プラットフォームビジネスの先駆者企業が明かすグロースの軌跡と現実
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プラットフォームビジネスの先駆者企業が明かすグロースの軌跡と現実

こんにちは、CROHackの大島(@crohack_oshima)です。

先日、弊社で主催致しましたウェビナー「LancersとShufoo!から紐解くプラットフォームビジネスの最前線」の内容を再録記事として公開させて頂きます。

日本において、プラットフォームビジネス(以下、PFビジネス)を先駆的に展開されてきた、ランサーズ取締役の曽根さん、Shufoo!を運営するONE COMPATH代表の早川さんをパネラーにお迎えし、モデレーターを弊社権田が務めさせて頂きました。

業界のパイオニアとして、両社それぞれがどのように市場を創造し、迫りくる後発の競合にどんな対抗策を講じつつ事業をグロースさせてきたのか、一見華やかに見えるPFビジネスの事業創造の中にも、ハード・シングスが垣間見える興味深い議論となりました。

-プラットフォームビジネス勃興の条件と成功の鍵とは?

権田 本ウェビナーは、①前半:“プラットフォーム”の定義を明確にし、また、PFビジネスの歴史・種類・市場・成立過程、ネットワーク効果などに関するお話/②後半:曽根さん、早川さんの実体験に基づいた具体的なお話…と大きく2部構成で進めていきます。

プラットフォームビジネスの歴史と種類

権田 プラットフォーム(以下PF)という言葉が、なんとなくバズワード的に語られています。PFとは何なのかという共通認識をもつために、改めて定義づけを致しました。広義の意味では、「他プレイヤーが提供する製品・サービス・情報と一体になって、初めて価値を持つ製品・サービス」であるとしています。

歴史を紐解くと、PFビジネスは、マスメディアが主流の時代から、考え方としてはありました。しかし、インターネットの出現により、PFの機能が従来に増して容易に働くようになり、昨今ではビジネスの主流になっていると言っても過言ではありません。

そして、PFビジネスを大別すると2つの種類が存在することに気づきます。以下の図をご覧下さい。

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LancersもShufoo!も、いわゆる「リボン図モデル」と呼ばれる媒介型PFであると思います。一方で、基盤型PFは歴史が長く、古くはハードの上にソフトが乗る関係で成り立つビジネスでした。

しかしながら、近年ではFacebook等のソーシャルメディアが基盤の役割を果たし、アプリやサービスが供給されるなど、もはや媒介型と基盤型の境目はなくなってきています。

プラットフォームビジネス勃興の条件

権田 さて、私どもリブコンサルティングでも多くのPFビジネスのお手伝いをして参りました。媒介型PFビジネスに向く市場の特徴として、以下のようにモデルAとBがあると考えます。

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巨大なレガシー産業において、サプライヤー側の稼働率が低くなっている市場をテクノロジーの力で課題解決していくというのがモデルAです。Shufoo!は、まさにこちらだと思います。

モデルBは、大きな環境変化により需給バランスが崩れ、アマチュアマーケットが誕生することで、需要者が供給者としても機能するというモデルです。クラウドソーシングはモデルBと言えます。

媒介型PFビジネスが勃興する市場環境は、いずれかの条件モデルに該当する時であると考えます。

ファーストムーバーのグロースにおける最大の脅威とは?

権田 そして、以下の図ではPFビジネスの成立過程を分析しています。

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先程のモデルAにおいて、PFビジネスを開始するのであれば、サプライヤー側の稼働率が下がりきる一歩手前のタイミングがベストと言えます。サプライヤーが課題を認識し出す頃です。この段階では、まだ需要側のペインポイントは顕在化しておらず、供給側に寄り添わざるを得ません。ゆえにサプライヤードリブンのPFが出来上がってきます。

すると、今度はデマンドドリブンのセカンドムーバーが出現してきます。セカンドムーバーは需要側のサービス体験を磨き上げることで、ユーザーシェアを獲得し、得てして、セカンドムーバーが大きな脅威となり得ると考えます。

また、PFビジネスでは、ネットワークの外部性が注目されます。サイド間ネットワーク効果、サイド内ネットワーク効果があり、確かに両方がうまく機能すれば、ネットワーク効果の恩恵を充分に受けられます。しかしながら、選択する市場によっては、そうではないケースも往々にしてあり得ます。

概して、PFビジネスでは「Winner takes all」と言われがちですが、実際の所、一人勝ちとなる条件は非常に難しいもののように思えます。

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-プラットフォームビジネスのグロースの道程

権田 さて、少し長くなりましたが、以上に見てきたように、PFビジネスにはファーストムーバーが抱える特有のジレンマというものがありそうです。ここからは、LancersとShufoo!両社のグロースにおいて、それぞれが実際にどのような意思決定を下してこられたのか、お話を伺って参ります。

サプライヤードリブン or デマンドドリブン?

権田 サービスを開始されたタイミングでは、サプライヤー側、デマンド側、どちらに対する価値提供を優先されましたか?

曽根 最初期では、サプライヤー側です。Lancersでは、まずロゴデザインができるデザイナーをいかに多く集めるかという議論から始まりました。当初は弊社代表の秋好のブログ読者全員にアプローチをするなど、かなり地上戦的なことを実行し、ひたすらデザイナー登録者を増やすことに専念していました。

早川 私どもも、サプライヤー側と言えます。ただし、Shufoo!は2010年頃にビジネスモデルを大きく転換しています。
Shufoo!は、凸版印刷の営業だった山岸が、同社の新規事業として立ち上げたのですが、最初からメディアビジネスの形をとっていたわけではありません。
山岸はダイエーやイトーヨーカドーなど、大手小売りチェーンの担当で、クライアントのチラシ制作の工程が非常に大変だったようです。これをITの力で効率化できるのではないかと考え、当初のShufoo!ビジネスが構想されたと伺っています。

当時はチラシをデジタル化してクライアントのホームページに載せるというサービスが主軸で、それに付随して、Shufoo!にもチラシが掲載される仕様でした。この頃に、まず宝塚の阪急百貨店、万代、ダイエーの契約が決まりました。
その後、2004年にイトーヨーカドー、イオン、ユニクロとの取引がスタートしたことがきっかけで、サプライヤー側の企業が続々と集まり始めました。凸版印刷のネットワークを活用し、まず業界の雄を押さえられたことが功を奏しました。


“to B”開拓の創意工夫

権田 “to B”側の開拓をする際、以下の図のような8象限の中で、プライオリティを導き出していくことになると思います。企業規模や業種によるセグメント、または都市部優先か地方優先かなど、このあたりはどのように意思決定をされましたか?

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曽根 立ち上げ期は明確にプロダクトがグロースを牽引してきました。市場黎明期には、ロゴデザインに特化したプラットフォームではあるものの、少しずつカテゴリを広げながら、サービスを育てていきました。
しかし、新しいカテゴリを開発しても、すぐ競合に真似られるという“イタチごっこ”に、次なる一手として、B向けに需要喚起するマーケティングへの投資を開始していきました。

早川 私どもでは、スーパーのチラシはユーザーが見たがるコンテンツですから、まずはその業態に注力致しました。その中でも、とにかく地域で一番店の契約をとることを営業戦略として、約10年間続けておりました。

サイド内、サイド間ネットワーク効果の実感は?

権田 PFビジネスならではのネットワーク効果を実感する局面はありましたか? ビジネスモデル上、両社ともサイド内ネットワークはほとんど効いてこないように思えます。またサイド間ネットワークも極めて限定的と言えそうです。例えば、Shufoo!の場合は、物理的距離の制約があります。任意の店舗チラシに対する需要は、半径何km以内くらいでしょうか?

早川 3~5kmくらいですね。おっしゃる通り、隔離されたニッチ市場ではあるものの、エリアという側面からサイド間ネットワーク効果は限られていると思います。

権田 Lancersも、初期段階では収穫逓増だと思いますが、ある一定ラインを超えてくると、逆にコストとなってきそうですが、いかがでしょうか?

曽根 そうですね。基本的にユーザーが増え過ぎると玉石混合の状態に陥りかねません。だんだんとUXは悪くなってきます。それは供給側、需要側を問わず、PFとしての品質低下の問題に繋がります。

先行者利益の享受は?

権田 両社ともに先行者利益が働きにくい市場かなと思いますが、実際にはいかがでしょうか?思った以上にハード・シングスが多い中で、マーケットのパイオニアとしてやってきた先行者利益はあったのでしょうか?

曽根 そうですね。少し横道にそれるのですが、一時期競合の会員数が突如として伸び、弊社内でも動揺が走りました。
この頃はその影響も受け、社内から聞こえてくる声、ユーザー調査結果など、情報が錯綜し、本当に追いかけるべきKPIを見失っていたように思います。

結果として、収穫逓増には行かないことが途中から見えてくるわけで、認定ランサー制度(注:フリーランスのランク制度)などにより、品質管理の重要性にも立ち返ることが出来ました。しかし、これは結果論です。当初からこういったことを理解しながらやるのか、焦って分からないまま掻き乱されていくのかは雲泥の差です。本当に重要なKPIにたどり着かない限り、その混乱は解きほぐせないのです。

権田 なるほど。品質管理にこだわりながら、プロダクトをじっくり作り上げていくことで、クライアントエクスペリエンスのような財産は残っていったのでしょうか?

曽根 そうですね。今は、そこが非常にしっかりと回っています。あまり競合は意識せず、基本に立ち返り、しっかりユーザーと向き合えていると思います。解像度の高いユーザー像から適切なペインを捉え、価値を創るための議論がなされ、それが実行にまで落とし込まれる体制がようやく整ったと感じています。

権田 早川さんはどうですか?競合の1社(以降A社)が凄まじい勢いでデマンドドリブンの事業拡大を行っています。スマホのUXにも目を見張るものがあります。市場が出来上がっていく中で、ファーストムーバーであるShufoo!から見て、A社の動きはどのように映るのでしょうか?

早川 うまいなと率直に思います。次はどんな手を打ってくるのかなと気になるところですね。

権田 これは、Shufoo!もやろうと思えば出来たことなのか、それとも、セカンドムーバーだからこそ出来たことなのか、どのように思われますか?

早川 後発だからできたことかなと思います。もともとA社はレシピ投稿サービスの中から生まれました。テーマとして挙がっていても、われわれがなかなか出来なかった「料理」と「買い物」をクロスさせ、サービスを作られたところは、当初は脅威を感じる部分でした。

Shufoo!は、簡潔にはどれだけチラシを見せ費用を頂戴するかというチラシビジネスをそのままデジタル化したビジネスでしたので、例えばクーポンのようなそれ以外のコンテンツフォーマットを実装するには若干遅れをとったと考えています。

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-今後の展望、過去から得られる示唆

権田 最後に「今後の展望」あるいは「過去の振り返りからの示唆」をお話し頂けますか?

早川 今後の展望についてお話しますと、WEBでチラシを見せるというだけのサービスでは、クライアントの本当の満足には繋がらないと感じています。折り込みチラシの置きかえとしても、充分とは言えません。

自分たちがコンテンツの一次窓口となって、その出口として既存のネットワークをうまく活用していく
ことで、折り込みチラシから進化した存在感のあるプラットフォームを目指していきたいと考えています。その第一弾として、今年10月からGoogleマイビジネスとの連携サービスを開始致しました。

曽根 振り返ってみて思うことは、顧客と真剣に向き合い、本質的にプロダクトのことを考え抜く時間をいかに作れるかが最も重要で、それがとても難しいと感じています。

資金面、組織面、競合、予期せぬインシデントなど、あらゆる経営課題と日々対峙する中で、顧客と向き合えるブレない環境を作ることが大切です。シリーズA、Bの段階では、これさえきちんとやり続けられれば、きっと伸びます。さらに言えば、そのような環境を維持できる“仕組みづくり”に意識を集中させるべきだと思います。

権田 曽根さん、早川さん、ありがとうございました。


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