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新規事業の立ち上げ成功プロセスとフレームワーク6選

こんにちは、CRO Hack編集長の松尾(@daisukemo)です。

企業が新規事業を立ち上げるとき、どれだけスモールスタートしようとしてもある程度のコストとリソース、そして軌道に乗せられないといった失敗のリスクが伴います。

コストやリソースを投下する以上、失敗のリスクをできるだけ下げて新規事業の構想や立ち上げをしていきたいと考えるのが普通でしょう。

そこでこのnoteでは、新規事業を成功に導くためのポイントや立ち上げプロセス、活用できるフレームワークなどを、私たちならではのノウハウも加えた上でご紹介します。

- 新規事業の立ち上げについて押さえておくべきポイント

新規事業を立ち上げる目的は、企業によって様々です。

より大きな企業へと成長させたい、既存事業から横展開をしたい、トレンドに乗って短期的にキャッシュを作りたい、ジャストアイデアから実際に展開させていくことになったなど。

なかには、昨今の新型コロナウイルスによる自粛などの影響から、どうにか経営に活路を見出そうとしている方もいらっしゃるかと思います。

こうした多様な目的が新規事業の立ち上げにはありますが、成功させるためのポイントとしてすべてに共通しているのが、”自社の商材と蓄積されたナレッジを踏まえたうえで、それが有効活用できる市場を選ぶこと”です。

もちろん、まったく開拓されていない領域や自社が関わってきていない分野で新規事業をスケールさせることができないわけではありません。
しかし、すでに自社で一定の成功を収めている事業があるにもかかわらず、それとは無関係ともいえる領域に踏みこんでいくのは非常にリスキーで、ましてや大きなリターンが待っているのかも不透明です。

傷を負ってでも踏み込んでいくべきとアクセルを踏める巨大な資本とチャレンジ精神を持った企業もありますが、この時代でその選択をとるべきといえる企業は多くないでしょう。

新規事業の立ち上げは、自社の経験やナレッジを最大限に活かし、市場規模やトレンドを踏まえた上で綿密な調査を行い、戦略に落とし込むことで成功の確率を高めることができます。

【新規事業の立ち上げについて押さえておくべきポイント】
・自社が参入しやすい市場を見つけること
・将来的な市場の拡大やトレンドを併せて見極めること
・自社内部の知見に頼りすぎて事業を選ぶことはリスクである
・市場のトレンドだけを追い求めることもリスクである

この4点を踏まえた上で、この先を読み進めていただければと思います。

- リスクとコストを見極める新規事業の立ち上げプロセス

社内で新規事業立ち上げの意思決定をしてから、絶対に持ってはいけないマインドが”是が非でもこの事業を立ち上げまで持っていく”ということ。

新規事業の立ち上げに携わる以上、絶対に成功させるとの思いは必要不可欠です。しかし、成功する可能性が極めて低いと感じたときや、コストが膨大すぎてペイできる見通しが立たないと判断したとき、それはその後も事業立ち上げを進めてはいけないタイミングかもしれません。

企業としても、いち担当者としても無謀なチャレンジにしないためには、リスクやコストを見極め、正しい立ち上げプロセスを知っておく必要があります。

現在、事業の立ち上げプロセスとして主流なのは、できるだけスモールスタートで事業を立ち上げ、然るべきタイミングで大きく舵を切ってグロースさせる”リーンスタートアップ”という手法です。

リーンスタートアップとは、リスクとコストを抑えた比較的実行しやすい新規事業立ち上げのモデルであり、日本国内外を問わず多く取り入れられています。

リーンスタートアップでは、以下の5つを主なプロセスとして徐々にグロースを加速させていきます。

【リーンスタートアップの5つのプロセス】
1.アイデア(情報)収集
2.事業(計画)の構築
3.サービス化(サービスとしての評価をする)
4.分析
5.改良

1.アイデア(情報)収集
まずは新規事業のアイデアを集めていきます。しかし、ただ闇雲にジャストアイデアを練り出していくのでは、リソースとコストを捨てているのと変わりありません。

事業アイデアを考えたり情報収集したりする上で重要となるのが、冒頭で触れた「新規事業の立ち上げについて押さえておくべきポイント」です。

・自社が参入しやすい市場を見つけること
・将来的な市場の拡大やトレンドを併せて見極めること
・自社内部の知見に頼りすぎて事業を選ぶことはリスクである
・市場のトレンドだけを追い求めることもリスクである

自社プロダクトから有利かつ効率的にグロースできる分野はどこなのか、今の時代に求められるモノやサービスとは何なのか、思いついたアイデアのリスクはどこにどれほどあるのかなど、偏りがないようにアイデアを出して情報収集を進めなければいけません。

2.事業(計画)の構築
集まったアイデアや情報をもとに、それを事業として構築していきます。

中小企業であれば、事業計画の立案なしの口頭ベースで事業の構築を進められるかもしれません、しかし、立ち上げに携わる当事者だけではなく、第三者のレビューやフィードバックを受けるためにも、簡単でもいいので事業計画書に書き起こすのがおすすめです。

リーンスタートアップのプロセスで新規事業を立ち上げる場合、融資を引くことはあまり考えられませんが、目標管理やモチベーション管理、事業の落とし穴や矛盾点に気付けるなど、事業計画書のメリットは多くあります。

事業計画をもとに、利益を作り出す仕組みをアイデアから具体的なものにしていきましょう。

なお、このタイミングでメンバーのアサインや予算の確保、KPIの設定などの細かなアクションも取っていく必要があります。実際にメンバーをジョインさせずとも、どれだけの人数でどのようなポジションが必要なのかをはっきりさせておくことで、必要な予算や収益分岐点が見えてきます。

3.サービス化(サービスとしての評価をする)
事業計画の構築が終わると、実際にその計画をサービス化するプロダクトのフェーズに入ります。

サービスをリリースするまで辿り着いたら、より多くの顧客の声をキャッチアップしていくことが重要です。

実際のユーザーである顧客の声は、今後の分析と改良においてもっとも重要な要素となり、新規事業をグロースさせるためにはレビューやフィードバックを集める仕組みや施策が必要になってきます。

4.分析
事業として利益を生んでいくためには「サービス化できたからOK」というわけにはいきません。

ここで、顧客から収集したレビューやフィードバックを参考にしながら、市場での立ち位置や差別化のために必要な要素は何か、顧客を増やし続けるにはどういった工夫が必要なのかなどを分析していきます。

分析の方法は、この後ご紹介するフレームワークなども活用できます。

なお、これ以上の投資を続けるのか否かといった、厳しい判断のための分析も行なっていく必要があります。

5.改良
分析した結果をもとに、サービスを改良していきます。以降は4で解説した分析とこの改良の繰り返しです。

サービスの改良をしていく際には、のちに重大な欠陥などが見つかったときに備えて、いつどのような改良をしたのかを記録に残していくことをおすすめします。

また、今後の新規事業立ち上げの貴重な参考資料になる可能性もあるため、サービス改良の記録を残すのは重要なポイントです。

-なぜ新規事業にフレームワークが必要なのか

新規事業の立ち上げのポイントやプロセスについて理解したうえで、新規事業立ち上げ時にぜひご活用いただきたいのがフレームワークです。

フレームワークとは、シチュエーションやケースごとに考えるべきポイントをまとめたもので、フレームワークを活用することで効率的かつ正確に考慮すべき点や強み弱みなどを把握できます。

新規事業は計画段階でのプロダクトの良し悪しで事業の結果が決まると言っても過言ではありません。しかし、計画段階では思いついたアイデアを盲信してしまい、裏付けとなるデータや分析が不足したまま熱意だけで突き進めることが少なからずあり、そして鳴かず飛ばずの失敗に終わってしまいます。

そこで、フレームワークを活用して、客観的かつ正確にその新規事業を分析することにより、その計画をより確実なものに、失敗しそうな新規事業アイデアはボツにする意思決定を可能にします。

フレームワークは過去の経営者や経営学者などが考案し、いくつもの企業が活用することで時代を追うごとに洗練されたものであるため、自社のナレッジのみに頼って新規事業を進めるよりもより正確な分析ができます。

新規事業アイデアをより精度の高いものとするため、より収益を得られる形を見つけるため、新規事業で失敗しないためにも、ぜひフレームワークを活用してみてください。

- 新規事業の創出フェーズから使える重要なフレームワーク

新規事業の立ち上げでは、競合他社や市場を測るのに調査や分析を行う機会が非常に多くあります。

その際に、毎回どのような調査・分析をすればいいのかを検討するのは非効率で、また、その方法が適切であるとも限りません。

そのような時に活用したいのが、フレームワークです。以下では、一般的に新規事業の創出フェーズからサービス分析まで活用できる6つのフレームワークをご紹介します。

【新規事業立ち上げの際に使えるフレームワーク6選】
・MVV(Mission Vision Values)
・SWOT分析
・3C分析
・ペルソナ分析
・ポジショニングマップ
・バリューカプセル

これらのフレームワークを適切に活用し、新規事業の戦略や狙い、予測される利益などをある程度「見える化」することがとても重要です。

事業の「見える化」は、企業や事業の立ち上げメンバーにもイメージの共有や意識の統一を可能にするため、新規事業の立ち上げを成功させる上で大切な要素となります。また、のちの分析や評価基準の統一にも効果的です。

・MVV(Mission Vision Values)
MVVとは、Mission(使命)・Vision(未来像)・Values(価値観)の3つを略したもので、理念やビジョンなどを明確にするのに活用するフレームワークです。

Mission:なぜするのか
Vision:どうなりたいのか
Values:どんな意味(価値)があるのか

上記の3点を関係者全員で共有し、同じ方向性をもつことがこのフレームワークの最大の目的です。

MVVは童話の桃太郎に置き換えてみると分かりやすく例えることができます。

桃太郎のMissionは、「大切な村の平和を守る」ことです。
そして、桃太郎にとってのVisionは、「鬼ヶ島にいる鬼を退治して、村の危険をなくす」ことだと言えるでしょう。
その上で桃太郎が大切にしなければいけないValuesは、「強大な鬼を退治するための仲間とチームの結束を大切にする」ことに尽きます。

鬼退治という大きな目的のために、MVVを明確にして仲間と共有したことで、桃太郎は困難を乗り越えて目的を果たせました。

企業や新規事業の立ち上げにおいても、売上や成果など目的を達成しなくてはなりません。
しかし、新規事業立ち上げでは、思ったようにいかない時やどのように進めていけばいいのか分からない場面がどうしても出てきてしまいます。

その時に、意思決定や行動の指針として、このフレームワークを通じて明確にした理念やビジョンに立ち戻ることで、やるべきことが見えてきます。

・SWOT分析
SWOT分析は非常に有名なフレームワークの一つで、ビジネスの至る場面で活用されています。

SWOT分析とは、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・ Threat(脅威)の頭文字をとった略語で、客観的な目線で自社や自社サービスを分析したい時に活用します。

例として、ハンバーガーで有名なマクドナルドで簡単にSWOT分析をしてみましょう。

【マクドナルドの簡易SWOT分析】
Strength(強み):世界的に知られるブランド力、あらゆる地域をカバーできる店舗展開と経営力
Weakness(弱み):低価格競争による利益の縮小、多店舗経営による安全面でのリスク
Opportunity(機会):ファストフードの低価格・高回転に加えて集客に強みのあるカフェ形態の展開
Threat(脅威):低価格競争の激化、他産業から類似サービスへの参入、内食志向や健康志向の高まり

マクドナルドでSWOT分析を行うと、上記のようなものが挙げられます。

Strength・Weakness・Opportunity・Threat、この4点を言語化することで、他にはない利益を生み出す新規事業を生み出すヒントになり得ます。

・3C分析
3C分析も非常に有名なフレームワークの一つで、自社や競合他社の強みと弱みを見極めたい時に活用します。

3C分析はよくSWOT分析と混合されがちですが、3C分析は先に顧客を分析した上で自社や競合他社を分析するという点で異なります。

1.Customer(顧客・市場):顧客のニーズや要望、市場価値など
2.Company(自社):自社の強み・弱み
3.Competitor(競合他社):どこが競合になるのか、他社の強み・弱み

この1〜3の順番で、分析をしていきます。
分かりやすいように、ここではZOZOTOWNを例えに簡易分析をしてみましょう。

【ZOZOTOWNの簡易3C分析】
1.Customer(顧客・市場):若・中年層の性別を問わない人々が仮想のショッピングモールのように多様な服を求める。アパレルECサイトの市場規模は拡大中。
2.Company(自社):国内での圧倒的な知名度とサイトとしてのブランド力を備えている。膨大なブランド数とジャンルの服を取り揃えているが、特定のブランドで取り扱いのない商品もあり、他アパレルECサイトに比べて会員の平均年齢が高い傾向にある。
3.Competitor(競合他社):特定のジャンルやブランド特化型のECサイト、海外の希少なブランドを輸入売買できるアパレルECサイト。幅広いユーザーの獲得には向いていない。

上記のような分析結果を得ることができます。

・ペルソナ分析
ペルソナ分析とは、想定の顧客像(ペルソナ)に対して徹底的な調査と分析を行い、どのようなニーズがあってどのようなサービスが刺さるのかを明確にします。

3C分析のCustomer(顧客・市場)にあたる部分を徹底的に調査するのが、このフレームワークです。

ペルソナのニーズを想像や会議で完璧に捉えるのは難しいため、適宜インタビューやアンケートなども行なっていくと、正確なペルソナ分析が可能になります。

なお、ペルソナ分析は、対象となるペルソナにズレが生じていると全く意味をなしません。定期的にペルソナが正しいのかを確認しながらこまめに分析して、新しいニーズが生まれていないのか等を見直していく必要があるでしょう。

・ポジショニングマップ
ポジショニングマップとは、自社と競合他社がどのような立ち位置にいるのかをわかりやすく可視化するためのフレームワークです。

X軸とY軸に異なる指標を設けるマトリクス型の図を作成し、自社の現在の立ち位置を把握して競合他社に追いつくにはどこを埋めればいいのかを明らかにします。

ただし、X軸とY軸の指標を自社の自信のある要素で設定してしまうと、自社が競合他社よりも優れているという結果しか出ないため、客観的にどのような要素が市場で生き残るには必要なのかを分析するのが重要です。

そのため、3C分析やペルソナ分析などのフレームワークも同時に活用していくことで、より正確なポジショニングマップを作成できます。

・バリューカプセル
ここまでで紹介してきたのは一般的なフレームワークですが、様々な企業の新規事業の開発をお手伝いしてきた私たちが実際に使っているバリューカプセル(VC)というフレームワークを最後にご紹介します。

VCは私たちが独自に考え出した、新規事業の創出におけるアプローチであり、実際にコンサルティングの現場で着実な成果を出してきました。

一般的なフレームワークで当てはめると市場や競合、自社の強みや弱みというものは時代や環境によって左右されます。
さらに、自社の強みから新規事業を打ち出そうと考えるあまり、過去の成功体験にとらわれて既存事業の延長線上になってしまう可能性も否めません。

そのなかでVCというアプローチは、自社のあらゆるアセットから着実に成果を出せる新規事業のタネを生み出すモデルです。

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VCについては「新規事業開発-事業をつくりだすバリューカプセルの見つけ方」という記事で分かりやすい事例なども含めて詳しく解説していますので、併せてチェックしてみてください。

- 新規事業の立ち上げで陥りやすい問題と失敗例

ここまで、新規事業立ち上げのポイントやプロセス、活用すべきフレームワークなどを解説してきましたが、最後に新規事業立ち上げでよく発生してしまう問題や失敗例を簡単にご紹介しておきます。

新規事業の立ち上げに成功すれば、利益を生み出す会社の新たな収益柱として期待できるのはもちろんですが、立ち上げた新規事業をすべて成功させるのは現実的とは言えません。

たとえ誰もが知っている大企業が、どれだけ巨大な資本とアイデアを詰め込んだ事業を立ち上げたとしても、失敗に終わって巨大な損失のみが残ることも珍しくありません。

そのため、資本力のない中小企業では、特に無駄な投資を行わないためにも失敗のケースを熟知し、避ける動きをしなければいけません。

新規事業の立ち上げで失敗するケースとしては、以下のようなものが主に挙げられます。

【新規事業の立ち上げで失敗するケース】
・参入する市場のニーズやターゲティング(ペルソナ)を間違える、読みが甘い
・事業計画が甘く、予算やリソース不足によって運営が立ち行かなくなる
・事業としてのマネタイズがうまくいかずに新規事業が頓挫してしまう
・事業運営を継続するための分析や評価ができる人材の不足
・新規事業における現実的な目標が立てられずにモチベーションの低下や、投資額の回収がみえず事業の打ち切りが決定してしまう

こうした問題を解消し、新規事業立ち上げの失敗を防ぐためにも、上記で解説したプロセスやビジネスフレームワークを活用することが大事です。

- まとめ

【新規事業の立ち上げで失敗しないために】
・自社の経験やナレッジが活かせる領域で立ち上げる
・トレンドに乗ることは重要だが、トレンドだけで判断するのは危険
・適切なプロセスを踏んでスモールスタートさせる
・フレームワークやバリューカプセルを活用して、客観的な視点を持つ
・失敗の事例を知って、それを避ける動きをとる

今回の要点を簡単にまとめました。上記を見ると、新規事業の立ち上げは慎重に進めていくのが正解だと感じられるかもしれませんが、そうとも限りません。

特にトレンドに乗って新規事業を立ち上げる場合においては、他社との競争を考えればスピード感をもって立ち上げ、先行者優位のポジションをとることが勝ち筋でもあります。

スピード感をもって立ち上げるべきなのか、慎重にじっくりと作り込むべきなのかを適切に判断するためにも、自社の理解から市場調査の方法、事業立ち上げに関するプロセスとフレームワーク、バリューカプセルの活用がポイントになります。

またこのような考え方は、新規事業の立ち上げ以外にも有効です。
今の事業に行き詰まりを感じた時においても、自社のアセットや市場を改めて分析・抽出することで、打開策が見つかることもあるでしょう。

ぜひ、様々な場面で活用してみてください!


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