が成果を出せる状態を作りやすくなると、岩田氏は説明しました。
まとめ
セミナーのポイントをまとめました。
お三方の話から、キーエンスは圧倒的なデータドリブン、プロセスマネジメントの体制を徹底しているからこそ、現在の成功を収めていることが伝わりました。同社の取り組みを少しでも参考にすることで、皆様の事業成長につながれば幸いです。