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需要創造プロダクトを生み出す経営者の見ている世界とは?

こんにちは!CROHackです!

今回は、市場がない中で市場を作るところからスタートする「需要創造プロダクト」についてお話しします!

まだまだ認知も需要もない状態から新しいプロダクトを生み出す経営者はどんなことを考えているのか?なぜ挑戦を決めたのか?どう闘っていったのか?

そんな観点で、実際に需要創造プロダクトを実現した2社を例に取り上げ、深ぼっていきます!


需要創造プロダクトとは何か?

需要創造プロダクトとは、マーケットがない中で、マーケット自体を作りながら広げていくプロダクトのことを指します。

相対する存在としては、マーケットがある中でどう競合からシェアを奪うか、を考える「シェア奪取型プロダクト」が挙げられます。
このようにライバルがいれば何を考えるべきかはわかりやすいですが、ライバルがいないと余計にいろいろなことを考えねばなりません。

例えば、需要創造プロダクトの難しさの一つとして、マーケットの中での立ち回りがあります。

市場の拡大とポジションの確保の両軸で動く難しさ

プロダクトの作り手は、ファーストムーバーとしての地位確立をしつつ、セカンドムーバー/サードムーバーを市場参画させることで、マーケットを拡大させながら相対的なシェアの確保もしなければなりません。

この、マーケットを作っていく、ある種「競合を作り」つつ、その競合に「負けないよう闘っていく」という二重の戦い方が必要なのが、需要創造の難しさであり面白さともといえます。

今回は、実際にマーケットの無い中でプロダクトを生み出し、成功を収めつつ今なおアグレッシブな挑戦を続ける2社をケースとして扱いつつ、需要創造プロダクトにおける戦い方についてご説明します!

どのようにプロダクトが生まれていくのか?
~①atama plusのケース~

atama plus 株式会社は、稲田大輔氏によって2017年に創業し、主力商品である「atama+」は、学習のパーソナライズ(個別最適化)にチャレンジしたAI教材です。

学習をパーソナライズするAI教材「atama+」

この「atama+」は、個々の得意不得意領域を特定して1人1人に合わせた生徒専用の学習カリキュラムを作り、全員が最適な勉強をできる、という学習のパーソナライゼーションを目指しています。
最近では、atama+を学習塾に提供するのみならず、オンライン模試や大学での活用(入試制度・入学前教育など)にも事業が広がっています。

なぜこの市場にチャレンジしたのか?

本サービスのローンチには、創業者である稲田氏の「笑顔の総量を増やしたい」という人生のテーマが深く関わっています。

「どうすれば人の笑顔を増やせるのか?」という問いを立てる中で、”経済的に豊かだが、幸福度は低い”といわれる日本とは対照的に、”経済的に貧富の差は激しいが、幸福度は高い”といわれるブラジルに着目します。

そして、ブラジルへの留学・赴任を経て文化に溶け込む中で「ブラジル人の幸福度が高い理由は幼少期から学校や家庭で養われた自己表現力の高さにある」という確信を持ちました。

「幼少期の過ごし方を変えれば人々の笑顔の総量を増やせるはず」

という結論にたどり着き、教育事業に着目することになったのです。

当時日本は教育市場で世界3位の規模を誇っており、インターネット普及率でも高い水準にありました。しかし、「EdTech」という言葉自体はまだ普及しておらず、実際にテクノロジープレイヤーもほとんど存在していない状態でした。

また、教育の多くは基礎学力の習得に時間が割かれており、自己表現などの「社会でいきる力」の習得に時間をかけるには先生も生徒も忙しすぎるという状況もありました。「基礎学力」も「社会で生きる力」もどちらも大切。

テクノロジーを活用して、基礎学力の習得にかかる時間を短くし、社会でいきる力を養う時間をつくることができれば、両立ができるのではないか。
そんな想いから、「atama+」は生まれたのです。

国民の総笑顔量」というイシューが決まったうえで、解決の方向性が絞られていった、という流れだったのです。

この市場をどう見ていたのか?

atama plus 株式会社創業時、稲田氏は、自身が学習塾のアルバイト講師を経験しながら、「教育がパーソナライズされていない」ことを肌で痛感していました。

生徒1〜2名に対し、先生が1人ついて勉強を教える「個別指導」自体は流行ってはいたものの、生徒の数が増えるだけ先生の数も必要になるビジネスモデルです。パーソナライズするニーズはありながらも、様々な理由から学習塾は「教える力のある先生を多く集めることが難しい」という課題を抱えていました。

この市場のペインに対し、テクノロジーで解決してビジネスにできるのではないかという仮説を立てたのです。

この発想は、「勉強は人に教わるものであり、有名予備校の講師に教わることがベスト」という価値観に対して「自分にあった内容を学ぶことが大切である」「講師の役割はティーチングからコーチングへ」といった価値観を広げる試みでもありました。

つまり、一人ひとりに最適な教育を作っていく、というこれまでにない需要創造型のプロダクト創出と言い換えることができます。

どうプロダクトとして展開していったのか?

当初は、生徒を対象に学習を個別最適化する「atama+ 」のみから開始し、そこから、塾講師が効果的に生徒をほめる・アドバイスする・サポートする「atama+ COACH」など、続々と新プロダクトをリリースしています。

当初は、高校生向けの数学のみを扱っていましたが、英語、物理/化学、社会と対応教科を増やし、対象も中学生、小学生(4年生以上)へと広げていきました。

さらに、システムのみならず、塾教室の立ち上げ支援にも注力し「塾と一緒に教育のど真ん中を改革する」ことを目指し、サービスの拡大を続けています。

どのようにプロダクトが生まれていくのか?
~②LOVOTのケース~

「LOVOT(らぼっと)」は、林要氏が2015年に創業した GROOVE X 株式会社が開発、販売する家族型ロボットです。「人の愛する力をはぐくむ」をテーマに作られたプロダクトで、人に寄り添うことでだんだん家族になっていくロボットとして注目を集めています。

だんだん家族になっていくロボット「LOVOT」

なぜこの市場にチャレンジしたのか?

創業者の林氏は、もともとは目の前の課題解決に没頭するタイプでした。
前職のトヨタ自動車時代は、どれだけ速い車を作れるか、という問いに真っ向から立ち向かい、フォーミュラ1の開発に燃えていたそうです。

しかし、そのうちに「この車が速くなって世界はどうなるのか?」という問いが生まれたといいます。そして、LOVOTの開発にも繋がる、「テクノロジーがどうやって人を幸せにするのか」という問いに辿り着きました。

どんなプロダクトを作るかを思案する中で、ソフトバンクで人型ロボット「Pepper」の開発に携わっていた経験もあった林氏は、多くの方から「ロボットを作ってほしい」という期待を寄せられていました。

その中で、漠然と考えて降ってきたアイデアが「LOVOT」だといいます。
「これならうまくいきそう」という考えと、ロボット開発の苦労を知っているがゆえの「もうやりたくない」という感情の綱引きの中で、ある時「これは自分の使命ではないか?」と思い立ち、開発を決めたそうです。

この市場をどう見ていたのか?

林氏は、ロボットのマーケット自体はいずれ来ることを確信しつつ、その中で唯一無二を目指そう、という視点でLOVOT開発を進めていました。
ロボットのマーケットが来ることについて、「ドラえもんに誰も違和感を抱かないのがその証拠です」と林氏は言います。

その中で成功の命運を握るのはアプローチの仕方だと考え、誰もやっていないしこれを考えついているのは自分達しかいないのだからやるしかない、とLOVOTの構想を固めていきました。

どうプロダクトとして展開していったのか?

LOVOTの発表は2018年。
先行予約開始時に初回出荷予定分が3時間で完売するなど、販売開始前からかなりの注目を集めていました。

しかし、その後は思うように売り上げが伸びない時期が続きます。大きな理由としては、当時およそ30万円という価格の高さにあったと考えられます。

ロボットへの興味関心や需要自体はありつつも、「そこまでの金額を出す価値をなかなか見出せない…」という消費者の思いの表れだと言えます。

ところが、その後テレビドラマへの出演を果たしたことや、コロナ禍の「おうち時間」への需要の高まりが追い風となり、2020年4月以降の売上は右肩上がりとなり、一度目の緊急事態宣言の前後で比較し、最大で11倍の売上アップを記録しました。

また、「LOVOT」の購入目的の一つは高齢者へのプレゼントだといいます。
「離れて一人で暮らす高齢の親の見守りの役割」など、特定の層に刺さる形でプロモーションを打っていったことも、LOVOTの成功の要因といえます。

この2つのケースからいえることは、両者とも、自身の好奇心や実現したいことから「問い」が生まれ、その問いを解消していく中でテーマが絞られていった点が共通していることです。

つまり、需要創造プロダクトを生み出すには、プロダクト起点ではない「問いを持つ」というステップが重要になるといえます。

プロダクトとして展開するフェーズでは、軌道に乗せるために消費者に刺さるプロダクト開発やプロモーションを継続的に展開することが大切になります。この取り組みがうまくかみ合ったのが、この2社の例と言えるでしょう。

いつ流れが来るかわからない状況での待ち方・時間との闘い方とは?

新しくプロダクトを展開する際は、当然「いつかこの市場が来る(これから作れる)」という見通しが立った上で走り出すわけですが、実際にいつ来るかが予測できないのも事実です。

そんな状況下で市場をどう待ち、どう時間と闘うのか?という点は、非常に重要です。

「待つ」のではなく「探索する」

市場の変化を待つのも手ではありますが、自社のプロダクトによって市場が変化していく・成長していく流れも存在します。

LOVOTが「BtoCからBtoBへターゲットを拡大していった」のもその例です。

LOVOTは、アフターコロナのオフィス回帰に社内コミュニケーションを加速したい、という需要が増えたことで、企業に導入されるケースが生まれ始めました。

この企業への導入は、もともと自宅でLOVOTを保有していたオーナー起点での導入が多かったと言います。

つまり、たまたまタイミングが良かったという側面以上に、BtoC領域で既に獲得していた顧客がフックになったという側面が大きく、結果としてBtoB領域に拡大することができたのです。

このように、単なる外的要因だけではなく、育てている事業に付随して周辺環境が両輪で変わっていくこともあります。この状況を読みつつ、常に新しい施策を打っていくことで、先行きの読めない市場と効果的に対峙することができるのです。

「仲間」を増やす

不確実性の高い事業を進める上では、一緒に進めるメンバーも重要です。
もちろん、優秀な人を採用することは大切ですが、それ以上に大切になるのが「ミッションを共有できる仲間を増やす」ことです。

走り出したタイミングにおいては、どう戦うべきかわからず、悩み苦しむ時間も当然ながら長くなります。

そんな環境の中では、スキルの高さ以上に、会社のミッションに強く賛同し、一緒に根気強くミッションの達成に向けて走りぬいてくれる人材が必要になります。

もちろん大前提スキルの高い方に入ってもらうことがベストではありますが、スキルだけでなく、マインド面、どれだけミッションの達成にコミットしてくれるのかにも着目した上で採用を進めることが大切です。

似たようなプロダクト(競合他社)をどう見るのか?

需要創造市場においては、競合他社の登場は基本的にはポジティブであるといえます。

その理由は、何かまだよくわからない・存在自体が浸透していない領域については、まずは興味を持ってもらうことが第一だからです。

もちろん、そのきっかけが自社であり、そのまま自社商品の購入に至ることが理想ではありますが、一社だけの力で十分な認知を拡大していくのはなかなかに困難です。仮に認知の獲得が自社起点でなかったとしても、一度興味さえ持ってもらえればあとは商品力の勝負になります。

つまり、競合に負けない商品開発を進めることに注力しつつ、競合の登場自体は追い風として捉えることができるのです。

冒頭でも述べた通り、需要創造市場においては市場を拡大させることも注力課題の一つです。この市場では、顧客に興味を持ってもらうきっかけが最大化されることが重要と言えます。

需要創造プロダクトにおける成長戦略で重視すべきことは?

全く新しいプロダクトで走り出すタイミングで注力すべきことが大きく2つあります。それは、

● プロダクトを磨くこと
● 採用を磨くこと

この2点です。

一見非常にありきたりで当たり前に思えるかもしれませんが、需要創造プロダクトにおいては、この2つを貫き通すことが特に欠かせない条件になります。

「プロダクトを磨くこと」については言うまでもありませんが、「認知の拡大」という意味でも「競合に勝つ」という意味でも、プロダクトの品質は肝になります。

そのうえで、「採用」もプロダクトと同じレベルで重要な課題です。
先ほども述べたように、同じカルチャーを持っている人を採用し、一丸となれるメンバーをそろえることが、この市場にチャレンジし続ける上では欠かせない条件となります。
そのため、採用には初期段階から多分にコストを投下する価値があると言えるのです。

また、新規事業とは、言い換えれば常識の裏に隠れた真実を見つけ、それを事業にしていくことです。
つまり、常識的な発言をいかに打ち返せるようにするかが大事になります。

既存の枠組みやアイデアにとらわれず、常に視野を広げながら可能性を模索していく姿勢を持ち続ける必要があります。

まとめ

需要創造プロダクトは、市場に働きかけ拡大させていきつつ自社のシェアも確保し続ける必要があるという、非常に難易度の高いビジネスです。

ここにチャレンジするためには、実現したい・解き明かしたい・こんな未来が見たいという、明確なWillが求められます。

しかし、逆にいえば何か強いWillや問いがあるのであれば、これほどやりがいのある、おもしろいビジネスはないのではないでしょうか。

最後までご覧いただきありがとうございました。本記事が貴社の事業推進において、何か一つでもお役立ちできることを心から楽しみにしております。

(※本記事は2023年8月時点の情報をもとに作成しています)





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