見出し画像

リクルート秘伝のタレ「ヨミ会」を覗き見してみた

数あるリクルート用語の一つ「ヨミ会」。
リクルート流の営業管理会議を指す言葉であること、ベンチャー/スタートアップ領域でセールスに携わっている方であればご存じの方もいるかもしれません。
しかしながら「ああ、あれね」と思った方、果たしてどれくらい細かく知っていますか??
単語としては知っていても、なかなか鮮明にイメージできるほどに解像度高く理解できている人は実は少ないでしょう。まして、自社のマネジメント体制に落とし込めている組織はごくわずかではないでしょうか。

当記事では、6月にリブ・コンサルティングで開催したセミナーでおこなった「ヨミ会ケーススタディ」の内容をまとめています。実際のところヨミ会がどのように運営されているのか、この機会に、覗き見する感覚で知っていただければ幸いです。

はじめに ーヨミ会の基礎知識ー

覗き見を始める前に、最低限のヨミ会の情報だけ押さえておきましょう。
まず、ヨミ会はほとんどがフリーダムに動くことを許されるリクルート組織において唯一強制的に参加することを求められる、重要度の高い会議です。
欠席はもちろんのこと、準備せず挑むことはあり得ない場と認識ください。
当日は、チームの数字確認→個人の数字確認→案件レビューの順に進めていき、目標達成に向けたゴール・アクションのアップデートを行います。

また、ヨミ会では「ヨミ表」とよばれるシートが存在しており、ヨミ会運用に必要な情報を集約しています。

会議の名称にも含まれる「ヨミ」は着地見込みのことですが、リクルートでは営業個人の感覚に由来して決定されることも大きな特徴です。そのため、ヨミ会ではこうしたヨミの精度が正しいかの確認をまず行うことから始まります。アクションを最適化するという検討ステップは、ヨミを精緻化したうえで行わないと意味がないことにご注意ください。
因みに、目標達成がもちろん目的ではありつつ、自分のヨミよりも多く受注することはよしとされていません。上振れも下振れもせず、ヨミ通りに成果創出できるかが重要であり、昇進にも大きく影響するほど大切なものとして重視されています。

メンバーは各自事前準備として、自分なりに最高のアクションを整理して挑みます。当日の案件レビューでどの点を深堀りされそうかを想定し、打ち返せるかシミュレーションをしておくことが当たり前の準備水準です。

さて、これで大まかな準備は整いました。
いよいよ覗き見してみましょう。

ヨミ会を覗き見

はじめに前提情報を確認しましょう。

最後の追い込みが求められる中、受注を見込んでいた案件が没になってしまった山崎さんは、別のCヨミ案件で巻き返しを図っているようです。200万円の差分を埋める必要があるためプレミアムプランを想定しているようですが、果たして最適でしょうか。

さあ、ヨミ会が始まるようです。


<全体数字確認>

高井:
では今週もヨミ会お願いします~
まず全体の数字の動きから確認していきます
前週から500万着地の数字が下がっています

3月は残り3週間です、達成に向けて今週もしっかり個別に案件を深堀りできればと思います
では個人別で見ていければと思いますので宜しくお願い致します

<個別数字進捗確認>

高井:
山崎さんの案件から行きましょう
数字の進捗とその理由について共有ください

山崎:
先週からの数字の動きとしては、CヨミのY不動産さんが見込みから落ちたので、-200万円
一方でZ不動産が3月19日のタイミングでCヨミ案件で+200万円を予定しているので全体は±0円になります

<ヨミ精度確認>

高井:
Z不動産が3月19日のタイミングでCヨミである理由を教えていただけますか?
これまでZ不動産はプレミアムプランをやったことがない中でなぜCヨミ案件化したのか教えて欲しいです

山崎:
はい、仰る通りZ不動産さんは過去にプレミアムプランを提案した際、金額面でお断りされました

ただ、最近同じエリアのA不動産様でプレミアムプラン実施により成功事例が出たので、この事例をもって再度社長にアタックしてみようと思っています

高井:
なるほど。なんでプレミアムプランなの?スタンダードプランで掲載できる物件はないの?

山崎:
掲載できる物件はあると思いますが、、、現在、載せていないです

高井:
じゃあまずは広告掲載していない物件を掲載する方が、優先度としては高いのかなと思うんだけど、そうしないのはなんで?

山崎:
・・・着地から下振れしてしまったので、挽回できる可能性が高い高単価のプレミアムプランを選びました

高井:
うん、いや、プレミアムプランがダメってことを言ってるんじゃなくて、
選んだ理由にロジックはあるのかを確認しているのね
つまり今の話だと、自分の達成都合の提案をしているという認識であっている?

山崎:
はい、そうですね、そうなってしまっています

高井:
プレミアムプランで掲載する物件はどういう基準で選んだの?

山崎:
販売価格が高い物件であるかという基準で選んでいます
プレミアムプランの掲載は質の高いリード創出に効果があるので、プレミアムプランによって購入可能性が高い富裕層の獲得ができると思いました

高井:
プレミアムプランは豪華に物件を訴求して質の高いリードを生み出すという商品だけど、Z不動産はリードの質が課題なの?リードが取れても決まらないみたいな話はしてた?

山崎:
販売価格が高い物件なので売るための施策を提案して欲しいと、、、

高井:
リードの質に関してはこれまで言及してなかった?

山崎:
言及されていないかったです
今思い出したのですが、まずは多くの人に物件を見てもらうことが重要だよねという話を思い出しました、、、

高井:
ということはプレミアムプランの提案は集客の絶対数を増やしたいというクライアントの要望からずれるよね

山崎:
たしかにそうですね、、、

高井:
話を整理すると

【ヨミ挽回仮説】
着地申請から下振れしてしまったー200万円を埋めるためにY不動産のCヨミ案件をヨミに入れた
【理由の説明】
同様のケースであるA不動産がプレミアムプランの掲載(リード質の向上)によって成果が出たという事例を話せば案件が決められると思っている
【事実の確認】
一方でZ不動産の興味関心はリードの質向上ではなく、集客数の増加である
【提案のずれ】
それに対して、集客数の増加ではなく、集客の質向上施策の提案(プレミアムプラン)をしている

うん、なるほど、だとこの案件がCヨミであるというのは精度が低そうですね。このままだと次週もー200万円のままで着地しそうですね

<個別案件レビュー>

高井:
だとしたらどうする?山崎はどうしたいの?

山崎:
個人的に絶対達成したいのと、着地申請から下振れしてしまい、皆さんに迷惑をかけている状況なので、マイナス200万は必ず挽回したいです
候補としてはこのZ不動産様しか受注可能性がなさそうなのでこの案件の確度を高めるためのでアドバイスをもらいたいです

高井:
わかった、じゃあどうやったらこの案件の確度が上がるか考えていこうか。
Z不動産さんの業績的は順調?事業目標いってる?

山崎:
全体の業績は目標未達です、うまくいっている物件と、苦戦している物件がはっきり分かれています
苦戦している物件は差別化できておらず売れ残ってしまっています

高井:
その苦戦している物件は広告掲載している?

山崎:
広告の費用対効果が悪いので今は掲載してません

高井:
掲載が止まってしまっているってことは、集客を止めてしまっているということ?この物件を案内できそうなリードがたまっていたり、紹介できそうなお客様は存在するの?
そうでないなら、集客を止めている今の状況はCLにとってもその物件を買うかもしれないカスタマーにとってもめちゃくちゃ機会損失になってない?

山崎:
正直、そこまで現状把握できていないです、、、
ただ費用対効果が悪いなら広告投資を辞めてしまっていいかなと思ってしまいました

高井:
わかっていると思うけど、今ある物件が売れないとキャッシュが回らないよね?つまり売れ残りを放置するということは、CLの事業を止めてしまうことになるんだよ?
CLの成果を主語に考えていないなら、山崎が担当である必要ってある?山崎の仕事って広告の枠売り屋さんなんだっけ、どうしたらいいと思う?

山崎:
確かに、そこまでの視座で考えられてませんでした・・・
まずは全物件ちゃんと掲載してキャッシュを生ませる提案をすることがベストだと思いました
新規よりも優先して既存の苦戦物件へスタンダードプランを提案します

高井:
載せてない物件をすべてスタンダードプランですべて載せた場合、いくらになりそう?

山崎:
4物件あるので、200万円は広告枠として運用できると思います

高井:
だとするとそっちの提案の方がクライアントのためにもなるし、今週の下振れ分の挽回はできそうだね

山崎:
はい、仰っしゃる通りです
未掲載物件へスタンダードプランの広告枠提案を今週中に実施します

高井:
いいね!よろしく!必要があれば同行するので、シナリオ設計したらまたレビューしよう
まずはアポ設定をお願いします


振り返り

いかがでしたでしょうか。容赦ないFBもありましたが、この水準でヨミ精度を精緻化し、アクションを詰め切る体制が毎週回っていると考えたら、リクルートが目標必達できる強い組織と認知されている理由もわかるような気がしませんか。

最後に、ヨミ会から学ぶべきポイントを振り返りましょう。

1.数字のヨミの精度にとことん拘る
2.各営業が自身の数字に責任を持てるようにする
3.営業会議を育成の場として活用する
4.すべてのツールに意味を持たせる

おわりに

リクルートにおいてヨミ会が営業管理体制の要になっていることを認識いただけたかと思います。また、自社に落とし込みたいと考えられている方も多いのではないでしょうか。

そうした際は、表層を真似するのではなく、本質的な価値を取り入れていくことが何よりも重要です。また、特にベンチャー/スタートアップ企業においては、事業/組織フェーズの違いにも合わせたカスタマイズをしないと運用できないという側面も多分に存在します。

ヨミ表関連の詳細やその他ヨミ会のエッセンス、スタートアップ企業での活用におけるポイントなどはセミナーで詳細をお話ししておりますので、興味のある方はアーカイブ動画も併せて参照ください。

また、ヨミ会セミナーとは別にリクルート流営業勝ちパターンについてまとめた資料もございますので、こちらもぜひご覧ください。

【動画】ヨミ会セミナー アーカイブ
https://forms.gle/oTviVmdFRQpXJ5iFA

【資料】リクルート流営業勝ちパターンの作り方
https://www.libcon.co.jp/venture/documents/salespattern-of-recruit/

リクルート流営業勝ちパターンの作り方


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!