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有形商材ベンチャーのジレンマ-事業戦略を考えるときのポイントとは?

こんにちは!CROHackの坊(@crohack_bou)です。

ベンチャー企業というと、SaaS等の無形商材(製造原価があまりかからない企業様を指しています)の企業様が多い印象ではないでしょうか?

手前味噌で恐縮ですが、CROHackを運営するリブ・コンサルティングでは、実は、有形商材を保有する、いわゆるリアルテック系の企業様とのお付き合いも増えてきております。 

無形商材と有形商材の企業では悩むポイントが異なり(たとえば、圧倒的に需要創造になることもその1つ)、その中で、どのような考え方で事業を捉えていくのかについて、少しでも参考になればと思い筆を走らせています。

-有形商材ベンチャー企業の悩み

✔ どうやって売っていけばいいのか?

有形商材ベンチャー企業特有の悩みとして先にも少し触れましたが、“需要創造が難しい”ことが挙げられるかと思います。

もちろん無形商材でも需要創造型の商品はたくさんあるとは思いますが、プロダクトを通じて、課題解決をしていく中で、そのプロダクトがどんな課題を解決していくのかという点において、(リアル)テクノロジードリブンで商品開発/商品企画に強みを持つことが多い有形商材ベンチャー企業においては、誰しもが、セールスの時に悩むポイントになるでしょう。

実際に、解決したい課題とそれに対するソリューションとしてのプロダクトは素晴らしいのですが、「売り方が分からない」という声もよくお聞きします。

たくさん苦労をして、汗をかいて作った商品が、なかなか受け入れられない…これは医療福祉など、レガシーな業界をターゲットにするほどに、「見たこともない」 「聞いたこともない」 「本当にそんなことができるの?」というハードルが多分に発生し、難易度が非常に高くなります。

がむしゃらに片っ端から売っていくにしては、労力がかかりすぎる上にリソースもたくさんあるわけではないので、効率的に顧客拡大を目指したいという中で、顧客拡大が上手く機能しない以上は次のプロダクトにも手を出しにくい上に、後段で記載するバリエーションにも大きく左右してくるので、非常に大きな悩みの種なのです。

✔ どこに自社の価値を乗せるのか

有形商材を取り扱っていくと、顧客からの見え方としては、“メーカー”という形になりがちなのですが、企業のミッション/ビジョンから考えていった時に、“メーカー”という見られ方で業界内のブランド認知を図りたいわけではないということも悩みとしてよくお伺いします。

一般的に言われるアングリーカーブからスマイルカーブに変りつつあるという話がこの議題を考える上で重要になります。

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引用:日経XTECH(第4回:スマイルカーブと逆スマイルカーブ

時代の流れとしても企業の収益の取り方はスマイルカーブ型になってきている中で、自社としてどこに価値を乗せるかをまずは考えることが大事になってきます。

企画・ 設計・ 開発に価値を乗せる場合は、企画屋として、ないしは、見方を変えると、業界のデファクトスタンダードを作る“規格屋”として価値を乗せていくといった思考が必要です。

自社のブランディングやプロフィットをどこで生むのかを左右していくので、まずはここを定めることが非常に重要だと言えます。

また、補足的ではありますが、例えば、製造を大手企業に委託して行っていた場合はどうなるでしょうか?

販売していく中でのレベニューシェアモデルでプロフィットを分配することが多いことを踏まえると、顧客にとってどこが価値になっているのか/自社としてどこが価値なのかという点を製造委託の企業としっかりとすり合わせておかなければ、あとから振り返ると、「自社の労力に対してレベニューシェアで獲得するプロフィットが見合わない」という話になりかねません。

このような観点からも、自社の価値を乗せるポイントを明確にし、スタンスを張ることは非常に重要なポイントになるのです。

✔ バリエーションが上がらない

最後に、ベンチャー企業の最も大きな悩みの種であるバリエーションについてです。

とくに有形商材ベンチャーの場合は、先に述べた顧客拡大の難しさという観点も含まれる上に、資金上、製造原価も発生します。

利益確保の難易度が高く、営業コストの観点から見ても、少ないわけではないため、スケールへのアクセルを踏みにくいという事態が起こるのが特徴的です。

なので、調達をして…という形でアクセルを踏むための資金調達を図るのですが、先に述べたように、これまでのトラクション(実績)の観点から、なかなかバリエーションが上がらずに、大きな金額の調達がなかなかできないのです。

また、そのような状況であるので、デッドファイナンスの難易度も非常に高いのが、悩みを増幅させるポイントだと言えます。必要な調達金額とバリエーションが見合わないために、大きな金額の調達をしようと思えば、自社の持ち株比率を大幅に下げて調達する形になってしまうということが、企業をグロースさせていく上での、最大の難所だと言えます。

これらの悩みに対して、次章で打開ポイントを紹介したいと思います。

-プロダクト拡販におけるポイント

✔ 事業で打ちたい布石を明らかにしてイノベーター層を早期に獲得すること

この記事の読者の皆様にはもう当たり前かと思いますが、なによりも、初期ユーザーとしてイノベーターを発掘することがとても重要です。

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引用:VentureTimes

例えば、ターゲット業界のTOP20社や、業界内にある協会の理事役員が属する企業への導入など、影響力のある企業に対して導入をし、確実に導入効果実績を作ることが重要です。

どの商品でも同様に言えることですが、導入の効果がどの程度生まれるのか?/それが投資金額に見合うのか?は企業側の関心事です。

知名度のある企業が入れている

導入効果があるという安心感・実績を作る

信頼できる商品/企業であると認知される

上記はとても重要となるのです。

そのためイノベーター獲得の一つの手段としては、実証実験等で、無償で商品導入を行うなども効果的な一つの選択肢です。

まずは、この事業で何を得たいか(ファーストプロダクトの場合、影響力のある人とのコネクションや自社に対しての協力姿勢で協業できるようにしたいなど)を明確にします。

その上で、顧客開拓の視点では、業界の商習慣やCACも加味しなければなりませんが、有形商材の場合は、早期にプロフィットを確立することが難しいことを加味して、得たい事項を獲得するためにどうすべきかという観点から考えるのが最適な手段の選び方です。

そのため、プロフィットを生まなければならないということに視点が狭まるのではなく、事業で獲得したい事項から手段を選ぶようにすると良いでしょう。

-事業展開の考え方

✔ ありたい姿・もたらしたい世界観から逆算すること

ありたい姿・もたらしたい世界観から逆算することは起業家の方であれば、誰しもが行っていることだと思います。「そんな当たり前のことを書くのか?」という声も聞こえそうですが…

しかし、重要なポイントなので改めて触れたいと思います!

ありたい姿(企業3.0)から逆算した時に、3.0の姿を実現していくためには、どのような要素を満たなければならないかという視点から、必要な事業を洗い出し、いつ、どのタイミングでそれらの事業を手がけていくのかという設計が非常に重要なポイントとなります。

3.0の姿から逆算することで、各事業において獲得しなければならない事項は何かが研ぎ澄まされるとともに、そのボーダーラインに達すれば、次なる事業への展開サインとして捉えることができます。

そのため、企業3.0を描くことと、そこから逆算して、どのような事業でどのようなアセットを獲得し、3.0へと成長していくのかをまずは描き、次なる事業展開を考えていくことが非連続に企業がグロースしていく上での要諦です。

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一方で、先にも触れているように、資金面での厳しさがある中で、次なる事業を仕掛けるにしてもキャッシュが持たないということは往々にして起こりうることかと思います。

そこで重要なのは、キャッシュを持たせるための事業という位置づけも必要だということです。

世界クラスの事例ではテスラが挙げられます。

2050年に火星に100万人を送り込むことを掲げ、それに向けて、現在は自動車のテスラとスペースXを主に事業として手掛けています。

「火星に100万人を送り込む」という目標から考えた時に、宇宙事業であるスペースXは直結するように思えますが、テスラという自動車事業はどうでしょうか?

プロダクト開発上で、火星に100万人を送り込むための技術開発も行われているという捉え方とともに、しっかりと売上を立てて、キャッシュを持たせる役割も担っているのではないでしょうか?

ただ、この考え方だと、すでに軌道に乗っている既存プロダクトがあり、新規事業の場合には機能しますが、まずファーストプロダクトのための役割を担うプロダクトを開発したとしても、同じように拡販するところでつまずきますよね。

では、大手企業の開発に協賛しアドバイザリーのポジションで参入するのはどうでしょうか?

ターゲット業界に対して新規参入したい大手企業が、自社の知見を求めて、協業や商品企画/開発の委託が発生することは往々にして有りうるシチュエーションかと思います。

このような手法を活かし、キャッシュを持たせながら自社のありたい姿(企業3.0)に向けた歩みを進めていくということが、必要な考え方なのです。

-まとめ

最後に本記事のポイントをまとめると、要点は4つです。

① プロダクト拡販において初めに考えるべきは、この事業をもって何を得たいか(プロフィット/業界TOP20の実績 etc)を明確にすること

② 事業によって得たい事項を達成するために、追うべき優先順位を定めること(プロフィット/業界TOP20における導入率 etc)

③ ありたい姿・もたらしたい世界観を解像度高く描き、それを実現するための要素分解を行い、どのような順番でクリアしていくのかを明確にすること

④ 資金的都合を解除するためにキャッシュを生むための事業を定め、目下のキャッシュが理由で、事業のアクセル/グロースや新規展開を阻まれることがないように考えておくこと

「世の中や業界に多大なるインパクトを残す可能性にあふれたプロダクトが、目下のキャッシュを理由にスケールしていかないことは、その企業にとってだけでなく、業界・日本にとって不幸なことである」

そのような理由で、日本や業界の変革に歯止めがかからないよう有形商材ベンチャー企業がいかにスケールしていくかは今後も研究していければと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。
皆さまの事業を考える上での一つの参考になれば幸いです。

■この記事を書いたひと
坊将徳(ぼうまさのり)
リブで新卒3年目/ベンチャーグロース・新規事業開発が得意領域


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