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組織が崩れやすいリモート環境での武器「ライフウェイク」という武器とは?

こんにちは、CROHackを運営しているリブ・コンサルティングの加藤(@katou_libcon)です。

日頃、成長ベンチャー企業のグロースをお手伝いしているリブ・コンサルティングで組織・人事コンサルティング部門を統括しています。

日々、組織拡大に伴う”成長痛”に悩むクライアント企業の組織改革に明け暮れている傍ら、社内においても年間100名を超える採用面接をしつつ(採用)、それを通過した入社メンバーを受け入れ約半年間のオンボーディングプログラムを管轄し(育成)、創業9期目で180名まで増えた社員の人事評価制度を運用する(評価)ところまで担っています。

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こう書き出してみると守備範囲が広い私ですが、今回は日頃行っていることの一端をご紹介し、皆さんの組織開発および人材開発のヒントをご提供できればと思っています!

-はじめに

さて、今回、少し考えをまとめようと思うに至った背景は何といってもコロナの影響です。コロナ禍においてリモートワーク前提の働き方にシフトする中、どうしても以前と比べると人と人との結びつきが希薄になりがちになり、それに伴い、組織マネジメントの難易度が上がってきているのではと感じたからです。

組織にどうしても「遠心力」がはたらく中、今まで以上に人と人との間に「相互理解」「相互尊重」が求められます。それらの土台があってこそ個人の中に働くパワーが生まれ、結果として組織にも一体感が生まれるはずです。オフィスで直接会って話をする機会が減る中、より「求心力」のある組織づくりをするために、その一つの起点となる有効なツールとしての「ライフウェイク」について発信したいと思った次第です。

-ライフウェイク(Life Wake)とは

さて、ライフウェイクとは何でしょうか?

まずライフは「人生」のこと。そして、「ウェイク」とは、あまり聞き慣れないかもしれませんが「船の引き波」「航跡」のことであり、つまり、船舶や航空機が通り過ぎた”跡”のことを指します。船が通り過ぎた跡は波が尾を引きますし、航空機が通り過ぎた跡はたまに飛行機雲が残りますが、それらをイメージしてもらうといいと思います。

ライフウェイクとは「人生の航跡」を意味し、そのアウトプットとしての「ライフウェイクシート」は、「人生という航海の”軌跡”を出来事や感情の浮き沈みをなぞりながら一本の線で描いたドキュメント」となります。

では実際に「ライフウェイクシート」を見てみたいと思います。

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去年発刊した書籍『モンスター組織』でも実は組織変革のきっかけのツールとして登場しており、そこからのご紹介です。

組織変革に活用される「ライフウェイク」の実例はこちら↓

詳しく見ていきましょう。画像を再掲します。
まず、横軸には「時間の流れ」を置きます。この事例では社会人以降のビジネスキャリアからスタートしているため「入社1年目」「入社2年目」…となり「現在」まで一本の曲線とその過程におけるライフイベントが描かれています。新卒の学生さんに対して採用面接で使う際においては、幼少期から現在まで「小学校」「中学校」「高校」「大学」などの区切りを入れながら整理していきます。

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縦軸には「感情の流れ」を表します。「嬉しい」「楽しい」などポジティブな感情と「悲しい」「つらい」などネガティブな感情の起伏で、その浮き沈みが一本の曲線で表現されています。

その波形を構成しているのは当然(職業)人生を彩るイベントで、その出来事も良いことも悪いことも含めてトピックスとして書き入れていきます。特に嬉しかった出来事・楽しかった出来事には「〇」、悲しかった出来事・つらかった出来事には「×」、そして、自分の人生において大きなインパクトをもたらしている出来事には「★」をプロットしています。

波形に着目してもらえれば分かる通り、人生山あり谷ありなので、線もアップダウンすることになります。一人ひとりの人生がそうであるのと同様、「人生の浮き沈み」たるライフウェイクの波形は人それぞれ個性があり、実に興味深いものになります。

この事例もこうして見ると入社2年目の谷底(逆境)があり、それをバネにして入社4年目で大きな成功体験(順境)につながっていることが分かります。上手くいっている時期と苦難が訪れている時期を繰り返しながら成長を遂げたり成果を獲得したりするのが通常です。

さて、ライフウェイクで一体何が分かるのでしょうか?

まず、本人にとっては作成してみるとそれだけで自己理解が進みます。「自分にとって楽しくて幸福度が高い時はいつで、どういう傾向があるのか」「自分の人生のどん底と言えば…」、これらを見える化して俯瞰して眺めるだけで「自分」という人間の輪郭が少しだけ鮮明になるような感覚を覚えます。

そして、ここがポイントになりますが、他者がそれを客観的に眺めて本人との「対話」を行うとさらに理解は深まっていきます。

「どこが最も嬉しかったのか」

「一体それは何が起こったからで、その時どう感じたのか」

「逆に人生を通じてとても悲しかった出来事は」

「その時あなたはなぜ悲しいと感じたのか」

⇒「そこから分かるあなたの大切にしている価値観とは」

と質問により掘り下げていくことでより深い気付きが促されます。

「現在」は過去の様々な出来事の積み重ねで形成されているはずです。例えば、人に裏切られてきた経験があれば疑い深くなりますし、あるいは、周囲から愛されてきた人は自己肯定感が高まる傾向があるでしょう。

そして、過去の経験とその時に実際に起こった「事実」や「感情」を知ることで相手の現在が多面的、かつ、重層的に理解できます。「ライフウェイクシート」は自己理解や相互理解にうってつけのツールです。

自分や相手の「人生山あり谷あり」だとすれば谷底を乗り越えるジャンプを繰り返してきたかどうかで、この先の人生も谷底に落ちかけるような危機やハードシングスがあった際にジャンプできる力強さを持った人なのかどうかのヒントになります。

谷底を潜り抜けてきた物語を通じてその人の「力量」「最後踏ん張りが効くかどうか」が透けて見えるはずです。

-ライフウェイクの進め方と主な活用場面

さて、ではライフウェイクを活用した「面談の進め方」を見ていきます。シンプルに3つのステップで進めていきます。

① 本人がライフウェイクシートを書く (事前)
② 本人がライフウェイクシートを説明する (面談時)
③ 聴き手が聴く&質問する (面談時)

これだけです。ライフウェイクシートは1時間もあれば書けるのですぐに実践できると思います。

次に、改めてライフウェイクがどのような場面、どのような用途で使うと有効なのか見ていきましょう。主に有効とされる活用場面は2つあります。

1つは「採用」です。主に採用面接の場面で使います。求職者にライフウェイクを事前に書いてもらい、それをベースに「経験してきたこと」、「その時々で感じてきたこと」を深堀りして相手の人間理解を深めていきます。

もう1つは「育成」の場面です。ライフウェイクを活用することは過去の経験を棚卸して、そこからの学びを自省することにつながり、いわゆる「リフレクション」に絶好のツールとなります。1on1においてもよく活用されています。あらゆる階層や年次の方に有効ですが、特に次世代リーダーやCXOクラスの非連続な成長促進に有効です。

「育成」における活用のポイントについては、また次回詳しく見ていきますので、今回は「採用」における活用ポイントを見ていきます。

-採用面接で絶大な効果を発揮するライフウェイク

ライフウェイクは採用面接において絶大な効果を発揮します。

当社リブ・コンサルティングでは、採用面接を実施する前に求職者に事前準備としてライフウェイクシートを作成してもらっています。既に見てきたように、ライフウェイクシートを作成する側も聴き手としての面接官側も、その過程でその人となりがよく分かる結果、通常よりも「相互理解」が進みます。

話は人生全体に及ぶので「時間が掛かり過ぎてしまうのでは?」と懸念されるかもしれませんが、「特に現在の自分に影響を強く与えた箇所」のみに絞っていけば15分~20分もあれば要所を確認することは可能です。その数十分があるだけで相手の理解度は格段に違ってきます。

さて、それではライフウェイクシートを活用した採用面談を効果的なものにするために、特に触れておくべきポイントを2つだけご紹介しましょう。

① 再現性ある強みを発見する
② 感情のスイッチを知る

※原体験から自社とのシンパシーがある点を発見する

まず1点目は「再現性ある強みを発見する」ということです。
前述の通り、ライフウェイクシートには「〇」(嬉しかった出来事・楽しかった出来事)や「★」(自分の人生において大きなインパクトをもたらしている出来事)がプロットされています。多くの場合、ライフウェイクの波形でピーク(頂点)に来ているポイントになります。

そこに着目して相手のどのような強みが発揮されて「〇」や「★」が付いているのかを掘り下げていくのです。(まれに「×」、つまり、悲しかった出来事・つらかった出来事を裏返したところに強みが隠されていることもありますが…)そのエピソードは「社会人1年目の時に同期で1位を獲った」であったり、「大型受注で全社表彰を受けた」であったり、「リーダーとして抜擢され難関プロジェクトを無事成功させた」であったり様々です。

ここでのポイントはその強みが再現性あるものであるか、という点です。たまたま周囲の環境に恵まれて結果が出ただけでは、新たな職場でまた同様のパフォーマンスを発揮することができません。つまり、言い換えると「結果」を導く「根拠」を確認していく必要がある、ということです。

例えば「難関プロジェクトを成功させた」と言う主張一つとってもみても「結果的に成功してしまった」のか「明確な根拠があって成功した」のかは大違いです。そのためには「そのプロジェクトはどのようなチーム体制でやっていたのか?」「実際にあなたがその時やっていたことは?担っていた役割は?」と「結果」を導いた「原因」について焦点を当てていく必要があります。

その点を掘り下げていくことで初めて、その素晴らしい実績が、果たして「本当に当社が求めるレベル感にあるのか」「当社の業務において活かすことのできる強みと言えるのか」についてしっかりと特定できます。このように、採用場面においてライフウェイクを活用することで「再現性ある強みを発見」し、相手と自社とのスキルフィットを確認することができます。

次に2点目のポイントは「感情のスイッチ」を知る、ということです。
上述の通り、波形による浮き沈みは「嬉しい」「楽しい」「悲しい」などの「感情」によって表現されています。

それらの感情が揺れ動いた出来事、エピソードの詳細を聴く中で、「どういう時に喜びを覚える人なのか」「どういう事象に対して憤りを覚える人なのか」に対する理解を深められます。言わば、「感情のスイッチ」を知る作業と言えるでしょう。

例えば、ライフウェイク上のピークとなる出来事の一つが「プロジェクトのチームメンバー全員で団結して頑張ったことが最大の成功体験で、最高に楽しかった!」とあれば、その人の感情のスイッチを表すキーワードは「チームワーク」や「団結」でしょう。きっとそのスイッチを持っている人は新たな職場でもそれらのキーワードに象徴されるような業務や場面で高いパフォーマンスを発揮できるはずです。

このプロセスは本当に重要で、さらに言い換えるならば「本人の幸せな瞬間」「幸福に対する感度」の発見プロセスでもあります。ライフウェイクを元にこの点の理解が深まると、一緒に働く仲間が本当に自社にフィットしているかどうかの精度が格段に上がります。

-さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
アフターコロナ・ウィズコロナのこれからの時代、人と人との結びつきが希薄になりがちだからこそ、「相互理解」「相互信頼」の上で成り立つ組織は様々な場面で高いパフォーマンスを発揮できるはずです!

最後まで読んだ頂いたみなさまに実際にリブ・コンサルティングで使用しているライフウェイクシートのフォーマットをダウンロード形式でプレゼントさせて頂きます!もし書き方や面談・レビューの方法にお悩みの場合はお気軽にご相談もOKです。

ぜひ皆さまも今後の社内メンバーのマネジメントのひとつの武器として「ライフウェイク」を活用してみてください。

▶ダウンロードはこちらから

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■この記事を書いたひと
加藤 有(かとう ゆう)|株式会社リブ・コンサルティング 取締役
コンサルティングに加え、自社の採用・オンボーディング・評価を担う。



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