オンライン商談のコツ -新時代の営業スタイルへの適応-
こんにちは、CROHack編集長の松尾(@daisukemo)です。
世界中に混乱をもたらした新型コロナウイルス。5月25日にようやく全都道府県への緊急事態宣言が解除されましたが、緊急事態宣言が出されていたここ50日ほどの間、苦汁を舐めていた営業は多かったのではないでしょうか。
国内ではインサイドセールスに注力していた一部の企業でしか取り入れられなかった「オンライン商談(オンライン営業)」が、リモートワークの広まりによって半強制的に多くの企業で取り入れざるを得ない状況が続きました。
実感した方も多いと思いますが、対面での商談とオンラインでの商談は勝手が違います。「温度感が分からない」「受注率が下がった」という営業の声も多く聞こえてきたのも事実です。
だからと言って、緊急事態宣言が解除されたことで、「よしこれで対面での面談に戻せるな」という判断を下してしまうのは安易かもしれません。
また緊急事態宣言が出ないとも限らないですし、コロナ以前から海外諸国では商談のオンライン化が進んでいる中で、今回をきっかけにオンライン商談の「ライトさ」にメリットを感じた顧客も多いことでしょう。
つまり、自分たちが望まずとも顧客側がオンライン商談を希望する機会が増えることが直近の流れとしては予想できます。オンライン商談・オンライン営業に苦手意識を持つのではなく、順応することがこれからの営業には求められます。
そこでこのnoteでは、オンライン商談を成功させるためのコツや新時代の営業スタイルで求められる営業テクニックについて、私たちならではのノウハウも加えた上でご紹介します。
オンライン商談のメリットとデメリット
コロナ禍のデータにはなりますが、ベルフェイスが2020年4月30日~2020年5月1日にかけて行ったオンライン商談に関する実態調査によると、国内企業においてオンライン商談を導入している企業は52%。そのうち48.5%は新型コロナウイルスへの対策として導入しています。
一方、コロナ以前からオンライン商談を本格導入している企業はわずか23.5%に留まり、フィールドセールスを中心とした日本企業従来の営業スタイルが色濃く残っていることが改めて分かりました。
セールスする側としてのオンライン商談のメリットは、分かりやすいもので言うと「移動コスト削減」と「リードタイム短縮」が挙げられるでしょう。場所に囚われずスピーディーに商談まで持ち込めるというのはメリットです。
また、移動時間が削減されたことで、その分の時間を事務処理や追客などに充てられるようになりました。
ベイジの枌谷さんの言葉を借りると、その他にも細かいメリットがあります。
そしてもう一つ大きなメリットとして、「商圏を広げられる」というメリットがありますが、これは後ほど詳しくご説明します。
逆にオンライン商談になったことでのデメリットとして考えられる点は、「機材環境面でのデメリット」と「セールス機能面でのデメリット」の2つが挙げられます。
機材環境面でのデメリットとは、音声が安定しない、画面が固まる、接続準備に時間がかかるなどの要素です。現在はお互いにオンライン商談に慣れようとしている、いわゆるリモートフレンドリーの段階であり、ツール慣れやサービス側の品質向上によって次第に解消されていくことを期待しましょう。
問題はセールス機能面でのデメリットの方で、これが最初の方に話した「先方の温度感や場の空気感が読みづらい」という話に繋がります。場の空気を読みながらクロージングを掛けるタイプの営業は、この点に最も苦労しているのではないでしょうか。
オンライン商談で良く使われるツール
環境面という話を少し補足しますと、顧客とオンライン商談を行うためのツールはさまざまなものがあります。現在、国内で主に利用されているオンライン商談ツールをいくつか挙げてみましょう。
・Zoom
・Google Meet
・Microsoft Teams
・bellFace(ベルフェイス)
・Skype for Business
・Whereby
上記のツール以外にもオンライン商談で用いることのできるサービスは数多くあり、今後もその数は増し、サービスのアップデートも行われると予想されます。
こうした「WEB会議システム」の用意さえあればオンラインでの商談は可能ですが、大切なのは商談を邪魔しない品質を備えた環境を用意することです。
ツール導入の際には、接続の安定性や、音声・映像の鮮明さなど、対面での商談では考える必要のなかった点について考えて検討しなければなりません。また画面共有機能や録音機能、メモ機能など「通話」以外にもさまざまな機能があるため、導入の際には自社の商材や商談の進め方を踏まえて「必要な機能」を洗い出した上で検討することをおすすめします。
(無料で使えるものも多いので、まず色々と使ってみてから比較検討するのが良いのではないでしょうか)
オンライン商談におけるクロージングの難しさ
日本では今まで当たり前の営業スタイルとされていた対面での商談の最たる特徴が、顔を突き合わせて話すことによって温度感や空気を察することができる点です。
オンラインでの営業の場合、互いに入ってくる情報は1つの画面と音声のみです。画面を共有している場合、顧客からは自分の身振り手振りのアクションは見えないですし、その一方でセールス側にとっては「この提案は刺さっているのだろうか」「言いたいことは伝わっているのだろうか」と不安になった場面もあったのではないでしょうか。
初回商談の場合は特に、「顧客側はオンライン商談に熱量を持ちづらい」というのは、実際のところ否定できません。名刺の手渡しもできず(名前を覚えてもらいづらい)、聞く側はともすると他の作業をしながらでも対応できてしまう。
だからこそ、対面商談のときと同じような資料を用意し、同じような進め方をしようとすると、成果が出づらくなるのも無理のない話です。
上記を念頭に置いて、ではどのような準備をしてどのような進め方をすればオンライン商談で成果が出やすくなるのでしょうか。
ここでは「オンライン商談中のポイント」と「オンライン商談前後のポイント」の2つに分けてみました。
オンライン商談中のポイント→「時間の使い方」「所作」
オンライン商談前後のポイント→「シナリオ設計」「スピード感」「追客」
オンライン商談中のポイント
オンライン商談中のポイントは、「時間の使い方」と「所作」の2つです。それぞれについてご説明します。
― 時間の使い方
聞く側としては、オンライン商談は対面よりも集中力が維持しづらい環境です。そのため、商談時間は最長でも1時間を超えない程度、30~40分で済ませるのが理想です。
1時間確保するとして、残りの時間はアイスブレイクや自己紹介、長引いた場合の予備時間として考えておいた方が良いでしょう。
時間の使い方でもう一つ重要なポイントとして、時間内に納めなければならないというのが挙げられます。これは、オンライン移行によって、スケジュールがタイトになったためです。
バッファがほとんどなく、次々に会議を行ったり来たりすることもあるので、確実に予定した時間内で完結する設計が重要になります。
対面の場合、当日印刷した資料を渡して説明するやり方をしていた人も多いと思いますが、オンライン商談の場合は事前の資料送付がマストです。電波が弱くて音が聞こえない、画面共有ができないなどの環境トラブルが起こる可能性も否定できないため、資料を読めば提案の要旨が理解できるように配慮しておくことも大事です。
もちろん資料をベースに商談を進めていくのは同じですが、総じて、資料を読む・説明することに時間を割くよりも、事前に送った資料の要旨を説明してフィードバックやヒアリング、質疑応答などの時間に重きを置くほうが、有意義な商談になりやすいです。
なお、新規顧客に対してヒアリング不足と感じた場合は、商談の目的をセールスからヒアリングに切り替える判断がフィールドセールスと比べて難しいのがオンライン商談です。
しかし、顧客のニーズを掴みきれていないまま商談を続けてしまっても、自社はもちろんリード顧客としても無益な商談となってしまうため、相手のリアクションや話し方などにはオフラインでの商談よりも注意深く観察するようにしましょう。
― 所作
相手の反応が分かりづらいからこそ、話し方やリアクション、ひいてはカメラの映り方にも気を配りましょう。
ここまで話をしてきている中で今さらな話ではありますが、商談中は両者カメラオンが鉄則です。書籍『REMOTE FIRST』でも書かれていることですが、ビデオ通話であることで、対面における一般的なエチケットが適用されている場であることを両者が認識することができます。
もし相手がカメラをオフにしていた場合、「顔を見ながらお話させていただきたい」とオンにするようお願いしてみましょう。(カメラが付いてない、という場合は仕方ないですが)
そしてここからが所作の話になりますが、対面と同様にオンラインにおいても、相手は何かしらの第一印象を感じます。
そのため、相手のカメラに映った瞬間に「カメラの中央に自分のキリッとした顔が映るように」表示されるよう意識しておきましょう。目線も最初は画面ではなくカメラに向けておきます。
非常に細かい部分ですが、第一印象で「あまり本気ではないのでは」と思われてしまうと、商談への熱が落ちてしまうのは対面でもオンラインでも同様です。気を配れる場所が少ないからこそ、細かいところに気を配りたいところです。
そして商談が始まると、多くの場合はセールス側が画面を共有して資料を進めていくことが多いかと思います。ここで大きなポイントになるのが、「顧客側の理解度に合わせて進めていけているかどうか」です。
意識としては、相手が途中でリアクションしやすいように対面での商談よりも間を長めに取った話し方をするのがおすすめです。
もしリアクションがなかった場合でも、セクションごとに「つまりこういうことなのですが、ここまででご質問はありますでしょうか?」のように適宜確認するなど、一方だけが話し続けないように注意しましょう。
また、前述の通り入ってくる情報が画面と音声だけという環境であるからこそ、話し方にも気を配りましょう。
話を聞く立場で考えれば当たり前の話ではありますが、抑揚のない声でひたすら話されるよりも、聞き取りやすく、かつ感情が伝わるような話し方の方が心地よさを感じます。
この「心地よさ」は意外と無視できない要素で、声が大きすぎたりしても良くありません。バランスの取り方が難しいので、社内MTGやロープレなどでフィードバックを貰いながら自分なりに調整してみるのも一つの手です。
オンライン商談前後のポイント
ここまでで幾つかオンライン商談中のポイントをご紹介しましたが、成約率が落ちたと悩んでいる営業としては、恐らくこれだけでは抱えている悩みは解決しないでしょう。
むしろ商談中よりも重要と言ってもいいかもしれないのが、商談前後のアクションです。ここでは、オンライン商談前後のポイントを「シナリオ設計」と「スピード感」と「追客」の3つに分けてご紹介します。
― シナリオ設計
入ってくる情報が限られている以上、どうやっても対面に比べるとオンライン商談はアドリブが効きにくいのは事実です。そこをカバーするために重要なファクターになるのが、商談前のシナリオ設計です。
相手からの質問やフィードバックを予め複数パターン用意しておき、それに応じた商談シナリオの組み立てやトークのスクリプトを準備しておく。
対面営業でもこのスタイルでセールスしている方もいるかと思いますが、オンライン商談においては、このシナリオ設計の差が商談の成功率にかなり響きます。
当然、1から考えると事前準備に時間がかかるというデメリットはありますが、過去実際にあったシナリオ・ストーリーをストックしておくことで、ある程度のバリエーションを用意する時間はかなり短縮できるかと思います。
なお、コロナ禍以前のフィールドセールスで使用していたシナリオや提案資料をそのままオンライン商談で使用するのは厳禁です。
以前から提案資料はわかりやすくシンプルにとは言われていましたが、オンライン商談の場合はさらにその重要性が高まっており、Zoomなどでのオンライン商談の場合は提案を受けながら内職もできてしまうため、シンプルでわかりやすいというのはオンライン商談のカギとなります。
― スピード感
リードタイムが短くなるというオンライン商談のメリットを享受するためには、全体的なスピード感を対面営業のときよりも上げていくことが望まれます。
熱量が上がりづらく下がりやすいオンライン商談だからこそ、アポイントはすぐ切り(1週間以内)、商談終了後にはすぐにお礼のメールを送り(30分以内)、そのメールで次のtodo(回答期限の設定など)を設定するくらいのスピード感をもって対応するようにしましょう。
もちろん、todoの消化もスピード感を持って行い、そのタスク後のアクションも「社内で検討して再度連絡します」をなるべく避けるようにして、短時間でもオンライン商談を繰り返せるようにします。
ちなみにインサイドセールスの場合、NTT東日本ではWeb問い合わせに対する架電を「2時間以内」から「5分以内」と改めたことで、キーマンへの接触率が30%台から60%台に上がったという事例もあります。
― 追客
すぐ前のスピード感とも関連する要素ですが、熱量が上がりづらく下がりやすいオンライン商談の場合は「質が良い追客」ができているかどうかも非常に重要です。
セールスの基本として追客の重要性は恐らく多くの方が認識されていると思いますが、特にオンライン商談の場合、追客を少し怠っただけでも受注率が格段に下がります。
数字が上がらないときは、「商談の数を増やせ!」という上層部のプレッシャーもあり、とにかく案件を増やそうと注力しがちです。結果、保有する案件数ばかり気にしてしまい、追客が疎かになるというのは良く陥りがちなパターンではないでしょうか。
追客の質は、「優先順位の設定」「todoの設定」「設定したtodoの実行」という大きく3つの要素によって決まります。
「設定したtodoを遅延なく実行できているかどうか」が最終的に重要になるわけですが、当然ながら保有している見込みの案件数が多ければ多いほどさばくのが大変になります。
だからこそ、案件に優先順位を付ける必要があります。見込みの薄い案件へ追客メールを送る時間よりも、見込みの高い顧客の追加資料を作る時間を優先するべきです。
現在はさまざまな企業で使われるようになってきていますが、インサイドセールスを取り入れている企業のほとんどは、セールスフォースなどのCRM・MAツールを使いシステム的に見込み度や追客状況を管理しています。
強いセールス組織は、個人的な管理だけでなく、組織として細かい見込み管理や追客管理をできるようにしてあるケースがほとんどです。
ここまでが、オンライン商談で成果を上げていくためのコツとなります。取り入れられそうなものがあれば、ぜひ積極的に試してみてください!
オンライン商談最大メリットは「エリア開拓」
ここまでを読まれて、「オンライン商談って大変」と改めて思われた方もいるかもしれません。
そのため、ポジティブな要素を改めてお伝えしますと、オンライン商談の普及によって、「エリア」に縛られる必要性が(少なくともセールスにおいては)なくなりました。
対面での商談が前提とされていると、移動時間や業務効率の兼ね合いから大抵の企業は組織ごとにエリアを限定してセールス活動をしています。
特にベンチャー・中小企業は地域ごとに営業所や拠点を置くことができず、決まったエリアでのみセールスを行っているケースが多いのではないでしょうか。
それが、オンライン商談が受け入れられるようになってくることで、セールスのエリアを実質的に日本全国どこにでも広げることができます。
セールス側がオンライン商談のコツを掴めれば、かなり大きいメリットとして享受することができるでしょう。
リード数減少への対策はマーケティング機能の強化
話は変わり、オンライン商談に漕ぎつける前の段階について考えてみましょう。
今回のコロナ禍の中で、テレアポを代表としたプッシュ型の営業スタイルを主体にフィールドセールス活動をしてきたtoB企業の多くは、SQL(Sales Qualified Lead=営業活動で作られたリード)が減ったことで悩んでいたかと思います。
オフラインによるリード獲得の効率には限界があり、緊急事態宣言が解除された今になって元に戻ることはあるかもしれませんが、そこから数を増やすことは難しいでしょう。
そのため、WebサイトやSNS、ウェビナーなどのオンライン上でのリード獲得を増やしていくことに改めて注力していくべきです。
ここは所謂マーケティングの領域ですが、インサイドセールスの普及に伴い、これまでフィールドセールスに割いていた人員がマーケティングやCSに置き換わる流れが生まれています。営業にとっても、決して関係ない話ではないのです。
新時代の営業スタイルによってトップ営業が変わる可能性も
セールスの視点で内容をまとめると、対面での商談からオンライン商談へ変わっていくことで、それまで評価されてきた営業スキルが変わることが予想されます。
そしてそのことが意味するのは、各社の売上トップの営業が変わるかもしれないということです。
今まで数字を残してきた営業の多くは、対面で相手の表情や感情、場の空気などを汲み取りつつアドリブで話を展開していく能力に長けていました。
しかし、オンライン商談が主戦場になったここ50日間では、綿密なシナリオ設計とトークスクリプトを準備した人が数字を上げやすいという傾向に変わったのです。
上記の記事の通り、人々がリモート慣れする「リモートフレンドリー」の段階から、今後は「リモートファースト」に変わっていくことが予想されます。
その変化の中で、旧時代の営業スタイルも変えていなかければ、営業個人としても組織としても生き残りが難しくなっていくことでしょう。
まとめ
■オンライン商談で成功させるコツ
・オンライン商談中は「時間の使い方」と「所作」に注意する
→カメラ映りや話し方など細かい部分にも気を配る!
・オンライン商談前後は「シナリオ設計」と「スピード感」と「追客」に注意する
→綿密なシナリオ設計が鍵。アポも追客もスピード感をもった対応を!