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「死の谷」とは何か?死の谷を超えるために必要なこととは?

こんにちは、CRO Hack編集長の松尾(@daisukemo)です。

新規事業・スタートアップが乗り越えなければならない障害として、「死の谷(デスバレー)」という言葉がよく使われます。名前から連想されるイメージの通り、決してポジティブな意味の言葉ではありませんが、この死の谷を乗り越えることができずに頓挫した新規事業や倒産したスタートアップは数多く存在します。

そこで今回は、概念の整理と実際の事例をもとに、死の谷を超えるために何をすべきかをお伝えしていこうと思います。

-死の谷(デスバレー)とは何か?

「死の谷」を検索すると、ウィキペディアでは次のように説明しています。
「死の谷(デスバレー)とは、研究戦略、技術経営、プロジェクトマネジメント等において、研究開発が、次の段階に発展しない状況やその難関・障壁となっている事柄全般を指す用語である。」

技術経営の分野では、新しい事業を成功させるまでに「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」の3つの関門があるとされています。そのため、3つそれぞれをご紹介します。

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魔の川とは、研究開発から製品化に至るまでに訪れる関門のことです。研究開発をした技術が市場ニーズにそぐわないと判断され、製品化されず終結したプロジェクトは数を挙げればキリがありません。

死の谷とは、魔の川を乗り越え製品化にこぎ着けた商品・サービスを、事業として発展させていくフェーズにおいて訪れる関門のことを指します。売上を上げるためには、資金や人財などの経営資源を適切に調達、配置することが必要となりますが、そのために投入する資金のケタは研究開発フェーズよりも増えることが一般的です。

売上が立たないと認知が上がらず、認知が上がらないと優秀な人財が採用できず、優秀な人財が採用できないと十分な事業検証やサービス改善ができず…という負のサイクルに陥ってしまい、売上が立たないまま時間だけが経過してしまうのがよくあるパターンです。

上記のようなネガティブループに嵌り、結果として運営資金がショートして事業が失敗に終わる…というのが死の谷を抜け出せない新規事業の行く末となります。

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そしてダーウィンの海とは、死の谷を抜け出し事業として成立した商品・サービスに待ち構える、ライバル企業との競走のことを指します。このフェーズでは競争優位性を築いていく必要があり、この生き残り競走に勝ち残ることで、はじめて事業が成功したと言えるでしょう。

今までの記事で何回か出てきた「0→1(アイデアの事業化)」「1→10(急成長・グロース)」「10→100(安定成長)」に沿ってこの3つを分類すると、「0→1」の段階で訪れる関門が魔の川、「1→10」の段階で訪れる関門が死の谷、「10→100」の段階で訪れる関門がダーウィンの海です。

-死の谷から抜け出せなかった事例

新しい事業は、安定成長フェーズに持っていくまでのいわゆる1→10のフェーズが最も難しく、だからこそ死の谷は非常に深いと言えます。

上でご紹介したネガティブループ以外にも、実際のところは様々な要因によって死の谷から抜け出せないケースも存在します。そこで、実際に死の谷から抜け出せず、事業化が上手くいかなかった事例をいくつかご紹介します。

-①CHIP

2018年8月にローンチされ、ファンクラブ作成アプリとして最終的に4万人以上のユーザーを集めたCHIPは、翌2019年5月に惜しまれながらもサービス終了となりました。

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ファンクラブ作成アプリの「CHIP」がクローズ|TechCrunch

運営元である株式会社RinacitaのCEO、小澤さんが自身のnoteでクローズについて語っていた内容を引用すると、

1)課題設定が甘かった
2)本来の目的とズレてしまった
3)軌道修正≒新規だった

という3点が主なクローズ理由とのことです。クリエイターとファンをつなげるアプリとして、クリエイター側の課題解決はできていたものの、ファン側の課題をしっかりと検証できないまま走ってしまったことや、Nice to HaveではなくMust Haveに一点集中すべきであったことを敗因の一つとして挙げられていました。

-②Driver

Driverというサービスは、臨床研究という分野でがん患者と被験者をマッチングさせるアプリとして米国で注目されていましたが、資金不足という原因により正式なローンチからわずか数週間でサービスは終了、会社も倒産となってしまいました。

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がん患者と被験者のマッチングアプリがクローズ|Driver

テクノロジーが発展している臨床の分野で、新しいビジネスを成功させるにはハードウェアとソフトウェア、両方に対し積極的に投資する必要がありました。サービスを利用するがん患者に対しては前払い金として3,000ドル、月額料金として20ドルという料金形態としていましたが、資金調達が上手くいかず、結果としてキャッシュ不足に陥った形です。

このように、資金調達に失敗して倒産したスタートアップも沢山ありますが、資金調達に頼った死の谷の乗り越え方は今後ますます難しくなると考えて良いでしょう。

-資金調達難の時代における死の谷の乗り越え方

死の谷を抜け出せない原因は、売上不足やマネジメントの複雑化などさまざま挙げられますが、中でも大きな要素はやはり上の事例でも挙げたようにキャッシュの不足です。

だからこそ資金調達の可否がこれまで重要とされてきたのですが、ここ最近の動きとしては、コロナの影響で資金調達がより難しくなってきている状況にあります。STARTUP DBの調査では、2020年(1月~4月)に資金調達を実施した企業は前年比で180社ほど少ないというデータとなりました。

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引用:新型コロナウイルスの拡大による、スタートアップの資金調達への影響|STARTUP DB

そのため、今後は資金調達に頼るという以外に、収益を伸ばすという部分に今まで以上にフォーカスし、一刻も早く売上を伸ばすことが重要になると考えています。

以前の記事でもご紹介しましたが、収益を伸ばすための事業の急拡大や継続的な成長に必要となるのは、プロダクトマーケットフィット(PMF)を複数回起こすことです。PMFを複数回起こすためには、足元を固めて、ユーザーにとってMust Haveであり続けるためのプロダクトのアップデートを繰り返す必要があるでしょう。

PMFについては「死の谷を乗り越えるために求められるCROとしての役割」の記事で詳しくご説明しています。

-死の谷を乗り越えるために求められるCROとしての役割

PMFの話とも関連するのですが、プロダクトのアップデートを繰り返し死の谷を乗り越えるには、営業やマーケティング、カスタマーサクセス(サポート)が「収益」という共通の目標を持ってスピード感のあるPDCAを繰り返すことが求められます。

そして、その動きを推進するためには事業部を跨いだディレクションができる存在が不可欠です。営業やマーケティング組織がそれぞれ違ったKPIを追うべくそれぞれの戦略を実行するのではなく、「収益」を伸ばすという一点をミッションに俯瞰的に各組織を統括する存在。その存在を、私たちはCRO(Chief Revenue Officer)と呼んでいます。

CRO的な存在がいるかいないかで、企業の成果創出のスピードは格段に違うと言われています。

CRO的な存在がいることで、具体的にどのような目標を立て、どのようなスピード感でどのような戦略を持ってグロースに成功したのかという事例を、以下の「OYO LIFE 躍進の舞台裏」のイベントレポートにてご紹介しています。

死の谷を乗り越えるためのヒントを得れる内容となっていますので、下記の人気の関連記事も是非ご覧いただけますと幸いです!


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