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Salesforceの決算から学ぶSaaSビジネスTips

こんにちは、CROHack編集部の船戸です。

NYSE(ニューヨーク証券取引所)銘柄から編集部が注目する企業の決算を見ていきます。

SaaSの生みの親と言っても良いSalesforceの決算を見てみます。使用するスライドは以下を参照しております。

▼Dreamforce'19-Investor-Dayスライド

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▼FY21 Q2決算スライド

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-セールスフォースのこれまでの成長戦略

まずはこちらの資料から成長戦略を読み解いていきます。

セールスフォースは、いわゆる顧客管理システムをクラウド上で行うサービスを行っています。読者の方々が勤める企業でも利用されているところが多いのではないでしょうか。

セールスフォース以前は、各社がそれぞれ自社でシステムを保有し、顧客管理を行っていましたが、セールスフォースによって①データセンターを保有することなく、②ITの専門家は不要となり、③システムをインストールし稼働させるためのシステムインテグレータが不要となりました。

まさに破壊的な効果を生み出す結果となったわけです。

そんなセールスフォースが2019年に「DreamForce」 というプレゼンテーションを発表しました。

面白いことに、このスライドにはセールスフォースのこれまでの道のりが書かれています。
その過程をみることは日本のベンチャー(特にSaaS企業)にとっても価値あることだと思います。

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このスライドはセールスフォースの成長マイルストーンが書かれています。はじめの11年は「クラウドソフトウェア市場の定義」とあり、売上は10億ドル以下と書かれています。もう桁が日本とは違いますね(汗)

その次の8年間が「成長加速」、続いて「リーダーシップを磨き込む」。これは市場におけるリーダーとしての地位を確率するという意味でしょう。そして現フェーズは「持続可能な成長」と書かれています。

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上のスライド2枚では、持続的な成長ということで平均成長率が26%という数値を継続していることを示しています。
この規模で2桁成長というのはすさまじいとしか言いようがありません。

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そして2025年までには、5年間で2倍の成長を掲げていることがわかります。いかにセールスフォースが成長にこだわっているかがよく分かるスライドですね。
そしてその2倍成長を成し遂げるための戦略が次以降のスライドにあります。

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まずはデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、DXに費やす予算が増えているという予測が書かれています。つまり、これまでDXをしていなかった企業層がコロナの影響により、変化せざるをえない状況をセールスフォースは活用しようと考えています。

このように具体的な数字で見るとチャンスの大きさがよくわかります。

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また、こちらではセールスフォースの製品を導入することで、顧客がどれほどの効果を得ることができるかを表しています。
売上は平均で25%増加、マーケティング費用対効果は30%改善し、ITコストは26%減るなど。

このような記載はベンチャー企業の営業・マーケティング手法にも参考になる書き方ですね。機能を説明するよりも、それによって受けられる恩恵のほうが導入を検討する企業にとって大事となるでしょう。

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そして個人的に、セールスフォースの強みはこのスライドだと思っています。

これは、単一のクラウドサービスを導入している顧客と複数のクラウドサービスを導入している企業を表した図です。左には顧客の割合が書かれており、年々複数契約の企業が増えており、2016年度時点で3割弱だった割合が、2020年度時点で約4割まで上昇しています。
そして、年換算の売上ではなんと複数契約が93%を占める状態になっています。

通常ベンチャーでは限られた種類のサービスを持って市場に臨みますが、ユーザー数を伸ばした後に、単価を向上させるクロスセルやアップセルに課題感を感じている企業が多いように見受けられます。
セールスフォースは製品ラインナップを豊富にすることでクロスセルを可能にし、売上を向上させていることがわかります。

資金が限られるベンチャーでは難しい施策ではありますが、取りうる戦略の一つとして押さえておいてよいでしょう。

-セールスフォースの決算ハイライト

それでは、直近(2020年8月25日)に発表されたばかりの決算資料を見ていこうと思います。

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第2四半期の業績は、以下の通り

【売上】
51.5億ドル YoY+29%
【営業キャッシュフロー】
4.3億ドル YoY▲2%
【契約済でこれから入ってくる予定の売上】
306億ドル YoY+21% 

という大きな成長となりました。※YoY=前年比

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四半期ごとに見てみると営業利益率は上下していますが、売上はきれいに右肩上がりを続けています。

-SaaS企業特有の指標「RPO」とマーケットシェア

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先ほどの業績の中で

【契約済でこれから入ってくる予定の売上】
306億ドル YoY+21% 

という記載をしましたが、この売上はRemaining Performance Obligation(RPO)というSaaS企業特有の指標として上の図で示されています、RPOは、既に契約済でこれから入ってくる売上のことを指しています。

SaaSプロダクトは月額や年額で契約をするため、解約がなければ将来どれくらいの売上が立つかを予測しやすい性質を持っており、企業としては管理がしやすく、投資家から見ると将来性を図る重要な指標になります。

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そして、こちらはCRM業界におけるマーケットシェアになります。巨大テック企業を相手に、セールスフォース一強の時代が長く続いています。

-決算資料から見える、各社ごとの重要指標

最後に、米国の決算資料スライドを見るときに特徴的なことは、会社が重要視している項目が冒頭にくるということです。

例えばAmazonではスライドの冒頭にフリーキャッシュフロー(FCF:自由に使えるお金)を示すスライドが出てきます。それはAmazonが売上や利益よりも、FCFを最も重要視しているということを意味しています。

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その前提のもと、先ほどのセールスフォースの業績ハイライト資料を見てみると、冒頭に以下の指標が書かれています。

①売上
②営業キャッシュフロー
③これから見込める収益(RPO)

①②はどの企業にとっても重要な指標ですが、SaaS特有の指標であるRPOは、SaaS企業の先駆者でもあるセールスフォースにとっても重要な指標であることが分かります。

-さいごに

今回は初回ということもあり、簡潔な内容となりましたが、今後も注目SaaS企業の決算スライドから、経営に活かせる内容をお送りしていこうと思っています。

「決算のスライドって結構面白いな」と思われた方はぜひ日本の上場企業からで構いませんので、見てみてください。多くの新しい発見があるかと思います。

何度も言うようで恐縮ではありますが、「○○を取り上げてほしい」などのご要望がありましたら、ぜひコメント欄にご記入くださいますと幸いです!

最後までお読みくださり、ありがとうございました。