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B2Bセールスの成約率を2倍にする“AI-ready化”とは?-今すぐ始める!頑張らない営業DXのススメ

こんにちは、CROHack の松尾(@daisukemo)です。

リブ・コンサルティングから昨年「LiB Global Marketing X」(以降、GMX)というマーケティング・セールス専門の研究機関が発足しました。
そして、なんと!日本を代表するトップマーケター神田昌典さんが所長(Chairman)を務めています。

GMXでは、世界中のマーケティングやセールスの知見、最新情報を国内で紹介したり、それらを実際に検証し、最先端のマーケティング手法を日本企業にフィットする形で開発し提案しています。

今回は、所長(Chairman)の神田さん自ら、GMXフェローの森さんが現在進める営業DXの最新の研究成果について、インタビューしました。

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-営業DXは日本企業にどのような課題解決をもたらすか?

 神田:営業DXの研究を、なぜ今、進めているんでしょうか?

:企業が持続的に成長していくためには、新規顧客の開拓は不可欠です。一方で昨今、デジタル化など、あらゆる変化が急速に進み、事業自体もどんどん変わっていかなければなりません。

ですが、今日の日本企業では、既存の組織や人材が新しいマーケットや顧客開拓手法にうまくアジャストできていないという課題があります。このギャップを、データやAIを活用して解決できないかというのが、今回の研究の目的です。

神田:そうですね。実はこの研究が始まったのが、「The Revenue Acceleration Rules」という一冊の本からでした。

ここに書かれていたテーマというのが、まさに森さんの「既存の営業組織と新しいマーケット・顧客開拓手法のアジャスト」であり、昨今の日本企業でも課題になっています。

これをアカウントベーストマーケティング(以降、ABM)の手法とAIの予測技術を組み合わせて、一気に解決していこうということで、研究を進めてきたんですよね。
企業の“AI-ready化”こそが、持続的な成長に重要であるということで。

●AI-ready化とは?
2018年12月に内閣府の「人間中心のAI社会原則検討会議」で、AIをより良い形で社会実装し共有するための基本原則となる「人間中心のAI社会原則(案)」を策定。
A. 汎用人工知能に対するReadiness
– 議論があってもよいが、優先度は低い
B. デジタル技術が隅々まで行き渡った社会に対するReadiness
– 現代社会の根幹に対する脅威の可能性
– リテラシー、社会の仕組みの両面で、Readinessの議論が必要
C. 統計的機械学習を応用したシステム開発に対するReadiness
– 工学的観点・契約的観点からの議論は既に始まっている

引用元:内閣府 人間中心のAI社会原則検討会議「AI-Readyとは?」

:特に日本企業では、新しい市場や手法が出てくるたびに、新しい人を雇うのは難しく、いかに新しい状況を今の組織にフィットさせていくか、ここの解決策にAIが非常に有効だと考えています。

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神田:そこで、GMXでは実際にリブ・コンサルティングのコンサルチームをショーケースにしています。ABMにもとづき、既存顧客/未取引企業を問わず、誰がどの企業にアプローチすることで成約率が上がるか、自社のコンサルチームのAI-ready化に着手されたわけですが…そもそもリブ社でも同じような課題感はあったんですか?

:そうですね、われわれの場合も、顧客から求められるコンサルティング支援の内容が急速に変化しています。デジタル系のコンサルティングや事業開発の支援も増えています。クライアントの業種や規模、課題に多様化が見られ、組織自体も大きくなる中で、営業の型化がますます難しくなりつつあります。

一方で、顧客から引き合いがあった際、その案件担当を決めるプロセスが、一次窓口から適任と思われる部門に、そして、その部門長から適任と思われるコンサルタントに…と、人の経験則に基づいたマッチングになっています。

現在、ミスマッチが起きているわけではないですが、ますます複雑化する営業環境、そして事業の拡大を考えた時に、属人的な判断だけではなく、データに基づいて最適解を出すということを、今のうちから準備しておかなければならないと考えています。

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-営業組織のAI-ready化 4つのステップ

神田:なるほど!実際にどのようにAIの予測技術をコンサルチームにインストールしたか、詳しくは4月19日の研究報告会を兼ねたオンラインセミナーでも、紹介すると思いますが、ここでも簡単に解説お願いします。

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:そうですね、では、まず弊社のAI-ready化のステップからお話します。

03_営業のAI-ready化推進の全体像

AI-ready化の目的は、今の戦力のまま、環境変化に対応して、持続的に成長していくことです。ゴールとしては、営業戦略策定から実行までとして、データやAIの活用によって最適化が行われ、組織全体で営業効率が向上している状態を目指しています。

大きなステップとしては、①AIのモデル開発、②その後にトライアルの施策実行、③そして業務への組み込みを進め、④最終的には自動化する流れとなります。今回は、初めの①AIモデル開発に取り組んだところです。

さて、モデル開発にはAI技術の中でも機械学習を使います。機械学習とは大量のデータからパターンを見出し、そのパターンにもとづいて、新たな予測結果をAIにアウトプットさせる技術です。

04_AIの定義について

機械学習には、教師あり・教師なし・強化学習の3つがありますが、今回はもっとも一般的にビジネスで活用される「教師あり機械学習」を活用しています。

05_機械学習の類型

さらに、教師あり機械学習では、2つのフェーズがあります。学習フェーズでは、大量のデータセットをAIに学習させ、パターンを抽出します。そして、予測フェーズでは、そのパターン抽出できた学習モデルに、新しいデータセットを食べさせ、予測結果を出すという仕組みです。

06_教師あり機械学習の基本

-モデル開発の鍵は入念な課題設定と地道なデータ生成

以上が、機械学習の概要ですが、今回は、2か月という超短期スケジュールでモデル開発を行いました。前半はほぼ課題設定とデータ調達で、実際の開発はラスト1か月で行ったところです。

07_AI-ready化 フェーズ1

神田課題設定とデータ調達にかなり時間を割いたんですね?

:そうなんです、初期の課題設定とデータ調達が最も重要で、疎かになるとなかなかいい示唆が出ず、逆に手戻りが多くなってしまうこともあります。

:そして、スプリント1~3をアジャイル分析で進めます。データを取得し、きれいにした後に、名寄せや統合を行います。整形したデータをモデルに食べさせていくと、パターン抽出できたモデルができあがります。

このモデルの精度をいったん評価して、さらにもう一度、同じサイクルを回して徐々に精度を上げていきます。一番手間がかかるのは、データのクレンジングや名寄せ・統合で、非常に泥臭い作業です。

08_アジャイル分析のサイクル

主に今回、使ったデータは5つで、名刺データ、WEBから獲得したリード情報、社内の受注データ、企業の属性データ(事業規模や社員数など)、そして忘れてはいけないのが、社外データだけではなく、社内の人材特性データです。

09_調達データ

-AI予測で明らかに。誰がどの企業にアプローチすれば成約率は飛躍的に高まるか

今回は、これらのデータから2つの予測結果をアウトプットさせました。

1つめは「部署単位の成約予測」です。これは過去の受注データをもとに、どういう企業が成約につながりやすいかという予測を部署単位で出します。

2つめの「最適人材タイプ予測」では、どういう企業のどんな案件がどういった人材に適しているかという予測を出します。

10_AIを活用した営業戦略分析

2つの予測を組み合わせることで、どの企業が成約しやすく、誰がアプローチすればいいかという情報が最終成果物として出せるのです。

神田:それは素晴らしいですね!このモデル開発で明らかになったことを具体的に教えて頂けますか?

:成果として明らかになったことは、3つあります。まず、どんな企業が自社にマッチするかという全体的な傾向がわかりました。今回は、自社の中でも特定の事業部に絞って、マッチする企業を予測しました。

仮にAという事業部にします。A事業部ではこれまで顧客セグメントを絞っていません。しかし、予測結果として出た傾向は、設立年数の長い伝統的な日本企業、それから設立20年未満のベンチャー企業がマッチするということでした。実際にそういった企業が顧客に多いのですが、特に受注率が高いということがわかります。

11_AI活用によって明らかになったこと1

それから、2つめに明らかになったことです。リード情報はあるものの未取引だった企業の中で、アクションを起こせば成約する可能性が高い企業が個社単位で割り出せました。「部署単位の成約予測」によって、企業毎にどれくらい成約有望であるかスコアが出てきます。

3つめとして、「最適人材タイプ予測」で、社員の特性を8つのタイプに分け、どのタイプのコンサルタントがどの企業に行けば成約有望か予測できるようになりました。

12_AI活用によって明らかになったこと2

このモデルの場合、個社・個人単位で予測可能な点がユニークだと思います。従来は、部門単位や顧客のセグメント単位で営業戦略を立てるのが一般的でしたが、AIを活用することで、個社・個人単位で最適なマッチング予測ができます。これは営業活動全体に非常に大きなインパクトをもたらすと思います。

-コンサルチームのAI-ready化で売上は何倍になるか?

神田:これがリブ・コンサルティングのインフラとなれば、ズバリ売上はどれくらい伸びますか?

:まだ売上への影響は出せていませんが、全体の案件獲得数は2倍くらいにはなると思います。そして、新規リード獲得のマーケティング費用を使わずに、過去に取引のあった企業からの成約になるので、利益率の面でも大きな期待ができますね。

トップコンサルタントがアサインされれば、受注金額は大きくなると思いますが、少なくともこれまで受注できなかったコンサルタントの受注率が飛躍的に上がります。案件さえあれば、成約できる状況が整うわけです。
それから、そのような案件の経験を積んだ結果、これまでアプローチしきれなかった新規顧客に対してアクションをとり始めるので、結果として新規マーケットの拡大も期待できます。

神田:案件と人材のミスマッチが減れば、コンサルタントのストレスも減りそうですね。今回は人材タイプという資質的な要素をあてましたが、たとえばスキル情報をあててもいいわけですよね。そうすると、入社年次にもとづいて、案件を割り振ることもでき、コンサルタント育成にも非常に有効かと思います。

:そうですね。コンサルタント自身が自分のスキルセットに合わせて、習得すべきこと、顧客に提案すべきことが明確になってくるので、成長が早まると思います。2年ほどかかるコンサルタント育成が1年以内で可能になると考えています。

神田:なるほど。ひとつ逸話を思い出しました。ベーカリーレストランチェーンで有名なサンマルクの創業者、片山社長にインタビューした時に、同社の成長の秘密を教えていただきました。

サンマルクの事業は、何皿もあるフルコースをファミレスの金額で出すという非常に難しい業態です。なぜそれが実現できたのかというと、秘密は入社した人材に対して「はじめに与える仕事」にあったとおっしゃいました。具体的には、アルバイト初日に「パンのおかわり」をお客様に伺ってまわる仕事でした。

「パンのおかわりいかがですか?」と聞いて回ると、お客様は笑顔でその人を迎えてくれます。それで仕事が楽しくなってくるのだと。次にフォークとナイフを並べる仕事、そしてまた次と、ひとつひとつ技能がアップしていく階段をみごとに作られたわけです。

もしかしたら、それが今回のようなAI導入によって、個人単位で可能になるかもしれませんね。もはやAIが人間の敵になるのではなく、その人らしさを発揮させるツールになるのではないかと思ってるんです。

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-AIがジェンダーバランスを改善する未来

:おっしゃる通りだと思います。現状はまだ、AIは業務効率化の領域で活用されることが多いですが、実際は価値創出の領域で使えると思います。

これまで人が認知できなかった情報や、理解や記憶することが難しい情報などをAIが吸い上げ、それらをわかりやすく要約したり、可視化することで、人の意思決定や活動をサポートできると考えます。「なぜそういう予測をしたのか」というAIの判断そのものを説明していく「説明可能AI」という研究分野になるのですが、まさにこれが活かせる領域だと思います。

神田:それから、もうひとつ。これまで慣習的に性差や年齢差などで振り分けられてきた仕事領域にも、分け隔てのない機会創出ができるようになりますよね?

:そうですね。性別や年齢よりも「その人自身の能力やキャラクター」が成果に寄与することがデータから明らかになれば、性別や年齢に関わらず、AIが最適な人を推奨していくことで、ジェンダーバランスがとれるようになり、ひいては、どんどん女性や若い人の活躍の場が広がっていくと思います。

神田:将来的には、この人とこの人がチームを組めば、パフォーマンスが上がるという風な仮説も出せるようになるのでしょうか?

:そうですね。例えば、複数のチームを束ねる部長クラスになると、各チームの個別分析までは難しいものです。しかし、チームやメンバーの色々な情報をAIが吸い上げ、これらを要約し、部長にパスできれば、きちんと部署全体を把握できると思います。よりタイムリーで適切な判断を下していくことが可能になりますね。

神田:すごいですね。AI導入によって、マネジメントの注力すべきポイントが明確になり、マネージャーの管理能力が格段に上がるということですね。

そうすると、AI導入における一番の価値というのが、実はモデル化で、先ほど森さんが言った「説明可能AI」、これによって人間の能力が引き上げられていくということですね。

:はい。まさにそこが一番大事だと思っています。

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-AI-ready化における2つの障壁をどう乗り越えるか?

 神田:素晴らしい“未来”が見えてきましたね。実際に、森さんは研究当事者として、未来はどのくらい近いものと感じてますか?そして、そこに至るまでの最大のブロックはずばり?

:そうですね。第一のブロックは「データ生成」だと思います。きちんときれいなデータを作り、蓄積できている企業はまだ少ない印象です。
第二のブロックとしては、「AIとの向き合い方」だと思います。AIがアウトプットした知見や情報を受け入れ、うまく活用できるか、人の気持ちや姿勢の問題です。

神田:技術は既にあり、方法論も学ぶことができる。ただ、きちんとしたデータが生成できるか、これが第一の障壁ですね。そして、これはAIの範疇ではなく、人の手に依ります。つまり、当事者のコミットメント次第で、誰もがほんの数か月で、未来を実践し始めることができるということですね?

:はい。そうですね!

神田:もうひとつのブロックは、AIの言ったことをしっかり受け止め、背景にあるインサイトを読みとり、より人にやさしい会社を目指そうとする“人間側の知性”によると思います。

:そうですね。AIの解釈性はどんどん向上していますが、今はまだ「有用そうなファクト」を突きつける格好です。そのファクトの裏に隠れるインサイトを解釈し、適切なアクションに落とし込むのはまだ人間の仕事です。

今後もしばらくAIが自動化できない部分で、引き続き人間のクリエイティビティが求められるところだと思います。

神田:そうすると面白いのが、ある会社にコンサルタントとして入った時に、まず、そのクライアント企業では、どのようなデータセットを集めてモデル化すればいいかという判断が必要になりますよね。

そこにはデータサイエンティストとしての経験が必要だと思いますし、そのモデルから出た結果に対して、クライアント企業がどう関わるべきかを指南していく立場にもなるわけですよね。
これは、いい意味でコンサルタントと現場企業のコラボが成立しやすい領域になってきそうですね。

:そうですね。AIと人が協同するプロセスは、まだ一般的にはないと思います。人の過去の経験則のみでやるのではなく、AIを活用しながら、あるべき姿から体制を作っていき、アジャイルで運用しながら、常に変化し状況にフィットさせていくことが、組織や事業の発展に非常に重要になってくると思います。

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-GMXが進める営業DX。さらなる今後のチャレンジとは?

神田:今後、このGMXの営業DXの自社研究プロジェクトでは、どんなことにチャレンジしていきましょうか?

:まずは、営業やマーケティングデータの整備ですね。まだまだ自動化に乗せられる状況ではないので、さらに整備を進め収集していく仕組み作りが課題です。

17_LIBにおけるAI-ready化のこれから

とはいえ、いったん予測モデルや成果物はできたので、これにもとづいた人材配置や営業活動を、担当部門の協力を得ながら、実施して行こうと思います。それから、今はまだ特定の部署のみでの展開ですが、今後は全社的に広げていこうと考えています。

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さて、GMX所長(Chairman)神田さんから森さんへのインタビュー対談はいかがでしたでしょうか?

本記事の対談内容は、4月19日に開催されるオンラインセミナー「営業DXの力で顧客離脱を紹介に変える方法」で、さらに詳しく解説します。

当セミナーでは、今後BtoB企業に欠かせな営業のアップデートとして、洋書「The Expansion Sale」が学術的に示す、顧客離脱を防ぐセールスアプローチと営業DXのデータ活用を具体的に解説します。

AIを活用した検証済み営業DXについて、引き続き、両名がお話します。
また、リブ・コンサルティング以外の実践事例についてもご紹介。
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